ヒドリガモ

動物編

ヒドリガモは原崎沼のカモの種類を示した掲示板に載っていた。そこでは六種類のカモのオスとメスが図示されているが、こんなカモが原崎沼に来ているのだなあと思いながら見たのが最初だった。当時はカモに関心を持ち始めた頃だが、どんなカモがいるのかさえ分からなかった。ただマガモのオスは何とか分かったが、それ以外のカモの仲間は全く分かっていなかった。原崎沼の監視員の人と話した時に、マガモをアオクビと言っていたのが印象的だった。

 ヒドリガモ

 十二月に原崎沼にカモの写真を撮りに行くようになったのがカモを学習するようになった始めである。遊歩道からカモが水面にいるとがむしゃらに撮った。その対象であるカモが何というカモかも分からなかった。撮り始めの頃の写真を見てみるとぼやけていて、はっきり写っているものは殆どなかった。その原因はカメラの性能と私のカメラ技術の未熟さもさることながら、東北の冬はいつも曇天か雪が降っていて光量が少ないので色合いがはっきり写らないことも原因だと思う。

 当時は仕事の合間の土曜日と日曜日に出かけていた。冬の季節が進んで来るにつれて少しずんぐりしていて頭が赤茶色で嘴から頭にかけてクリーム色の太い線があるカモが泳いでいるのが目につくようになった。マガモよりは小さいカモである。マガモやカルガモたちは沼の水面の凍結を防ぐために、沼の中央に設置してあるモーターで動かす二台の水車付近にたむろしているのに、ずんぐりしたカモの群れ全体が東寄りにたむろしている。後で分かったがそのカモはヒドリガモだった。時々はマガモや後から飛来するオナガガモと混じって浮かんでいることもあった。写真を撮りに行くと首を曲げて羽に頭を突っ込んで寝ている場合が多く、オスとメスを一枚の写真にきちんとした姿で撮るのが難しい。天気が良い時にはこれらのカモたちは頻繁に羽繕いをする。腰の辺りにある脂の分泌腺から出た脂を頻繁に羽に摺りつけていく。だから彼らは水の中に沈まないと言われている。その羽繕いの頻繁さは驚く程多く、写真を撮ろうとしてもなかなか良い写真が撮れないのはこのためである。

 上述のようにいつも羽の中に首を突っ込んで寝ているのを見て採餌はどうしているのかと心配してしまった。監視員にそのことを尋ねると「朝方早く飛び立って刈り入れが終わった田んぼで採餌しているらしい。昼過ぎには原崎沼に帰ってきて休息している。」と答えてくれた。原崎沼のヒドリガモの数はかなりの数に上り、天気が良い時には護岸のコンクリートに上がって日向ぼっこしている。

 ヒドリガモの雑種(ヨシガモとの?)

蟹江周辺ではヒドリガモがいるのは伊勢湾に面する藤前干潟と、清州の五条川だけである。善太川、木曽川や長良川では見ていない。見られる場所と見られない場所がある。

 オシドリはオシドリ夫婦というが本当は一夫一婦制ではなく、何羽とも交尾すると聞いたことがある。私が藤前干潟の新川河口側で観察していると、ヒドリガモは大抵オスとメスが一緒にいることが多く、三月初旬に北帰行する頃には、大陸ですぐに繁殖期に入るから、既に番いになっていなければならない筈である。

 「日本のカモ 識別図鑑」(氏原巨雄 道昭 誠文堂新光社)のヒドリガモの項目を見ると「大きさは、全長四二~五〇センチ。翼開長七一~八五センチ。特徴は、中型のカモで、マガモとコガモの中間の大きさ。体形はずんぐりとしていて頸、嘴は短め。頭は丸みがあり、額が少し出っ張っている。尾羽は比較的長い。分布・生息環境・習性は、冬鳥として日本全国に多数渡来。河川、池、湖沼、海岸などで大きな群れをつくり越冬する。おもに植物食で、海岸で海草、海藻などを採り、淡水域では水面に浮かぶ葉片、茎、根、種子などを採る。河川敷や池畦に上がり、群れで芝や青草を採餌しているのを見ることも多い。昼間でも活発に活動し採餌する。まれに潜水して水草を採ることもある。地図の分布を見ると、繁殖地はユーラシア大陸とカムチャッカ半島などで、越冬地は日本、中国大陸、インドやヨーロッパとなっている。オスの生殖羽は、頭部は主に赤茶色で、額から頭頂はクリーム色。胸は赤味を帯びた薄ブドウ色。背、肩羽、脇は細かい波状の横斑に覆われ、灰色に見える。上尾筒、下尾筒は黒く、尾羽は灰黒褐色で中央尾羽が長めで尖る。飛翔時は白い雨覆が目立つ。翼鏡は緑で、緑色帯はアメリカヒドリより幅広い。」と記されている。

 説明のようにヒドリガモのオスは額から頭の上までクリーム色の帯が印象的である。赤茶色の頭とこのクリーム色の帯がヒドリカモのオスかどうかを同定する私の基準になっている。他にはオス・メスともに胸から腹にかけては白く嘴と足の色は黒灰色で、嘴の灰色の先が黒く小さい部分があるのが特徴である。メスは他のメスよりは全体的に茶褐色が強い。

 アメリカヒドリ

 長良川でカモの写真を撮っていたら、オオバンの群れが採餌している傍でまるでヒドリガモと間違えるようなカモが浮かんでいた。頭は濃い目の茶色であるが顔から頭の上までのクリーム色がない。写真を撮ったもののすぐにはどんな名前のカモだか分からなかった。ヒドリガモとは違うので何だろうと調べてみるとホシハジロだった。専門家が見れば違いや特徴が即座に分かるのだろうが、私はヒドリガモとホシハジロの概念達成学習をしている初期の学習者である。決定属性を探しながらそれぞれのカモを同定する過程を楽しんでいるのだと、今は開き直っているところである。(カモ目 カモ科 マガモ属 ヒドリガモ)

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