ヒバリ

動物編

 天童に住むようになって麦畑も時々見かけたが、名古屋近辺のように春にヒバリが囀っている光景を見たことはなかった。またその記憶もない。まだ天童にいた頃に三月に蟹江に帰省し、岐阜県海津市にドライブに行った時、その麦畑の上でヒバリが囀っていたのを思い出す。その囀りを聞いて少年時代のことを懐かしく思い出した。そのヒバリの囀りも最近では昔程には聞かれなくなってしまったように思う。

ヒバリ

 歌手の美空ひばりの芸名になったヒバリからすると、戦後まもなくは沢山いたのではないか。ヒバリはその当時は誰もが知っていたから芸名としてつけたのだろう。今ではヒバリを知っている若者は少ないのではなかろうか。

 ヒバリが高く飛びながら囀るのは、自分の縄張りを主張するのとメスに対するアピールだと言われている。また飛び上がるのも垂直に上がって、そして垂直に降りてくる。麦畑で営巣するようになって、高く飛び立っても巣のすぐ下には降りないで近くに降りると言う。カラス等の天敵から卵やヒナを守るためである。

 春を過ぎてしまってからは、ヒバリが囀るのを聞いたことがない。春のヒバリの存在感の大きさと違って夏や秋などはどうしているのだろう。春のヒバリの存在感がそれ以降の季節ではピタリとなくなってしまうのである。

 車の通行が激しい木曽川の堤防と木曽川の間は、木曽三川公園と呼ばれてサッカー場やサイクリングロードがあり、周りは芝生になっている。日曜日になるとその芝生で犬を散歩させたりキャッチボールをしたりする人たちがいる。しかし休日でない日には誰も人がおらず静かな佇まいとなっている。

 春先のヒバリの番い

 秋口にこの木曽川の川辺のヨシ原にいるカモや鳥の写真を撮るために、ぶらぶら歩いていた。芝の方を見るとハクセキレイが何羽も尾を振りながら飛んだり降りたり餌を啄んだりしていた。その芝の中に茶色いスズメよりはやや大きい鳥が一羽いて餌を探していた。私が近づくと飛び立って前方の枯れた芝生に降りた。また堤防から芝の方へ下ってくる時にも土手の草叢から二羽が突然飛び出し素早く飛んでいった。その姿から見て、ヒバリではないかと思った。

 十一月から二月にかけてあま市の五条川の堤防と川の間の草叢に出かけてカモや野鳥などの写真を撮っていた。その草叢の中からも木曽川の河川公園で見かけたのと同じ鳥が数羽が飛び出して飛んで行った。その飛び方はすばしこく速いのである。どうもこれもヒバリではないかと思った。夏から翌年の春までどんな生活をしているのか不思議に思っていたが、この二つの例から川の土手や草叢の辺りにいながら生活しているのだろう。

 空中で盛んに囀る

 三月三日になって、木曽三川公園に写真を撮りに出かけた。当日は土曜日だったこともあって、芝生ではドッグランの催しが行われていた。真ん中に何か所かのプラスチックのネットを張って空間を作り、その中に飼っている犬たちを遊ばせている。多くの犬たちが吠えたりじゃれ合っていた。こんなにもペット用の犬を飼っている人たちがいるのだと思った。そんな川岸の何段かになっているコンクリートの護岸を歩いていたら、天気が良かったせいか空高くでヒバリが囀っているのを聞いた。もうこの時期になると縄張り宣言とメスへのアピールをするのだなあと思ったものである。

 まだ寒い二月半ばを過ぎると、番いになって営巣するための鳥たちの気配を感じるようになる。カラスが二羽になって羽繕いしてやったりくっついているし、ホオジロが高い梢に止まって囀ったりしている。多分寒さよりは太陽高度に反応しているのではないかと思われる。季節が変化するのに従った、鳥たちの振る舞いの変化が少しずつ見えてきたように思う。

 「日本の野鳥」(叶内拓哉 安部直哉 山と渓谷社)のヒバリの項を見ると、「留鳥または漂鳥。環境は農耕地、草地、川原など。行動は繁殖期はつがいで、非繁殖期は小群をつくって生活する。よく知られているように、繁殖期には空中に舞上がり、さえずって縄張り宣言をする。地上での行動が多く、植物の種子、昆虫類やクモ類などを、歩き回りながらついばむ。草地の地上に営巣する。」と記されている。

 こうした行動は小さい時から見ていたヒバリの行動と同じだが、春の縄張りや営巣以外には余り詳しく説明されていない。その位春のヒバリの行動が目立つのだろう。

 冬に畑で見られるヒバリ

 三月末に日光川と善太川の合流地点の土手を、写真を撮るために歩いていた。この時期の土手は両側ともにダイコンの花が咲き乱れて満開になっている。ダイコンが野生化して花で埋め尽くされているのである。多分テレビでこの情報を流せば人が押し寄せるのではなかろうか。今はそれを知っている人だけの楽しみとなっている。その土手の道を歩いていたら、前方に二羽の茶色い鳥が何かを啄んでいる。スズメにしては大きい感じだった。私は近づきながら望遠ズームにしてファインダーを覗くとヒバリのようだった。後でパソコンに取り込んで写真を見たら、やっぱりヒバリの番いだった。

 繁殖期になって新しい縄張りを求めて移動してきたのではなかろうか。これまでの冬期にはこの土手でヒバリを見かけなかった。三月末になって見かけるようになったので縄張りを形成しようとしている番いではないかと判断した。こんなことも定点観測をしていると気がつくようになってくる。(スズメ目 ヒバリ科 ヒバリ属 ヒバリ)

                               

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