ヘビ

動物編

小さい時からヘビは見かけていた。家の床下や天井裏に住み着いていて、それが偶然に庭先に出てきたのを見ていた。家の床下とか天井裏にいるのは今から考えるとアオダイショウだと思われるが、当時はそんなことは分からなかった。ヘビの長さは、一~一・五メートル位あって割りと大きいものだったと記憶している。

アオダイショウ(叢ではほとんど見かけない)

 その当時は西区の東芝社宅の木造の二軒長屋に住んでいた。その社宅は私たち子どもが寝る頃になると天井裏でネズミの運動会が始まり、タタッと走る音を聞きながら眠ったものである。それと同時にそのネズミの糞が畳などに落ちて、黒くて細長いコメ(インディカ)のような形だったことを鮮明に覚えている。

 今ではそんな天井裏のネズミが駆け回っている音を聞くた子どもはいないだろうが、当時住み着いていたネズミはクマネズミではないかと思う。最近ではこのクマネズミの数が減少して人間の生活空間にはドブネズミが増えてきていると本で読んだことがある。人間の生活環境が変化してクマネズミが住みにくくなって、それに対してビル環境や地下街の生活環境に適応したドブネズミが増えているのだろう。

 ネズミでありながらこのクマネズミとドブネズミとは習性が違うようで、クマネズミは高い天井裏が住み場所で寒さには弱いが、ドブネズミは高い所は苦手で寒さに強いという特徴を持っている。先日も仙台市の長町モールの植え込みを素早く移動するネズミを見かけた。多分ドブネズミだと思われる。このように人間の生活環境の変化がネズミの趨勢にも影響しているようである。

 ネズミと言えば、学生の頃仙台の二十人町の二階に部屋を借りていたが、仙台の冬は寒く、当時の家屋はどこも防寒が十分行き届いていなかった。私はそんな部屋で、炬燵で暖をとっていた。ある時炬燵の中で何かが動く気配がするので布団を持ち上げてみると、子ネズミが数匹炬燵の中に入っていた。布団を持ち上げられてさっと逃げるのだが、少し経つとまた入ってきている。私は金網で作ったネズミ捕りを買ってきて、餌を入れて炬燵の中に入れておいた。そうしたら小さな子ネズミがネズミ捕りの中に入っていた。それを始末する積もりでネズミ捕りを持とうと動かしたら、その網の目からその子ネズミは逃げてしまった。それ程に小さな子ネズミだったのである。きっとこの子ネズミはクマネズミの子ネズミだったのではないかと推測している。

 話を戻そう。アオダイショウが天井裏に上って住み着くというのは、餌であるクマネズミを狙ってのことだろう。アオダイショウが住みつくと天井裏のネズミの運動会の回数も少なくなる。そんなことから親たちもアオダイショウは無毒なことを知っていたから、天井裏や床下から取り除こうとしなかった。

 幼児の頃には大きなヘビが庭先に出てくるとただ怖いとしか思わなかったが、小学生位になると棒でヘビの体を押さえて尻尾を掴んで振り回して遊んだものである。体を直接触れることには抵抗があったが、子ども心に勇敢さを人前で示そうとする行為だったかもしれない。

 シマヘビ(田んぼや叢でよく見かける)

 もう一つの知っているヘビはシマヘビである。黄色地に黒の線が入っているヘビで、良く見かけた。小学校の低学年の頃トンボやバッタを捕りに出かけた時、畦道の真ん中でシマヘビが大きなカエルを飲み込んでいるのを見た。大きなカエルでシマヘビの口の顎が外れて(?)飲み込もうとしていた。その時私の姿を見かけても逃げることなく、動かないままカエルを飲み込んでいた。飲み込むといってもすぐに飲み込める訳はなく少しずつ体の中に入っていくのだが、こんな大きなカエルを飲み込むと体がどうなるだろうなと思ったことを鮮明に覚えている。

 シマヘビの幼体

 数年前に附属大宝幼稚園の角屋先生がアマガエルの体色変化の保育実践をするので、そのカエル捕りに天童近郊の田んぼに捕まえに行った。アマガエルを一二匹とトノサマガエルを二匹捕まえた。ちょうど田植え時期だったので水田には水が張られて間もない時だった。その畦にはアマガエルが何匹もいたのでタモ網を使って捕っていたら、畦の一角にシマヘビがいた。餌であるアマガエルやトノサマガエルを狙って、この辺りに定住しているのではないかと思った。

 アオダイショウとシマヘビは小さい時から知っているヘビだが、その特徴などを詳しく調べることはしてこなかった。でも調べてみると共にナミヘビ科のナメラ属のヘビで無毒なのは共通している。シマヘビはカエル、トカゲ、ネズミ等が獲物の中心なのに、アオダイショウはネズミ、鳥やその卵等が中心であり、それが生息場所の違いにもなっている。シマヘビは田んぼや野原であるのに対しアオダイショウは樹上や屋根裏にまで上がることができる。体色が明確でない場合があるので区別できない時には、目の虹彩が丸くオリーブ色なのがアオダイショウ、赤くて楕円形なのがシマヘビであると考えると良い。気性はシマヘビが荒いがアオダイショウは温和である。

 これまでヘビの特徴の違いなど意識したことはなかったが、一見すると同じように見えながら、それぞれの生き方が違うのだと理解することができた。

 カエルを絞めているシマヘビ

そしてもう一つ不思議だったことは、ヘビは爬虫類であり、私たちと近い内臓を持っていると考えられるのに、あの細長い体に全ての内臓が内臓(?)されているのかと不思議に思っていた。日高敏隆の「動物の言い分 人間の言い分」(角川書店)に、それへの答えが載っていた。それによると、「ヘビはあのように長くなるために、大変苦労している。必要な内臓をうまく収めるのだってむずかしい。肺のように空気を吸ったらふくらむ器官はとくに困る。そこでヘビは左側の肺をなくしてしまった。そして残った右側の肺をうんと細長くして、太さを長さで補っている。ウミヘビの肺はほとんどしっぽの先まで伸びているそうだ。肝臓とか腎臓のように左右にわたるか、あるいは対になっているものは、左側を省略するか、あるいは前後に並べて収めている。」また、移動の特徴として「肢をあえて捨ててしまったヘビは、明らかに異端であった。~中略~ 足を捨ててしまったが動くことは必要だ。ヘビは腹の鱗(うろこ)で歩くことにした。体の前から後ろへ一列に並んだたくさんの鱗を、順々に立てたり寝かしたりして体を移動させていくのである。おかげでヘビは、頭をぐっと」持ち上げたまま、音もなく滑るように動いていくことができる。」と述べている。

進化の途中でこうした特徴を持つように変化しながら、あの細長い体つきと移動そして食性を身につけたと思うと、また違った目でヘビを見られるようになってきた。(アオダイショウ 有鱗目 ナビヘビ科 ナメラ属 アオダイショウ)(シマヘビ 有鱗目 ナミヘビ科 ナメラ属 シマヘビ)

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