オナガを知るようになったのはそれほど昔ではない。仙台にいた頃は見たことはなかった。天童のアパートから勤務先の短大まで通勤している時に、木々の間や電柱に止まっているオナガを見たことがあった。それも一羽だけではなく群れていることが多かった。鳴き声もキーキーという声である。オナガの姿は頭の天辺が黒くベレー帽を被ったような様相で、尾が長くヒヨドリよりはやや大きい感じの鳥である。全体に薄い青灰色で熱帯いる鳥のような色で飾り立てている鳥に較べると、落ち着いた色だが美しい鳥だと思う。但しその姿と鳴き声はアンバランスな感じがする。土地にいつもいる留鳥ではなく遊鳥か漂鳥かもしれない。雪が積もる真冬には余り見かけないが、秋口から初冬かけて山形では度々見かけた。
竹にとまったオナガ
このオナガのことを知るようになったのは、NHKで放映された「動物記 カッコウ」の托卵の映像の中で、長野県の千曲川で托卵してきたのはヨシ原にいるオオヨシキリだったが、被害を受けてきたオオヨシキリがカッコウに反撃するようになり、その托卵相手をオナガに変えてきたという話だった。カッコウのメスは托卵する時にその巣に産んであった卵を咥えて飲み込み、一瞬のうちに卵を巣の中に産み込む習性がある。しかしオナガの卵は大きすぎて飲み込めない。すると仕方なくカッコウのメスは咥えていた卵を地面に落としてしまう。それまで托卵された経験がないオナガは孵ったヒナを一生懸命育てていた。カッコウのヒナは何故かオナガの卵より数日前に孵って、その巣にあったオナガの卵を背中に乗せて巣から落として、最後には仮親のオナガを独占し育てて貰う。その放送の場面では、他のカッコウのメスに托卵されたヒナもその巣で孵って、その二羽のヒナが互いに相手を背に乗せて巣の外に落とそうとやり合う姿があった。仮親のオナガは戸惑いながらもただそれを見ていた。またオナガの卵が巣の縁に置き去りにされているのを見ても、巣に戻そうとしなかった。鳥の産卵から孵化して育児する行動は単純な刺激と反応の連鎖によるもと考えられる。そうした連鎖から外れてしまうと親は面倒をみないのである。巣から落ちたオナガのヒナは、結局は死んでしまう運命になる。一見すると人間と同じような愛情によって子育て(ヒナ育て)をしているように見えながら、単純な刺激と反応の連鎖による仕組みに従っているだけなのである。その放映のナレーションではカラスの仲間の賢いオナガが、いつまでもカッコウの托卵を受け続けることはないだろうと話していた。
天童のアパート前の公園脇の民家の庭に数羽のオナガが来ていた。一羽が何か口に咥えていたが、それが何かは分からなかった。カラスの仲間だから雑食性の何かではないかと思う。
電線にとまったオナガ
ウイキペディアで調べてみたら「日本では分布を狭めており、一九七〇年代までは本州全土および九州の一部で観察されたが、一九八〇年代以降西日本で繁殖は確認されておらず、留鳥として姿を見ることはなくなった。現在は本州の石川県以東、神奈川県以北で観察されるのみとなっている。わずか一〇年足らずで西日本の個体群が姿を消した原因はまったくわかっていない。ただし、九州の個体群については近年になって分布を拡大し続けているカササギとの競争に破れたという説がある。このように分布域を狭めてはいるが、東日本に残された群の個体数は減少どころか増加の傾向にある。~中略~ 平地から低山地の比較的明るい森林や竹林を好み、森林に近接する市街地などでも見られる。食性は雑食で、昆虫、果実、種子等を常食し一部は貯食する。樹上に枯れ枝などを使って皿状の巣を作り、一腹六~九個の卵を産む。抱卵期間は一七-二〇日で、雌が抱卵する。雛は約一八日で巣立ちする。カッコウの托卵先になることがある。いつも高いところにおり、群れで行動し、カラスの仲間とあって学習能力は高い。警戒心が強く、また敵に対するモビング(疑攻撃)行動も活発で、巣が襲われた場合などは集団で防衛にあたる。」と記されていた。
庭の木にとまったオナガ
こうした記述を見ると、私の考えていたオナガの特徴や習性とはそれ程ずれがないことが分かった。蟹江に帰ってからオナガを見ていないし、その理由は平野部だから見られないのだと単純に考えていた。養老の滝がある養老山地や岐阜の金華山辺りには見られるかもしれないと思っていたが、上述の記述内容から見ると、名古屋近辺にはいないと考えられる。山形に出かけた時に是非また見たいものだと思っている。先日仙台の知人宅を訪れた時、竹藪の天辺にオナガが止まっているのを見かけた。宮城県では初めての経験だった。(スズメ目 カラス科 オナガ属 オナガ)
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