コガモ

天童の山元沼や原崎沼には冬になるとカモたちが来ることは知っていた。私はカルガモやマガモは何となく分かっていたがそれも自信があるとは言えないものだった。

コガモの番い

 そうしたカモの仲間に小型のカモがいるのに気がついた。原崎沼の遊歩道には冬に見られるカモの絵と説明が掲示板に記されている。その種類は、マガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、カイツブリ、カルガモ、コガモである。コガモは一番小さいカモであると記されていた。私の見た小さいカモがコガモに違いないと思って観察しようとするが、マガモやカルガモに比べると神経質で用心深くすぐ飛び立って移動してしまう。それでも遠くに見えるコガモの写真を何枚か撮った。しかし案の定ぼやけてしまった。

 山元沼でもコガモを撮ったが、自分としては割と良いものが撮れた。オスの姿を見た時吃驚した。顔がデザインされたように緑と茶色になっており、その間には白い線が入って領域を分けているのである。とてもモダンだなと感心してしまった。オスはすぐ分かるのだがカモの仲間のメスは皆同じようでなかなか区別できず、今でもメスだけを見てどんな種なのか分からない。山元沼、原崎沼、そして東根市の白水沢ダムのダム湖に出かけて写真を撮ったが、小さくてぼやけてしまったものが殆どである。バード・ウオッチャーが望遠レンズ付きのカメラと三脚を持って歩いているのを度々見かけていたが、その意味が良く分かるようになった。

 飛翔するコガモ

 愛西市の善太川に行くと、川幅が狭いので定住しているカルガモの群れに混じって飛来したカモたちもはっきり見える。その中にコガモもいる。だから私の持っている望遠内臓のデジタルカメラでも何とか撮れる。この善太川は水が汚れていてゴミが沢山浮かんでいたり川辺に散乱していたりと綺麗な川とは言えないが、それでも毎年そこにコガモを含むカモたちが越冬しに来る。冬になって数日おきにこれらのカモの写真撮りに行くようになった。そしてそんな自分を「カモ撮りこうちゃん」と名づけている。

 蟹江で撮った写真には割と良いものがありフェィスブックに他のカモと一緒に掲載したりもした。評判はまあまあ良かったようである。

 二月半ば過ぎからカモたちが北帰行するようになった。善太川のミコアイサはいなくなってしまったが、三月一〇日過ぎてもマガモ、コガモとオカヨシガモはいくらか残っている。数日前団地近くの福田川の堤防を歩いたら、コガモが採餌しているのを見かけた。水面に口を開けて飲み込んだり、干潮になった土の中に嘴を突っ込んで何か探している。他の多くのカモたちは北帰行しているのに帰る気があるのかないのか心配になった。

  群れで飛翔する

 大きな群れなら目的地に帰れる可能性は高いと思うが、数羽になってもシベリア大陸に無事帰れるのだろうか。どんな羅針盤を持っているのかとても不思議である。この頃の数羽のコガモはオスとメスが連れ立っていて番いになっていることが多い。

 五月連休を過ぎてもコガモが帰らずに、福田川や日光川に浮かんでいるのを見かけた。前年の十月半ばに来た時にはオスは生殖羽になっているものの、三月を過ぎる頃から体全体が黒っぽくなっている。シベリア大陸に帰るとすぐに繁殖行動をして子育てするのだろう。

 子育てするのは大陸としても、日本に越冬している期間が七か月を超えることを考えると、彼らにとって日本は故郷そのものではないかと考えざるを得ない。産卵孵化する場所が故郷とすれば、日本は第二の故郷だろうが。

 「日本のカモ 識別図鑑」(氏原巨雄 道昭 誠文堂新光社)には、コガモの項目に「図による繁殖地はアリューシャン列島からシベリア。越冬地域は日本、中国沿岸、東南アジア、インドからヨーロッパにかけて示されている。大きさは全長三四~三八センチ。翼開長五三~五九センチ。特徴として、日本で見られる水面採餌ガモでは最小の小型のカモ。飛翔は早く軽快で、群れでの編隊飛行はシギチドリによく似ている。嘴はほぼ黒く、足は黄土色、緑黄色、緑灰色。秋、最も早くやって来て、春、最も遅くまで残り、九月から四月末頃まで見られる。北海道、本州中部地方以北の高原でごく少数繁殖する。河川、池、湖沼などに生息し、大きな川や池では五〇羽から数百羽の群れで見られる。他の水面採餌ガモより小さな川に入る傾向が強く、そのような場所では一〇羽前後の小さい群れで越冬する。主に植物食で、藻類やイネ科植物の種子などを食べる。」と記されている。

 この記述から五月連休明けまで福田川でコガモが見られたこと、水面上を口を開けながら首を回して採餌する方法は納得できた。ただ干潮になった時、泥の中に嘴を突っ込んでいるのを見ると、小さなゴカイやミミズ等も食べているのではないかと思っている。コガモは私にとってカモの魅力を初めて教えてもらった愛すべきカモなのである。(カモ目 カモ科 マガモ属 コガモ)

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