ホウネンエビ

動物編

 蟹江周辺には昔からカメが多い地域である。誰もカメを捕ったり食べたりしないので川のいたる場所にカメがいる。この水路で捕っている時にも大きなカメが網に入ってきた。よく見るとカミツキガメ(ミドリガメ)だった。それを神明社の境内に投げ捨てたが水路の先に行って戻って来た時には、そのカメは既にいなくなっていた。多分水の匂いが分かって水路に戻って来たのだろう。スッポンではないがこのカメを食用や薬用に使えたら良いのにといつも思う。

ホウネンエビ その1

 ホウネンエビを二匹捕ったので、数日後にまたホウネンエビを捕るためにまた用水路に出かけた。その時にも二匹捕れた。捕った二匹はハスを種から育てた水を張ったプラスチック容器に入れておいた。ホウネンエビは鰓脚を頻繁に動かしながら一か所にじっとしている。棒で突っつくと瞬時に素早く移動してしまう。思ったより素早く行動できるようだ。翌日になってプラスチック容器見たら、二匹共いなくなってしまっていた。飛び跳ねた気配はないので、恐らく団地内にいるネコに捕られたのだろうと推測している。

 ホウネンエビというと、関西線蟹江駅の線路脇の田んぼで大量発生したのを思い出す。淡水性の小さなクラゲ同様に、時々大量発生すると聞いていた。しかし大量発生後には発生することはなく、その一回きりだけだった。

 ホウネンエビ その2

 NHKのBSで「心の旅」という火野正平がサイクリングしながら日本中を走る番組がある。その土地のある場所に想い出がある人たちの便りを紹介しながら、その想い出の地を本人に代わって見に行き、その状況を伝える番組である。長寿番組で色んな土地に行く。食堂に寄りそこの人たちと掛け合いのような話をする場面が放映されている。日本海側のある地方を走っている時に、農家の人が仕事している時に、火野正平が「この辺りにはホウネンエビはいないのか。」と尋ねていた。尋ねられた人は「いない。」と答えていた。ホウネンエビを火野正平は知っていてそれを尋ねたのだが、どの地方にも普通に見られるものではなさそうである。私自身も蟹江周辺でタモ網を使ってドジョウ、スジエビ、ヌマチチブ、アメリカザリガニ、フナ、メダカ、モツゴ等を捕ってきたが、ホウネンエビはこれまで見かけたことはなかった。私にとっては珍しいエビである。

 先日名古屋の民放テレビでナゴヤダルマガエルのことをやっていた。その地域は日進市だったような気がするが失念してしまった。このカエルは足が短く指にエラがない特徴がありだんだんその数が減ってきているという。その数を何とか増やすために水路に工夫するという番組だった。田んぼの水路は昔のような土盛した所を流れる水路ではなくコンクリート製の水路のために、ナゴヤダルマガエルが落ちると流されてそのコンクリート製の側壁を登れないというのである。そこで黒いプラスチックの格子状になったものをコンクリートの側壁に貼って、それを伝ってナゴヤダルマガエルが草叢まで上れるようにする試みを実験的に行ったというニュースだった。私からするとその格子が小さすぎて足を引っかけるのが難しそうに見えて仕方がなかった。ナゴヤダルマガエルはこの地域の生態系の真中に位置する動物でその数の減少を防ぐことが動物の生態系を守ることに繋がるという主旨の話があった。

 そのニュースの放映場面で子どもたちがその水路にいる魚等の小動物を採取したものの中に、七~八匹のホウネンエビが映っていた。この地方では普通にホウネンエビが見られるのではなかろうか。

 ホウネンエビ その3

 ホウネンエビを調べてみた。ミジンコと同じ鰓脚を持つ甲殻類である。エビのような手足があるが体を支える足を持たず、鰓を動かして逆さになったまま留まり移動する。その鰓を動かして水流を起し、植物プランクトン等を体に沿って口まで運び餌を捕る。敵に襲われると体をひねって水中を移動し素早く行動する。交尾して保育嚢に入れられている卵はその後産卵されて土中に卵のままで越冬する。アメリカザリガニのように稲などの茎を切り取ってしまうなどの害を与えることはなく、無害な動物である。

 ホウネンエビの写真を撮るために、透明なプラスチックの入れ物に入れたら、確かに逆さになって鰓を動かしていた。また目玉が二つ体から左右に離れてついているので、可愛らしい感じがする。腹部には個体によっては緑色の部分があり、また尾には橙色になっている。寿命は余り長そうでないが観賞するには面白い生き物だと思った。

 岐阜新聞Web(二〇一七・六・二〇)に岐阜県加茂郡川辺町中川辺の農家の人が、水田でホウネンエビを見つけたと載っていた。「『発生すると豊年になる』という言い伝えがある。~中略~ 一七日に中干しとして水を抜いたところ。足跡のくぼみで見つけた。高橋さんは『見るのは初めてで感動した。豊作を期待したい』と笑みを浮かべた。県博物館(関市小屋名)の学芸員説田健一さんは『卵のふ化の条件に水温の上昇が必要なのは確かだが、今回の発生との関連は分からない。農薬や化学肥料の量が少ないからではないか』と話している。」という内容だった。

 このように私が見つけたホウネンエビはそこかしこにいる訳でなく、新聞記事にもなる存在なのかとその希少性について再認識したのである。(無甲目 ホウネンエビ科 ホウネンエビ属 ホウネンエビ)

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