カワウ その2

動物編

善太川の堤防でカモの写真を撮っていると、カワウを見かけることが多い。面白いのはカワウの習性である。干潮になると川の中に杭が現れるが、その杭の先やはたまた川辺の端に現れる岩、テトラポットや石を集めて包んだ網袋の上にも止まったりもしている。見ているととにかく高い所が好きなのである。時には電柱の天辺に止まっているものも見かける。善太川の新大井橋の北側の土手の真中ほどに善太川に流れ込むは用水路の水門があり、その開閉のための鉄棒の先には、いつもカワウが数羽止まっている。私がカモの写真を撮るためにその土手をどんどん進んでいくと、その天辺に止まっているカワウは、飛ぼうか飛ぶまいか迷っている様子が感じられる。それでもどんどん近づくと羽を広げて飛び立ち水面を飛んで行って、前方の川の水面に着水する。これはいつものことである。

  高いところが好きなカワウ

 また面白いのは、止まっているカワウの中の何羽かは羽を広げていることが多い。場合によっては軽く羽ばたいている。なぜそんなに頻繁に羽を広げているのか分からなかったが、水中に潜って魚を獲っているので、羽を乾かそうとしているのではないかと思われる。調べてみたら、カワウの羽毛には油脂分が少ないので乾かすと記されていた。逆に油脂分が少ないことが水中で潜りやすく、行動しやすい由縁なのだろう。もし油脂分が多ければ体がカモのように浮き上がってしまうからである。

カモを見ていると頻繁に毛繕いをしている。その首をもたげた静止状態の写真を撮ろうと思っても、そのシャッターチャンスがなかなかない。その毛繕いの意味は羽から出てくる油脂を、口を使って羽にすり込んでいるとのことだ。そうしないと羽が水に浸って沈んでしまうからである。

善太川では気がつかなかったが、カワウは水中に潜入してしばらく水面に上がってこない。水中にいる魚を捕らえようとしているのだが、水面に出て来た時に魚を咥えているのを見ることはそう多くなく、簡単に魚は捕れないのではなかろうか。善太川からそう遠くない日光川のウオーターパークにある大きな沼に写真を撮りに出掛けた時に、五~六羽のカワウが群れで泳いでいた。その中には顔が白くなっている繁殖期のオスではないかと思われるカワウもいた。これらのカワウたちは群れで同じ方向に泳ぎながら、交互に水に潜っていく。こんな風に襲われたら、魚たちは逃げようがないのではないかと思ってしまった。群れで狩る仕方を見たのはこの時が初めてだった。後日また行ってみると、また群れで魚を追い込みながら狩りをしていた。カワウは、群れで魚を獲る習性があるのかも知れないと思うようになった。

群れで行動する習性は、巣から餌場まで来て、夕方に帰る時にも見られる。弥冨市にある富浜緑地に行った時、時刻は四時半過ぎだったが、カワウが群れになって線になったり塊になったりしながら飛んで行くのを見かけた。ハクチョウやガンと同様の飛行の仕方だった。

  群れでの狩りと飛翔

そうした光景を見てから数日経って、いつものように藤前干潟にミサゴやカモの写真を撮りに行った。ミサゴの姿や空中から足から突っ込んで魚を捕まえる場面を写真に撮りたくて出掛けて行くのだが、そう簡単にそんな場面には遭遇しない。それでもチャンスがあるかもしれないと思いながら、藤前干潟の堤防を端から端までを歩く。往復すると3キロ位になるのではなかろうか。夕方になって帰ろうと駐車場の方へ歩いていくと、干潟の反対側の伊勢湾岸道の吊り橋近くの水面で、かなり多くの鳥たちが飛んだり、泳いだり、潜ったりしている光景を見かけた。私のカメラの望遠でははっきりとは見えなかったが、スズガモの群れかと思ったが、群れの動きがそれとは違っていた。その様子からカワウかも知れないと思った。写真を撮ってカメラの再生画面で拡大して確認したら、やはりそれはカワウだった。一〇〇羽を超える群れではなかったろうか。それらが水面を飛んだり、泳いだり潜ったりしながら、堤防の方へ近づいてきた。私はこんな数の群れでこんな調子で追い立てられたら、魚たちは一網打尽になるだろうなと思った。カワウたちは群れで魚を狩る習性があるのではないか。日光川のウオーターパークのカワウたちの行動もそれに違いないと考えたのである。

  カワウの大集団

NHKのさわやか自然百景で「愛知 藤前干潟」(二〇一八・一・一四)が放映された。その中で、カワウの群れが藤前干潟で群れで魚を捕っている場面があった。その数が五〇〇~六〇〇羽という数で水面がカワウだらけだった。私が見かけたカワウの数よりは、圧倒的に多かった。その場面を見たとき本当に驚いてしまった。こんな狩りの仕方をされたら、干潟の魚たちはいなくなってしまうだろうなと思った。一年を通して藤前干潟に行っている訳でなく、秋から冬にかけてカモを中心に撮ってきた。春から夏にかけて渡りの中継点として、シギなどの仲間が沢山見られるので、翌年になったら春から秋口までも通ってみようかと考えている。また出かける楽しみが増えたと思っている。

「日本の野鳥」(叶内拓哉 安部直哉 上田秀雄 山と渓谷社)のカワウの項目には、「留鳥。東北地方以北では漂鳥。環境は内湾や湖沼、河川、池など。行動は早朝に、集団ねぐらや集団繁殖地から数羽から数十羽、ときには一〇〇羽以上が隊列をつくって採餌場ㇸと飛ぶ。潜水して魚類をとる。ウ類の翼は他の水鳥に比べて、水をはじく油分が少ないので水分を吸収しやすい。そのため、石の上やテトラポット、樹上などに止まり、翼を広げて羽を乾かす。夕方には、再び群れになって集団ねぐらなどへ戻る。公園、山地、島などの樹上にコロニーをつくって繁殖する。」と記されている。

これらの記述は、私がカワウの習性を知るようになって分かってきたことと同じである。水面に首だけ出して水中に潜り、飛び立つ時には足で水面上を蹴って飛び立ち、水面上に水の輪がいくつもできる。そして首を伸ばして飛んで行く情景が、私のカワウのイメージなのである。

                          

コメント