シジミチョウは天童周辺でも、蟹江に帰ってきてからも何回も出会っている。色々な種類があるらしいのだが、それらの種類を同定できないのが現状である。小さい頃からベニシジミは知っていた。このチョウは天童でも蟹江周辺でも良く見かける種類だが、他の種類のチョウは、どんな名前のものか殆ど分からなかった。
蟹江で見られるベニシジミ
秋になって藤前干潟にカモやミサゴの写真を撮りにったら、コンクリートの堤防の北側の雑草が生えている場所にシジミチョウが何匹も飛んでいた。アメリカセンダングサの花の蜜を吸っていた。時期的にも次の世代を繋ぐ最後の時期なのではないかと思いながら写真を撮った。ベニシジミのように綺麗な感じではないものの、表が少し青みを帯びた茶色のシジミチョウだった。そこで調べてみたらヤマトシジミだった。このチョウは善太川の土手を歩いている時も頻繁に見かけるシジミチョウである。ベニシジミとヤマトシジミは、その点でありふれたシジミチョウではないかと思う。
別の項目でミドリシジミについては書いたが、その他に出会ったシジミチョウは、ヒメシジミ、ウラナミシジミ、トラフシジミである。チョウ図鑑を見ると、シジミチョウの種類は何十種類もあり、その多さに吃驚してしまった。そのどれであるかを同定する作業は難しいとしか言いようがない。専門家だったら翅の裏表がどのような模様になっているか、春型と夏型の色合いがどう違うかなどでも、見た瞬間にシジミチョウの種を判別できるのではなかろうか。私はそのレベルにまで達していないので、せいぜいこの種のチョウでないかなという程度の同定レベルでしかない。
蟹江で見られるヤマトシジミ
今までの経験で例えばモンシロチョウとモンキチョウのように、単なる色合いが違うだけで姿が似ているチョウでも、幼虫が食べる食草はまるっきり異なっている。例えばモンシロチョウの幼虫はアブラナ科のキャベツ、ダイコン、タネツケバナ等を食べるが、モンキチョウの幼虫はマメ科のシロツメクサ(クローバー)、レンゲソウ等を食べる。アゲハチョウとキアゲハでもアゲハチョウの幼虫はミカン科のサンショウ、カラタチ等を食べるが、キアゲハはセリ、ミツバ、パセリ等のセリ科を食べる。
こうした幼虫の食草の違いは、シジミチョウも同じではないかと考えている。産卵しに飛んでくるチョウを見れば、近くに幼虫の食草があるだろうし、その食草があればそうしたチョウを見かける可能性もあると考えて良いのではないか。そんな興味をもって、チョウの食草と環境などを「日本のチョウ」(日本チョウ類保全協会 誠文堂新光社)で調べてみた。
ベニシジミは「日本全国で見られ、食草はスイバ、ギシギシ、ヒメスイバなどのタデ科である。生息環境は、平地~山地の草原。路傍や農地周辺などの小規模な草地にも生息し、ある程度の草地があれば都市公園や都市部の荒地にも見られる。行動は、日中、低い場所を活発に飛翔地し、草上や地上などによく静止する。タンポポ類、ヘビイチゴ、ヒメジョオンなどの草本の花を訪れる。」と記されている。ヤマトシジミは「東北北部を除く全国で見られ、食草はカタバミ(カタバミ科)である。生育環境は平地~低山地の人為的な環境に広く見られ、人家や石垣、荒れ地などカタバミが少しでも生える空間であれば、どこでも発生する。行動は日中、低い位置を飛翔し、ミツネノマゴ、カタバミ、シロツメクサなどの各種の花を訪れる。葉上や地面などにとまり、翅を半開する。」と示されている。
蟹江で見られるツバメシジミ
ヒメシジミは「山形、宮城、福島の奥羽山系沿いに見られ、食草は、キセルアザミ、オオヨモギ(キク科)、オオイタドリ(タデ科)、クサフジ(マメ科)のほか、ヤナギ科、バラ科、カバノキ科など多くの科を利用する。生育環境は、低山地~山地の採草地、林縁、農地周辺、河川敷、湿地など、幅広い環境の草地で見られる。行動は、日中、草原上の低位置を緩やかに飛翔し、ヒメジョオン、オカトラノオなどの各種の花を訪れる。オスは湿った場所でよく吸水する。」と示されている。
ウラナミシジミは「食草は、エンドウ、ダイズ、インゲンなどマメ科の栽培種を好むが、クズ、ハギなどの野生種も利用する。生育環境は、平地~丘陵地のマメ科植物の生える農地。秋にはマメ科の野生種の見られる路傍や荒地、伐採地などでも見られる。行動は、日中、草地上を活発に飛翔し、マメ科植物などの各種の花を訪れる。時にはかなり高所を敏速に飛ぶことがある。生育状況は、本土で越冬できるのは九州~関東地方南部沿岸の温暖な地域に限られ、発生を繰り返しながら分布を北に拡大し、八月下旬頃には個体数が急激に増加して、秋には北海道でも見られるようになる。」と記されている。
トラフシジミは「日本全国で見られ、食草は、フジ、クズ(マメ科)、ウツギ(アジサイ科)、ノイバラ(バラ科)、ナツハゼ(ツツジ科)、ミズキ(ミズキ科)である。生育環境は、平地~山地の樹林。雑木林の明るい林縁や渓谷、灌木が茂る草原などに主に生息し、公園や人家でも見られる。行動は、日中に活動し、オスは午後に占有行動をとる姿も見られる。飛翔は敏活で、クリやヒメジョンなどの各種の花を訪れる。」と示されている。
蟹江で秋口に見られるウラナミシジミ
これらの記述を見ると、やはりこれらのシジミチョウの幼虫の食性は違っている。ベニシジミ、ヤマトシジミ、ウラナミシジミやトラフシジミの幼虫の食草は、平野部である蟹江周辺ではどこでも見られる。例えばカタバミに至っては、自宅の庭に沢山生えているし、農地ではダイズやインゲンを植えていることから、この周辺を歩き回ればこうしたシジミチョウを見かけることができるのではないか。ただヒメシジミについてはやや生息地が限定されていることと、幼虫の食草が私の経験では平野部ではなく、里の奥のような感じがしている。ヒメシジミの写真を撮ったのは、奥羽山系の麓の白水沢ダムの奥のムクロ沢林道の入り口と、紅花トンネルに入る横道の谷川が流れる草叢で撮ったものである。このことからヒメシジミの幼虫の食草を考えると、ヒメシジミだけが他のシジミチョウとは異なる生育環境で生活しているように思われる。
食草と生育環境、行動範囲等は密接に関係があるんだなあと感じたものである。(ベニシジミ 鱗翅目 シジミチョウ科 ベニシジミ属 ベニシジミ)
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