ホオノキ

ホオノキは山に入ると、その葉の大きさが目立つのですぐ分かる。トチノキの葉も同じように大きいが柄に近い方は細くなっているのに、ホオノキは全体として楕円形の感じである。春先にホオノキの新芽が出ると、私はその枝を切って友人宅に持参する。この新芽を持った枝を大きな花瓶の中に入れると、春を感じさせる大きな存在感を示す。時間が経って葉が開くと更にその存在が大きくなる。白くクリーム色の大きなホオノキの花も私は好きである。

葉を出し始めたホオノキなど

 ホオノキを知ったのは下駄のことを知っていたし、版画に使う木として聞いたことがあったからである。下駄の材料のキリの下駄は高級品だがホオの下駄は高くはない。私も昔、高下駄を履いたことがあったが、いつもうまく歩けず転んだことを思い出す。また版木には他にサクラやカツラなども利用されている。

 でも何といっても一番は、岐阜県の高山や白川郷近辺のホオ葉味噌である。コンロの上に枯れたホオ葉を乗せ、味噌を乗せて焼いて食べるのである。その上で肉も焼いて食べたような気がするが間違いかもしれない。また、クマザサなどと同様に香りがあり殺菌作用があるので、ホオ葉寿司やホウ葉餅を包む材料ともなっている。

 ホオノキの花と実

 ホオノキはモクレン科の木で、モクレンの花が原始的な花の構造を持っていることから、ホオノキも原始的な構造を持っている。花弁がらせん状につく(花は葉が変形したものだから、葉の互生のつき方と同じ構造になっている)とか、花弁とガク片の区別ができないなどである。でもとにかく大きくて存在感があるのが葉であり花である。

 このモクレン科の仲間には、ホオノキの他にモクレン、コブシ、タイサンボク、タムシバ等がある。コブシは千昌夫の「北国の春」に出てくるが、これが山に咲いていると風情があり、やはり東北の山だなという気がする。花の大きさはそれほど大きくはなく、モクレンの厚ぼったい感じからすると繊細な感じの花である。天童の市街地では、白いコブシだけでなく赤いコブシ(ヒデコブシ)が家々の庭に植えられている。短大の近くの家ではヒデコブシの八重が咲いている。毎年その時期になると写真を撮っている。

  タムシバ

 タイサンボクであるが、葉が光沢があり大きな花を咲かせるので、これも目立つ花である。平成5年の仙台では何日間も真冬日(日中も零度以下)が続いて、庭の木が枯れたりした。その時にタイサンボクも枯れたのを何本か見たことがある。そんな経験はそれまでなかったからとても印象に残っている木である。

  タイサンボク

 タムシバは、天童高原の山道を歩いていたら、春先にいくつかの花が咲いていた。これもコブシに似ていてなかなか風情がある花である。最初はコブシかと思っていたら、天童高原で見られる木の花の掲示板には、このタムシバが記されていた。そこで、調べてみたら、東北地方の日本海側に多く、花の基部が緑色であり、ガク片が花弁の半分ほどまで上がっていること、そして幹が真っすぐなことで区別できると書かれていた。

 似たモクレンの仲間で印象に残っている木では、福島高専に教えに行った時、駐車場近くの花壇にバナナの香りがするホオノキの花と似ている木を見つけた。本当にバナナそっくりの香りがする木で吃驚した。調べてみたら、カラタネオガタマというモクレン科の仲間だった。花の大きさはホオノキほどではないが、そのバナナに似た香りがとても印象的で、何年経っても忘れられない木である。

  カラタネオガタマ

 本当に植物の中には、色々の特長を備えて吃驚するような木があるものだと思ったものである。

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