ユキノシタ

植物編

ユキノシタは小さい時から知ってはいるが、余り好感は持てなかった。小さい頃に住んでいた東芝の二軒長屋の社宅の北側の汲み取り便所付近にこのユキノシタが植えてあったからである。父が植えたかどうか定かでないが、ユキノシタには近寄り難い印象が強かった。花の時期になって咲いている時にも近くに行って観察することはなく、遠くで眺める存在だったる。便所の汚い印象とユキノシタが対連合されているからだろう。

ユキノシタ その1

ユキノシタとつき合うようになったのは春の野草を天ぷらにする活動を仙台の人間開発センターで、小学生相手にも野草を持ちこんで天ぷらにして食べてみようという活動に始まる。今から考えると危険なものもあったような気がする。マメ科のカラスノエンドウやキンポウゲの新芽は避けた方が良いし避けなければならない。偶然にもキンポウゲの仲間は採っていなかったものの、カラスノエンドウは食べてしまった。その時の私の考えでは、きっとエンドウ豆の小さいものという感覚だったと思う。マメ科にはサポニンが含まれているので、ゴリラはそれらを食べないし自分の子どもにもそれを食べないように教えると、後になって本で読んだことがある。当時は食べるわけではないので、気にしないで天ぷらにしてしまったのである。天ぷらにしたもので印象に残っているものでは、タンポポの花と葉、ツクシとスギナ、ヨモギ、ハコベ、モクレンの花、アケビ、ドクダミやタラの芽などがある。また名前は分からないがタラの芽と似た木の新芽もあった。

 食べてとても美味しいと思ったのはタンポポの花と葉、ヨモギ、タラの芽であり、ツクシはそこそこに美味しいが、スギナとハコベは茎状なので美味しいけれど舌触りが気になる。アケビの新芽は余り印象にない。モクレンの花は苦味があって食べられない訳ではないが好んで食べたい気分にならない。ドクダミはあのきつい臭いが天ぷらにするとなくなると聞いていたが、少なくなるもののやはり積極的に食べたいとは思わなかった。タラの芽以外の木の新芽は、苦くて食べられる代物ではなかった。これらは灰汁(あく)が強いからだった。

 ユキノシタ その2

 こうした野草を天ぷらにして食べていた時に、どこかの本でユキノシタの天ぷらは美味しいと書いてあった。昔からユキノシタは葉が厚ぼったいことは知っていたので、天ぷらにしたらどうなるだろうと考えたことはあった。ユキノシタはないかと野山に入った時に探してみても、自然に生えているのを探すことはできなかった。それでも浪江から双葉に抜ける県道35号線でワラビを採ろうとしていたら、その近くにユキノシタがあった。それを採って天ぷらにして食べてみると、癖はなくとても食べやすい感じだった。

 天童市の奥羽山脈の裾野には果樹園が並んでいる。春先に果樹園の放棄地にワラビやコゴミを採りに行った時、家の残骸が残っている周りにユキノシタが群生していた。今までこのような大量のユキノシタが生えているのは見たことがなかった。自然のユキノシタか、それとも人が植えていたものが野生化したものかは分からない。その何枚かを採ってコゴミと共に天ぷらにした。春に食べるユキノシタは癖がなくやっぱり美味しいと思った。

  ダイモンジソウ

 初夏を過ぎて山に入ったら、ユキノシタと同じように茎をのばしユキノシタのような花を咲かせる植物を見かけるようになった。何だろうと思っていた。姿形はユキノシタのようだが葉の厚さはユキノシタほどでないのである。調べてみたら、ユキノシタ科のダイモンジソウだと思われる。花は8月から9月頃まで見られるのだが、花の形がユキノシタ特有の花の形である。ダイモンジソウはまだ詳しく分かっていないが、そのうちにもっと親しくなれるのではないかと期待している。

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