エナガ

動物編

 十一月の半ばに岐阜県海津市にあるハリヨ公園に出かけた。トゲウオの一種であるハリヨが生息している場所で、隣を流れる津屋川とこの湧水池にはハリヨが住んでいる。湧水池とそこから流れ込む池を泳いでいる魚を見ると、ハリヨとは思えない程大きなハヤのような魚の群れも泳いでいる。ハリヨと思われる小型の魚がそれらの群れに混じって見られる程度で、大量のハリヨがいるとは思えない。その池では大きなコイも多数泳いでいて、夕方に高齢者がパンくずを持ってきてばら撒いているのを見かけたこともある。

 その公園には、南濃梅園「中日本氷糖(株)」があって、多数のウメが植えられている。木には番号札がぶら下っており個人所有になっているようだ。津屋川に沿った梅林公園の中を、四季折々、鳥やトンボの写真を撮るために訪れている。この時期も津屋川にカモがいないか、アカトンボいるのではないかと思いながら歩いていた。すると上空にミサゴが飛んでいて、津屋川で餌となる魚を物色している様子が見られた。この辺りでミサゴをみることは殆どなく、初めての経験だった。私は梅林の中を歩いていたが、ミサゴが上空でホバリングしている様子から、川に飛び込もうとしているのが分かった。タカの仲間はミサゴでもチョウゲンボウでも、獲物を見定めるために上空で一か所にホバリングして停止する。その時は羽を横にして羽ばたきながら、立っているような状態になる。そこで急いで川縁まで行ったが、その時にはミサゴは飛んで行ってしまっていた。

●久し振りに見かけたエナガ その1

 その後ブラブラしながら、橋を渡って反対側の土手に行き、約二キロ位の行程を歩いて車が置いてある駐車場まで来た時だった。スズメより小さい小集団(七~八匹)の鳥が、カキの実がなっている果樹園のカキの枝に止まっている。見過ごそうとしたが、スズメやカワラヒワの群れではなさそうだと思いその果樹園の畑の方に入っていった。すると近くの柿の木の枝に、小さな小鳥が一羽止まっていた。見た瞬間、私はエナガだと直感した。エナガは私がいつか再会したいと願っていた鳥だった。

 私はエナガを一度だけ見たことがあった。三十年位昔、いわき市のフラワーセンターの更に奥に入った石森山の麓の森の中で一羽見かけたことがあった。動きが素早かったが、その嘴やその羽の様子から縫いぐるみのような印象を持った。スズメ、カラスやカワラバト位しか知らなかった当時の私にとっては、とても印象深く心に残る鳥だった。

 柿の木近くまでやって来ると、止まっている鳥は正しくエナガだった。私は嬉しくなってカメラを構えて何枚も写真を撮った。家に帰って撮った写真を再生すると、殆ど真白になってしまっていた。

 その真っ白になってしまった原因はカメラにあった。いつもニコンカメラは常時望遠レンズを装着していた。少し前に望遠と広角レンズの二台のカメラを持って、永和駅まで歩いたことがあった。その途中で滑って土手に望遠レンズを装着した方をぶつけてしまったのだ。望遠レンズが外れなくなってしかもシャッターが落ちなくなってしまった。何とかレンズを強引に外したが、カメラ本体と望遠レンズが連動しなくなってしまった。ほんの少しの衝撃に過ぎなかった筈と思っていたのにカメラを駄目にしてしまった。カメラは精密機械でパソコンのようなものだと実感したのだった。

  ●エナガ その2

仕方なく新たにカメラを買い替えた。それを契機に、それまでオートかプログラムオートでしか写真を撮っていなかったので、カメラを少し勉強しよう思い、色々設定を変えながらカメラで写真撮りをし始めていたのだった。何が原因なのか分からないが、買ったばかりのカメラのシャッターがなかなか下りずに、ゆっくり下りたりする。連写すると被写体が移動して写らなくなってしまったりもした。不良品ではないかと考えたり、そんな筈はないなと考えたりと、何が何だか分からい状態だったのである。

 エナガを撮った時はそんな時だった。今でもよく分かっていないが、プログラムオートで撮ると、画像が暗い感じがしていたので、露出補正で明るくした方が良いと考えたのだが、明るくし過ぎたからではないかと思われる。

 ただこれまで写真を撮ってきて、動きのあるもの、特にチョウ、トンボや鳥の飛翔中の写真の殆どがぼやけていた。何十枚撮っても、良い写真は一枚位しかなかったが、写真の機能の中には動きのあるものに自動焦点させる機能があることが分かった。フォーカスポイントが三十九点もあるものがあり、飛翔中の鳥などもファインダーの枠内に収まるときちんとした写真が撮れることも分かってきた。カメラの望遠レンズはせいぜい十倍程のものなので、遠くの被写体は輪郭がはっきりせずにぼやけてしまうのは相変わらずである。

 「日本の野鳥」(叶内拓哉 安部直哉 上田秀雄 山と溪谷社)のエナガの項目を見ると「時期は留鳥または漂鳥。環境は平地から山地の林、樹木の多い住宅地や公園など。行動は繁殖期はつがいで縄張りをもつ。非繁殖期は数羽から三十羽前後の小集団が一定の区域内で行動し、シジュウカラの群れに混じって行動することもあるが、長時間混じっていることはない。主に枝先近くで昆虫類、クモ類、木の実などを採食する。また、葉先にいるアブラムシなどは低空飛行でとらえたりする。」と記されている。この鳥もスズメ目エナガ科で十四センチ程の大きさである。スズメの十四センチ、カワラヒワの十五センチに較べると大差ないが、私の印象ではもっと小さい感じがする。胴の長さに較べて尾の長さが長いことが関係していると予想している。

 私にとってエナガは可愛い鳥の代表である。でもこの気持ちは他の人たちにとっても同じらしい。というのはフェイスブックの鳥見サークル(鳥の情報交換サイト)には頻繁にエナガの写真が掲載されるからである。その写真を見ると小さな可愛いぬいぐるみのように見えてしまう。そんな様子から野鳥愛好家からは愛される鳥になっているようだ。

 ●エナガ その3

 それぞれの鳥たちは自然に生きながら、色々な習性を持っている。シジュウカラは尻尾をピッピと振りながら素早い行動をとる。シジュウカラの群れにエナガも混じることがあるというのも、行動習性や餌が同じからだろう。天童で見かけていたカワラヒワはスズメの群れに混じっていた。これも同じ食性や習性によるものだろう。鳥たちは異なる種の鳥の習性を本能的に知っているのだろうか。もしかすると同じ進化の系統樹が近いからかも知れない。とても不思議である。 

  (スズメ目 エナガ科) 

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