トモエガモ

動物編

カモの写真を撮り出してから三年程経つが最初はカルガモとマガモの区別さえつかなかった。まだカルガモのオスとメスの違いは今でも分からない。それでも少しずつカモの種類や習性も分かるようになりつつある。カモのメスは皆同じように見えるので区別は今でも難しい。これまでに分かるようになったカモの仲間や水鳥を挙げてみると、カルガモ、マガモ、ヒドリガモ、ヨシガモ、オカヨシガモ、コガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、キンクロハジロ、スズガモ、ミコアイサ、カイツブリ、オオバン、カワウ等である。

 トモエガモのオス

特に面白いのはそれらのカモたちが越冬しに来る場所が、基本的に決まっていることである。蟹江周辺は水郷地帯だから、川ばかりでなく川から引かれた大きな沼や池などが沢山ある。近辺なら越冬するのにどの場所でも良さそうなのに地域差がある。オカヨシガモなら善太川、海津市の長良川の水門脇、五条川であり、ハシビロガモは藤前干潟、その手前の水を引いた田んぼ、長良川の水門脇でしか見かけない。ヒドリガモは藤前干潟、五条川にしかいない。それに較べるとオオバンやコガモはそれらの場所のどこにでもいる。マガモは藤前干潟と善太川にいる。善太川のマガモは例年になく多い。ヨシガモは少数だが五条川と日光川河口にしかいない。ここ二年程冬になると定期的にそれらの場所を訪ねると、去年いた種類をそこでまた見かけるのである。親が渡って来た場所をそのヒナたちも覚えてまたやって来るのではないかと思われる。そこが安全だったからまた来るという訳である。他の場所でも良さそうなのに必ずしも安全が保証されていないので、安全策を採って今までの場所に来るのではあるまいか。

最近の私のカモの愛読書は、基本的にカモの識別をどうしたら良いか載っている本に集中している。まだ細かな習性までは分かっていないので、とにかくどんな名前のカモなのかを同定したくて仕方がない。「日本のカモ 識別図鑑」(氏原巨雄 道昭著 誠文堂新光社)を買って、カモの写真を撮るとどのカモかと調べている。

  コガモ

ここ最近は名古屋市と蟹江の境を流れる福田川の国道一号線の福島橋の南にある中江橋の土手に、写真を撮りに行くようになった。その土手にある大きな木は、冬になると葉が落ちて枝だけになっている。その枝にツグミ、ジョウビタキやモズ等が止まるのでその写真を撮った。運が良い時にはその梢にオオタカも見られた。川面にはカルガモ、オオバンやコガモが泳いだり、コンクリートの川べりに上がって日向ぼっこをしたり、脇の草叢で採餌したりしていた。私はどこにもいるコガモの群れだと思っていつも通りに写真を撮った。家に帰ってパソコンに取り込んでみたらコガモでないカモもいた。見た瞬間トモエガモだと分かった。その一羽は片方の羽を広げて羽繕いをしていた。コガモだと思っていたのでその幸運に感謝した。ここ三年程カモの写真を撮っているがトモエガモの写真を撮ったことはなかった。図鑑を眺めていると、それぞれのカモのオスは独特の彩色や模様をしている。その中でもトモエガモの図柄は特徴的で素敵だと思っていた。そのトモエガモと福田川で出会ったので吃驚したのである。私が蟹江周辺や木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)の周辺で写真を撮っているが、トモエガモがこの近辺に来ているとしたらこれまで何回も出会っていて良い筈である。しかしそうしたことはなかった。

トモエガモのメス

そこで「日本のカモ 識別図鑑」で調べてみたら、「大きさは三六~四三センチ。翼開長六五~七五センチ。特徴は、コガモより少し大きい小型のカモ。顔の独特の模様が特徴。嘴は黒く足は黄色い。分布・生息環境・習性は、シベリア東部で繁殖し、冬は朝鮮半島、中国、日本まで南下する。日本海側に多く、太平洋側では少ないが、局地的に大群が見られることがある。池沼、湖、湿地、河川などで群れで越冬する。おもに植物食でイネ科の植物、ドングリなどを食べる。水中のドングリなどを潜って採ることも珍しくない。地上にもよく上がる。大きな群れの個体群は警戒心が強く人を近付けない反面、都市部の公園で単独か数羽でカルガモやコガモに混じる個体は人を恐れない。」と記されている。

私はこのトモエガモの写真を撮ってから翌日もいるのではないかと思って当然のことながら写真を撮りに行った。しかしカルガモ、コガモやオオバンはいたもののトモエガモはいなかった。どこかに行く途中で立ち寄ったのだろう。説明の記述からは、太平洋側では少なく日本海側には来ているようだ。日本海の福井県の敦賀湾から琵琶湖を抜けて愛知県に抜ける季節風がこの数日強かったので、それに乗って来たのではないかと思っている。そうするとやっぱりトモエガモの写真を撮れたのは幸運としか言えないなと思えてならなかった。(カモ目 カモ科 マガモ属 トモエガモ)

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