ツノトンボ

動物編

ツノトンボはこれまで何回かは見かけたことがあった。そのツノトンボはよく見るとトンボのような感じだが、翅が体の割に大きくやや弱々しい感じがしていた。その時見かけたツノトンボは透明な翅だった。

ツノトンボ

数年前にこれらと違った個性的なツノトンボを見かけた。ガと間違えそうになった程である。六月の半ばに高瀬から紅花トンネルに抜ける途中の村山高瀬川に架かる「お出会い橋」近くに車を置いて、その川に沿う西側の山道を高瀬部落の方に歩いて行った。その道の土手にはニリンソウ、エンレイソウ、ハナイカダ等の花や木が見られるので、その写真を撮りたかったからである。歩いて行くと途中で右に下がる道があり、右手は竹藪になっていて筍(タケノコ)が出ている場所が何か所かある。明るい場所にはカワトンボも数匹飛んでいた。そんな場所をホトケノザやモンシロチョウの写真を撮りながら下って行くと、その道の先にはリンゴ畑があった。歩いて行った道はリンゴ畑の中央を通る道だった。その道の真中に雑草が生えていてよく見たらアカバナの仲間が花を咲かせていた。アカバナは秋口に見られる筈でこれは何だろうと思いながら写真を撮った。図鑑で調べるとやはりアカバナだった。というのは五月~十月頃までアカバナは咲いていると示されていた。私はそこに座り込んでスマートフォンとカメラで写真を何枚も撮ったが、ピントが合わずに殆どの写真がぼやけてしまった。

 そこから立ち上がって元の山道に戻ろうと脇の草叢を掻き分けながら歩いて行った時に草の茎に止まっているガのように見える昆虫を見つけた。風情はガのようだが良く見ればカゲロウのような気もする。黄色がかった色が毒々しい感じがしたので、ガでないかと判断した。その時はどんな名前の昆虫か全く分からなかった。その画像をパソコンに取り込んだまま忘れて放置していた。

 ある時あの昆虫は何という名前の昆虫だろうかと急に思い出して調べてみた。するとツノトンボの仲間でキバネツノトンボらしいことが分かった。確かに頭から出ている角(つの)は目立つのに、最初はそれに気がつかなかった。ツノトンボといえば角が特徴であり、これまで見かけてきたツノトンボは透明な翅がトンボのようだったので、その特徴に惹かれてしまって角は不随物とだけしか覚えていなかった。そんなことからこのキバネツノトンボの特徴を調べてみた。すると「アミメカゲロウ目ツノトンボ亜科で、角がある触角は長く、先端は膨らんでいる。前の翅は透明だが、後ろの翅は黒と黄色のまだら模様となっている。生育環境は、丘陵地~山地、河川敷の草原などで、日中飛び回る。幼虫は草の根の辺りや石の下で小さい昆虫などを捕食する。」と示されている。私がキバネツノトンボを見かけた草叢は記されているのと同じ自然環境だった。このツノトンボとの出会いは偶然の僥倖と言えるかもしれないと考えるようになった。

 ツノトンボはカゲロウの仲間だが、カゲロウと関連して思い出すことがある。小学生の頃に住んでいた東芝社宅は二軒長屋だったが、その天井はネズミが夜中になると走り回っていたし、畳の上にはネズミの糞がよく落ちていた。その天井にある時細い白い糸状で先端が白いキノコ風になっているものが何本もぶら下がっていた。父に聞いたら「あれはウドンゲの花だ」と言われた。ウドンゲの花だから植物かキノコだと考えてしまった。後から分かったのだがそれはクサカゲロウの卵だったのである。

 クサカゲロウのメスは卵を産む時に、腹の先から水滴状の液体を出し、その粘着性の液体が固まろうとする時に、その先端に卵を産みつけるというのである。なぜそうした卵の産み方をするのか色々考えられるが、その一つにはクサカゲロウの好物はアブラムシである。アブラムシは甘い汁を出しアリと共生を図っている。そのためにクサカゲロウがアブラムシを狩ろうとすると、逆にアリに襲われるかもしれない。そこで卵をアリから守るためにそうした産卵方法を発達させたのだろうというものである。アリはその糸状のものを登れないのだろうか。疑問はあるものの進化の途上でその方が効果があったのだろうなと今は考えている。

 カゲロウ

 またカゲロウといえばカゲロウが羽化して成虫になって、道路に被害を与える事件が度々起こる。私が実際に経験したのは福島市を流れる阿武隈川のアミメカゲロウの発生である。阿武隈川に幼虫がいて、それが秋口のある時期になると一斉に羽化する。カゲロウは次の世代をつなぐために飲まず食わずで、子孫を繋ぐために成虫になると言われている。平成二十一年の九月に国土交通省福島河川国道事務所から、次のような発表があった。「アミメカゲロウが発生します。橋を走行する際にはご注意ください。」とあり、次のような文章が発表されている。「例年、福島市内では八月下旬から九月下旬にかけて河川などから『アミメカゲロウ』が大量発生します。カゲロウが多く発生する道路の橋では、視界不良やスリップなどによる交通事故が発生するおそれがあるため、道路を管理する国土交通省・福島県・福島市では、橋の下面や河川敷に集中灯(水銀灯)を設置し、道路上のカゲロウを軽減する対策を行います。また注意喚起の看板もあわせて設置しますので、橋を走行する際には十分お気をつけください。」と示されている。

 私もこの時期に通行したことがあるが、雪のような感じで車のフロントガラスにぶつかってきた。それを払おうとワイパーを動かしたら、その死骸の体液がフロントガラス上にこびりついてウオッシャー液をかけても、全く取り除けないのである。その結果前方が見えなくなってしまった。加えて道路上がアミメカゲロウの死骸の体液でスリップし易くなるということになる。私が通過した時はそこまでひどい状況にならなかったが危険だという感じから免れなかったことを思い出す。(キバネツノトンボ アミメカゲロウ目 ツノトンボ科)

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