ジョウビタキ

ジョウビタキを知るようになったのは初秋に仙台の知人宅に遊びに行った時、庭の一メートル位の枯れ竹の先に、一羽の鳥が止まっていたのを見たのが初めてだった。少し落ち着きがない感じの動きをしていたが、羽の一部に白点模様があった。友人がその鳥を見た瞬間に「紋付鳥(もんつきどり)」だと教えてくれた。私も茶色っぽい羽(雨覆い)の一点だけ白いことが印象に残った。

ジョウビタキのオス

 天童のアパートの西側は畑になっていてそれぞれの人たちが畑を借りて野菜作りをしている。その畑にもエンドウを支える竹などが立ててあるが、秋の中頃オスだと思われる色の濃いジョウビタキが止まっていた。そこに居続けることはなくすぐ飛び立ってしまったが、この近辺にもジョウビタキがいるんだなあと思った。知人宅の庭でも天童のアパートの畑でも季節が秋だった。秋になるとこの近辺に飛んで来るのだろうかと思った。

 そんな風に考えていたが、春になって五月頃に天童周辺の野草や鳥等の写真撮りで歩き回っていた時に電線に止まっているジョウビタキを見かけた。止まっている場所が高くて遠いのでデジタルカメラでは上手くピントが合わせられない。しかも顔がこちら側を向いていたので背中の白点模様が分からなかった。その当時は鳥の姿を見かけると闇雲に写真を撮っていた。パソコンに取り込んでみたらぼやけているがジョウビタキだと確認できた。それまでは秋になって天童周辺に渡って来て春の季節になると別の地に飛んで行くのではないかと考えていたが、この時期になっても見かけていたので一年中この近辺にいるのかも知れないと考えるようになった。

 ジョウビタキのメス

 蟹江に帰ってきてカモの写真撮りに歩き回っているが、善太川で春にジョウビタキを見かけた。永和中学校と永和小学校の間を流れる善太川の中学校側の土手を歩いていた時に、ジョウビタキが中学校の敷地と土手の境にある金網のフェンスの上に止まっていた。即座に写真を撮ったが案の定ぼやけてしまった。数日後にまたその場所を通るとオスだと思われるジョウビタキが、またフェンスに止まっていた。私が近づいても逃げる様子はなかった。普通ジョウビタキは私が近づくとスーッと飛んでいって、善太川の土手の前方のフェンスに止まったり土手の低い灌木の中に入り込んでしまうのに、その時はなぜか逃げる様子がなかった。どうしてなのかと思いながら写真を撮っていると少し離れた場所に体色が薄いメスがいた。番いなのかどうかは分からないがメスがいたので逃げなかったのではないかと思う。

一~三月頃は日光川河口の日光大橋周辺をカモ、タカやヨシ原に住む鳥たちを撮るために歩き回っていた。日光川の上流側の土手を歩くと佐屋川から日光川に流れ込む大きな水門がある。その水門がある敷地の周りは金網のフェンスで囲まれている。その金網のフェンス周辺で度々ジョウビタキのオスを見かけるようになった。毎日という訳ではないが数日おきにほぼ同じ場所で、そのジョウビタキのオスを見かけるのである。

その土手を更に上流に歩いて行くと、右側には広い庭がある民家が並んでいる。その庭にはモクレン、ナツミカン、キンカン、ウメ等の木々の他に野菜を作っている畑がある。土手の反対側の日光川には川に沿って狭いヨシ原が続いている。そのヨシ原と民家の庭を行き来しているジョウビタキのメスを見かけた。オスとメスの行動範囲は多分重なっているいるのではないかと思う。しかしそれぞれ別々に生活しているようだった。オスとメスそれぞれ縄張りがあるのだろうか。

またジョウビタキのオスが土手の地面に降りて穀類だと思われる種を食べているのを何回か見かけた。木の実ではなくスズメと同じような食性ではないかと思った。

最近になってジョウビタキの鳴き方が分かるようになってきた。どの鳥も基本的には鳴くのはオスと決まっているから、その鳴き声はオスだと思う。その鳴き声は「ヒー、ヒー」という感じの鳴き方である。こうした鳴き声が聞こえると近くにジョウビタキがいるのだと確信するようになった。蟹江周辺では善太川、中川区の福田川、日光川の土手で鳴き声を聞いたり、その姿を度々見かけた。

鳥の写真を撮るようになったがジョウビタキのメスの目はとても可愛く乙女のような目である。とにかく楚々として可愛い。鳥の仲間の全てを知っている訳ではないが、知る範囲内であることは言うまでもない。ヒタキ科の小さい鳥たち(例えば、キビタキとかコルリなど)たちは、同じように可愛いのではなかろうか。

  ジョウビタキのオスとメス

ジョウビタキは冬鳥として日本に来るようだが、日本国内でも産卵して子育するケースがある。韓国では一年中見られるがその一部が日本に渡ってきているようである。

「日本の野鳥」(叶内拓哉 安部直哉 上田秀雄 山と渓谷社)のジョウビタキの項目では「繁殖地はカラフトやシベリア大陸など。冬鳥。環境は市街地から低山の花壇や植栽地の多い公園、農耕地、川原、草地、疎林など。行動は雌雄とも一羽で縄張りをもち、主に昆虫類やクモ類を採食し、さまざまな草木の実も食べる。春の渡りの時期の日本海側では、つがいになっているものが多い。」と記されている。

ジョウビタキは秋口になって見かけるようになり、春が進むと殆どが日本海を越えて大陸に帰っていく。こんな小さな鳥が日本海を越えて行くのか、やはり不思議に感じてしまう。またオスとメスがそれぞれ縄張りを持つというのは私の経験と合致している。

マガモやコガモにしても四月を過ぎて帰らないカモを観察していると、殆どのカモが繁殖期に入る直前だからかオスとメスのペアになっている。ジョウビタキも大陸に渡る前に既に日本で番いになっているのだろう。どうしてわざわざ危険な日本海を越えて大陸まで帰って子育てするのだろう。とても合理的には見えないがこれも進化の過程で仕組まれた配剤なのだろうか。(スズメ目 ヒタキ科 ジョウビタキ属 ジョウビタキ)

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