ケリ その1

夏に蟹江に帰省した時に関西線永和駅近くの用水路にスジエビ、メダカやドジョウを捕りに行った。水郷地帯なので周りに田んぼがあり工場もありという、大都市から少し離れた地方のごくありふれた風景である。ここではシラサギ、スズメやカワラバトの群れを見かけることができる。

 その当時から動植物の写真を頻繁に撮っていた。用水路脇の配送センターの敷地内に小さな神社があってクスノキが沢山生えているのを知って、産卵しに来るアオスジアゲハの写真を撮ろうと出かけた。アオスジアゲハは敏捷なチョウで、あちこちのクスノキの葉に止まりながら産卵して素早く羽ばたいて移動してしまう。私のカメラ技術では捉えることが難しかった。しかも高い所なのでなかなか撮ることが出来なかった。その時期にはアブラゼミ、クマゼミやツクツクホウシも鳴いているので、それも合わせて撮ろうと考えていた。アオスジアゲハ程ではないが木の枝に紛れて止まっているセミを撮るのも難しかった。

 そこで諦めて植物を撮ることにしてぶらぶら歩きながら周辺の植物を撮りだした。ヨウシュヤマゴボウ、モミジアオイ、小型のヒマワリやクズである。近くの空き地で初めて白いサクラタデを撮ることができた。

  留鳥のケリ

工場近くの空き地で植物を撮っていると空き地の向こう側に奇妙な鳥を見かけた。顔つきからすると一瞬アヒルではないかと思ったが足が黄色く長いので、アヒルにしてはバランスが違っている。そこでシャッターを切った。その鳥は向こう側にいたので割りとのんびり歩いていたが幼鳥ではなさそうだった。その辺りを散策しているような感じに見えた。それを追いかけながら何枚かの写真を撮った。数日後車を走らせてると田んぼの畦道をその鳥がまた歩いているのを見かけた。私の鳥のイメージからするとサギは足が体に較べて長いが、この鳥の足の長さはアヒルでもなくサギでもなく中途半端な感じにしか見えなかった。

年末年始に帰省した時もカモの写真を撮っていたが、善太川に行く途中の刈り入れが終わった田んぼに数羽のこの鳥が群れていた。私が車から降りて写真を撮ろうとするとすぐに飛び立った。羽の一部に白い部分があり飛んでいる姿は実に綺麗だった。とにかく顔つきはアヒルのようで愛嬌がある顔だが、すこぶる警戒心が強い鳥だった。

インターネットで調べてケリではないかと思った。一方でタゲリという言葉も聞いたことがあったので私はこの鳥をタゲリだと思い込んでしまった。ケリとタゲリが違うとは分からなかったのである。ケリはカモの写真を撮りに行くと頻繁に見かける。いつも同じ場所で見かける訳ではないが度々出会うのである。

野鳥などに詳しい知人にケリをタゲリと思い込んでいてタゲリを見たと話すと、「タゲリには頭の上に冠羽があるよね。」と言われた。私は「アヒルのような顔立ちでそんな冠羽は見たことがない。」と話すと、「タゲリには冠羽があると思ったけど。」と言われてしまった。どうも話しがチグハグで、頭の中で考えている鳥がお互い違うらしかった。自宅に帰ってケリとタゲリの違いをインターネットで調べてみた。やはり違う鳥だった。

  ケリの威嚇行動

タゲリもケリもチドリ目チドリ科タゲリ属で、タゲリとケリとは別種だが、殆ど兄弟といっても良い仲間である。タゲリは華やかな鳥でケリよりも一回り小さい。頭部に黒い冠毛があり頸部には首輪状の斑紋があるという。食性は共に動物食で昆虫類、節食動物(ダンゴムシ、ミミズ)やカエルなどである。住んでいる所は河川、湿地、干潟、水田、草原等でこちらも同じ環境で生活しているらしい。

ケリは日本では留鳥で東北にも分布している筈だが、私は山形では一度も見かけたことはない。現在では中部地方や関西地方を中心に近畿地方以北で生活していると言われている。タゲリの方がケリよりは姿が綺麗なので、名古屋近辺の蟹江周辺にもタゲリを見かける可能性はあるのではないかと思っている。食性はタゲリとケリはほぼ同じで住んでいる場所も同じだと思われるので、いつか見かけることが出来るのではないかと楽しみにしている。

 冬鳥のタゲリ

「日本の野鳥」(叶内拓哉 安部直哉 上田秀雄 山と渓谷社)のタゲリの項目では「冬鳥。東北地方北部以北では旅鳥。少数の繁殖例がある。環境は水田、畑、河川、湿地、干潟など。行動は渡来直後と渡去前には、群れを作っていることが多い。渡来後しばらくすると、暖地では一羽か小群になって行動するが、積雪地ではあまり群れをくずさずに生活している。地面の昆虫類、甲殻類などを嘴でつついたり、足で地面をたたくようにして、ミミズ類を地表におびき出したりして採食する。」と記されている。

またケリの項目では「ほぼ留鳥。中国地方以南では比較的まれな冬鳥。北海道ではまれな旅鳥。環境は水田、畑、河原、草地など。行動は近畿地方以北の本州に局地的に繁殖地があり、特に東海地方から兵庫県にかけて太平洋側に多い。田起こし前から水を引くまでの水田、耕す前の畑、草地などに巣を作る。繁殖を終えると小群をつくって生活し、そのまま越冬する。越冬中もつがいで生活するものもいるが、大多数は群れで生活する。昆虫類を主に食べる」と記されている。

これらの記述からタゲリは大陸から秋に渡って来て春になると帰る渡り鳥であることが分かった。秋口から春先に見かける可能性がある。ケリは留鳥で特に東海地方ではよく見られると記されている。周辺の田んぼや川辺にはケリが多く、その甲高い「キー、キー、キー」という鳴き声は一度聞くと忘れられない。彼らは飛びながらも鳴いているので、その存在感は姿に較べてとても大きい印象を与えている。(タゲリ チドリ目 チドリ科 タゲリ属 タゲリ)(ケリ チドリ目 チドリ科 タゲリ属 ケリ)

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