オナガガモ

動物編

オナガガモはマガモやヒドリガモが渡って来てから少し経ってやって来る。初めて見たのは天童の原崎沼だった。カモの仲間といってもマガモやカルガモしか思いつかない位だったから、実際にオナガガモのオスを見た時はその美しさに圧倒された。頭がこげ茶色で頸がすらっとして白く、白の一部が頭の方まで回りながらの線となって伸びている。水面にいると本当に絵になる姿と言って良い。オスの姿の見事さに気持ちが向いていたので、ずーっとどれがメスなのか分からないままでいた。

原崎沼の北側はコンクリートの護岸になっていて、天気が良いとカモたちが日向ぼっこをしている。マガモ、カルガモ、ヒドリカモに混じって何羽かのオナガガモのオスを見かけた。当然メスも含まれている筈だがそれがなかなか同定できなかった。嘴の色、足の色、姿、風切羽や翼鏡(よくきょう)の色の微妙な違いを見極めないとオナガガモのメスだと区別できない。

   オナガガモのオスとメス

私は原崎沼、山元沼で写真を撮り出したが、最初はカモの姿が確認でき写真が撮れるだけで満足していた。携帯用のデジタルカメラなのと距離が離れているので、殆どのものはぼやけて使えそうなものはなかった。天童周辺は日本海気候に属して冬期は天気が悪く、遠方のカモの写真を撮ると灰色でピンボケになってしまうのが大半だった。私が撮りに行く午後になると、カモたちは寒さを避けたり食後のためか、水面で首を羽に埋めて漂いながら寝ている。そんなこともあってきちんとした姿の写真はほとんど撮れなかった。

テレビで放映されている動物写真家の写真や映像は、プロの人たちが良い道具立てと時間をかけて撮っているのだろう。写真を撮るようになって初めてプロの腕前に感心せざるを得ないようになった。植物写真をこれまで撮ってきたがそれさえもピンボケになってしまうほどの腕である。動く動物の写真を撮ることがどんなに大変かを痛感している。毎年年賀状に動植物の写真を載せているが、貰った人から撮るのが大変だったでしょうねという話は聞いたことがない。彼らもテレビ放映、写真やカレンダーの鮮明な写真を簡単に撮れると考えているのではなかろうか。それ程動物の写真を撮るのは難しい。鳥やトンボを撮るようになってそんなことが分かってきた。

 蟹江に戻って藤前干潟にミサゴを撮りに行った時、そこにオナガガモだと思われる群れが浮かんでいて写真を撮った。パソコンに取り込んで拡大してみたら全てオナガガモのオスのようだった。名古屋にも飛んできているのだなあと思った。オナガガモの食性等詳しいことは分からない。他のカモとの違いを含めて種類の違いと特徴を学んでいるところである。

 十一月半ばに藤前干潟にミサゴの写真を撮りに行く途中に、水を張った田んぼがあった。昨年も冬期に水が張ってあった。張ってあるのは越冬するカモたちのためだろうと思っていた。偶然その田んぼでカモの集団が泳いでいた。田んぼに水が張ってあるだけなので水深は浅い。その集団のカモたちは採餌時刻だったのか、多くのカモが頭を水中に突っ込んでいた。その姿は秋の筍(タケノコ)という感じで尻尾が立っている。水中の稲の根を食べているようだった。泥水の中に頭を突っ込んで大丈夫なのだろうかと心配してしまった。よく見るとそれはオナガガモの集団だった。

   タケノコ状態で餌を採るオナガガモ  

 オナガガモの数は増えていると聞いたことがあった。天童の原崎沼ではマガモやヒドリガモに較べてオナガガモの数はそれ程多くなかった。今回の田んぼのオナガガモの集団を見て、そう言われているのは本当かも知れないと思った。この田んぼにはオナガガモの他にハシビロガモやコガモが一緒にいた。しかし圧倒的にオナガガモが多かった。

 そのことがあって何日かに渡ってオナガガモとハシビロガモの写真を撮りに行った。翌日と翌々日にはまだオナガガモの集団はいたが、一週間も経つと全くいなくなってしまった。どこかに移動したのだろう。この水を張った田んぼはそれでもカモたちにとって安全で大事な餌場だったのだと思った。

  オナガガモあれこれ

 そこで「日本のカモ 識別図鑑」(氏原巨雄 道昭 誠文堂新光社)でオナガガモの項目を見たら、「大きさは、全長五一~七六センチ。翼開長八〇~九五センチ。特徴は、他の水面採餌ガモに比べ体がスリムで頸が長く、尾羽も長い。分布・生息環境・習性は、冬鳥として全国的に多数渡来する。コガモよりは渡来は遅く、渡去は約一か月早い。河川、湖沼、池、沿岸などに生育し、白鳥の渡来地、公園の池などでよく餌付いている。おもに植物食で、水面に浮遊する植物の種子、植物片を採り、逆立ちして水底の水草、藻などを食べる。水生生物も餌とする。稀に潜水採餌することもある。シベリアからユーラシア大陸、カムチャッカ半島、アラスカ、カナダなどが繁殖地で、日本、中国沿岸、インド、ヨーロッパで越冬する。オスの生殖羽は、チョコレート色の頭に頸からの白色が伸びて食い込む。胸は白くて遠くから目立つ。黒い中央尾羽が長く伸びる。長めの嘴は黒くて両側面は青灰色。」と記されている。

私の感覚だと大型に近いカモで、他のカモよりは頸が細長くほっそりしており、スマートである。そしてメスも他のメスと似通っているが、羽が濃い橙色で嘴や足は黒灰色で、頸はオス同様にほっそりしている。オスの近くにいるメスらしいカモがいれば、オナガガモのメスではないかと検討をつけてその特徴を確認している。

 カモ類については学び始めなので自信をもって習性等が述べられないのは残念である。どんな動植物でも外見の違いからだんだんと習性を学びながら、存在の在り方の知識を深めていくことが、知ることの喜びに繋がるのだろうと今のところはそう信じているのである。(カモ目 カモ科 マガモ属 オナガガモ)

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