ミヤコグサ

ミヤコグサは黄色い花が咲くマメ科の植物だが、エンドウのように髭を絡ませて上方に育っていく植物ではない。それでも群れて咲くことが多く、花の黄色が目立ち可憐な花である。

  ミヤコグサの花

このミヤコグサは、私の仲間の人たちにとって思い出深い植物である。というのは、宮城教育大学の高橋金三郎さんが「科学的思考とは何か」という問題を考える際に、このミヤコグサのエピソードを引用して、幼児たちが論理的な展開や未来を予測できる能力があることを示す例として挙げているからである。ちょっと長くなるが、その部分を引用してみよう。

「私はかって幼稚園の二児を近郊に伴った。彼らは“みやこぐさ”の花に注意を引かれたが、その名を問うほかに能がなかった。当時、私どもの菜園には、同じ豆科の“えんどう”の花が咲いていたので、私は名を教えるかわりに、その花を持って帰り、おうちでそれによく似た花を見いだすようにと指導した。彼らが帰宅後両者の類似を見いだした時には、小さいながらも自力に基づく新発見の喜びに燃えた。やがてひとりは、“みやこぐさ”について、“これにもお豆がなるのか”と尋ねた。それは誰にも教えられない独創的な質問であった。私はそれにも答えず、次の日曜に彼らに現場で確かめることを提案した。彼らがそこに小さな“お豆”を見いだした時、そこには自分の推理の当たった喜びがあった。秋が来た。庭には萩の花が咲いた。彼らが萩にも豆のなることを予測した。彼らは過去の経験から、いかなる花に豆がなるかを自主的に知り、その推論を独創的にまだ見ぬ世界に及ぼしたのである。」(渡辺万次郎「科学技術と理科教育」『理科教育』Vol.8、№11)

  ミヤコグサの花と実

 私はこのミヤコグサのエピソードを知ってから、色々のところを散策してミヤコグサ探しをしている。一度見つけると、多年草だから毎年同じ場所に生えて咲くので、翌年からは時期を外さなければ、ほぼ見つけることができる。

 宮城県の村田町から岩沼市に抜ける道筋に、ミヤコグサが何株かずつ生えている。その近くには日本タンポポのシロバナタンポポと黄色タンポポも生えていて、両タンポポが一緒に生えているところを写真撮影することも可能である。ただし、同時にミヤコグサとシロバナタンポポを同時に見ることはできない。動植物の棲み分けと同様に、時間的な棲み分けが行われているからである。同じ場所でも時間が経つと、違った植物が生えているのが一般的である。

 このミヤコグサは、あるとき奥羽線の天童から山形往きの電車に乗ったとき、山形県中央病院のある南出羽駅の土手にたくさん咲いていたのを電車の中から見たことがある。目が悪いので違っているかもしれないが、その多さに感動したことを覚えている。

 何年か経ってこれらの場所でミヤコグサを見ることが出来なくなった。植物同士のせめぎ合いがあって淘汰されたのではなかろうか。そんな訳で、ミヤコグサの写真を撮りたいと思いながらもなかなか撮れなかった。先日、天童高原に向かう道路途中のロータリーの森と名づけられた植林広場の草むらに、偶然ミヤコグサを見つけ早速シャッターを切った。久し振りに見ると、その黄色の花は鮮やかでやっぱり可憐だなーと再確認したものである。

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