オミナエシ

植物編

オミナエシは秋の七草の一つであるが、野生のものは見たことがない。その名前「女郎花」が時代物に出てくる花魁(おいらん)や女郎(じょろう)を想像させるので、いつも心に引っかかっていた。

春の七草や秋の七草に興味を魅かれて、夏頃から山沿いや野原を通る際、周りの草花を注意して見ているのだが、フジバカマの仲間(サワヒヨドリなど)はあちこちで見ることができる。ナデシコは少なくなってきたものの、それでもたまに崖っぷちで花を見ることがある。七草の朝顔の花と考えられているキキョウも見たことがあるが、オミナエシだけは野生のものをほとんど見たことがない。今まで野生のオミナエシを見たのは、宮城県の王城寺原演習場を囲む金網の内側で見た1回だけである。この金網の内側は人が勝手に入れないので、野生のオミナエシが生えていたのだろう。

私はいつもオミナエシとウイキョウと間違える。ウイキョウはセリ科の花でオミナエシ科のオミナエシとは違う。ウイキョウはスパイスとしても東洋風の匂いからもハーブとして使われている。違いがあるが花のつき方が何となく似ている。秋になって茎の上の方に黄色い小さい花が群がって咲くところである。

そうして野生では見なくなったオミナエシが、花屋で売られるようになってきた。この傾向は7~8年前位からではないかと思う。そんな積りで見ると、畑や家の庭に鉢植えで育てているものを見かけるようになった。畑で植えられているのを初めて見たのは、宮城県の大河原から福島県の相馬に抜ける道路脇の畑で、黄色い小さな花が咲いているのを見かけて、近くまで行って確かめたらオミナエシだった。そこでいつも通り写真を撮った。また天童では奥羽街道沿いのある家で鉢植えの植物を育てているが、その鉢の中にオミナエシが咲いていた。

野生のオミナエシは殆ど見ることがなくなったのに、栽培用の花として育てているのを見るようになった。その存在自体が頻繁に見られるのは好ましいが、野生で見られないのは寂しい感じがしてならない。

8月の半ばに世界遺産の白川郷の合掌造りを見に行こうとして、東海北陸道の白川郷インター手前の籾糠山を貫通する飛騨トンネル(11キロ弱)に入る土手にたくさんのオミナエシが咲いているのを車から見た。今でも野生のオミナエシではないかと思っている。

世界遺産の白川郷(岐阜県大野郡白川村)と五箇山(富山県南砺市)の合掌造りは少し離れており、白川郷から五箇山に行く途中に一軒の合掌造りの庄屋風の家があった。その写真を撮りに降りたら、近くの田んぼにオオシオカラトンボが飛んでいた。私たちの住んでいる周辺にはシオカラトンボしか飛んでいないのに、ここではオオシオカラトンボしか飛んでいなかった。全くの別天地だと驚いた。こんな環境なら少し横道に入れば、野生のオミナエシもみられるのではないかと思う。また高山や白川郷付近に行くことがあれば、付近を是非探索したいと考えている。

(オトコエシかな?)

ところが2014年になって、オミナエシと同じ花の咲き方をしている花を見かけた。茎の先から枝が何本か出て小さい花がまとまって咲く(複散形花序)のだが、オミナエシの黄色とは違って白(薄いクリーム色)なのである。帰って図鑑で調べてみたらオトコエシとなっていた。東根市猪野沢から田麦野に抜ける県道297号線の脇道に入ったところで初めて見かけた。最初はフジバカマのサワヒヨドリかと思ったが、花の咲き方が違うので区別できた。このオトコエシを秋が深まってきたら、いつも行っている山道でも見かけるようになった。単なる時期の問題だったのかもしれない。オミナエシとオトコエシ、昔の人は色の違いが分かっていて名前をつけたのだろう。自然のつき合いが深かったのだろうなと感心してしまった。

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