フヨウ

フヨウという名前は言葉としては昔から聞いていたが、最近になるまで実物を見たことはなかった。おわら風の盆を歌った石川さゆりの「風の盆恋歌」に酔芙蓉(すいふよう)の言葉が出てくる。フヨウという言葉の響きには何か幻想的な妖しい響きがあり、どんな花だろうと思っていた。

フヨウ その1

その花はとても大きいが弱々しく、その花は一日で枯れてしまうとも聞いていた。数年前に車で走っていると宮城県の川崎町や天童市の貫津辺りの家の花壇、軒先や畑に大きな花が咲いているのを見かけるようになった。どうもこれがフヨウではないかと思って車から降りて写真を撮った。

  昔からアオイの花は知っており植物に興味を持つようになってから、アオイ科のモミジアオイなどの花は知っていたので、フヨウはその仲間だということも花の形を見るだけで予想がついた。

 夏から秋口になるとと多くのところで栽培されているのをみるようになった。国道48号線の山形から仙台に抜ける愛子(あやし)に入る手前の旧ホームセンターの前に、フヨウの花がたくさん咲いている。昨年も同じ場所で見たことから、毎年生えてくるのか分からないが赤ピンクや白の花がたくさん咲いているので、際立つのである。

 天童周辺では、娘と孫が蝉取りや川遊びに来た時、フヨウの花が咲いているところで写真を撮ったが、その大きさが孫の顔より大きかった。私の記憶の中で特に印象的なのは、福島県のある地方の庭先の鉢植えの一輪のフヨウで、大人の顔よりも大きい白のフヨウだった。今でもその情景が浮かんでくるほどである。

  フヨウ その2

 フヨウはアオイ科フヨウ属の落葉低木で、五枚の花弁を持ち同じ仲間の韓国の国花のムクゲと似た形をしている。ムクゲは普通の立木にたくさんの花をつけるが、花が開かずに蕾のまま地面に落ちることもある。フヨウは、スラーッとならずに葉が大きくこんもりした感じの木になる木で高くはならない

 私はおわらの風の盆(富山県富山市八尾地区)には行ったことはないが、越中おわら節で9月の初旬に町内で朝まで踊り明かすようである。似たような踊りに岐阜県の郡上八幡市の郡上踊りがある。これも各町内で日をずらして徹夜で踊るものだと聞いている。郡上踊りの前日に偶然郡上八幡市に出かけたが、地方都市の街並みが町内毎に少しずつ違っていて、祭り提灯を家々の前に吊るしている風情は、情緒があるなあと感心した。恐らくおわら風の盆も同じようなものではないかと推察している。祭りの時期とフヨウが咲く時期とが重なっているから、各家々の前にフヨウが置いてあると想像しただけで、祭りの風情を一段と盛り上げているように感じられる。

 同じアオイ科のワタの花

 フヨウには日本人の持つはかなさを慕う心情を引き出す何かがあり、そうした心情を象徴化しているのがフヨウの花のような気がしてならない。これが私がフヨウを好きな理由かもしれないない。

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