ムカゴは山芋にできる蔓状の脇にできる小さな丸い実(栄養体)である。また山芋の根は自然薯と呼ばれてとろろにして食べるが、道の駅で秋になると売っている。その形はいろいろでクネクネしていており、大体は新聞紙に包まれて売っているが値段は高く2000円以上もする。道の駅の商品としてはかなり高い部類に入ると思う。
ヤマノイモのムカゴ
山に入ると山芋の蔓が出ていているので、それを伝わって根元を捜し、それを掘り起こせば山芋に行き当たるのだが、掘り起こすのが相当に難しい。岩や木の根が被さったりしていて、途中で折れてしまったりすれば商品価値がなくなってしまうから、慎重に掘り起こさなければならない。
その山芋を買ってとろろにしてご飯にかけて食べたことがあるが、味が濃密で癖があり普段買う長芋とは違って食べ慣れないこともあってれ以後は食べていない。店で売っている長芋は藁を敷いて畑で作られているが、自然薯に比べると味が淡白で食べやすい。ずーっとこの長芋に慣れてしまってきたから、本来の山芋の味に馴染めなくなってしまっているのだろう。
大抵はおろし金で擦ってとろろ状にして卵を入れて醤油をかけて練って、それをかけて食べるのだが、仙台で下宿していた時に、おばさんが長芋を薄切りにしてそれを出してくれて醤油をかけておかずとして食べたことがある。きっと醤油わさびなら美味しいと思うが、その当時はわさびなど学生のおかずに使うことはなかったから醤油だけだったと思う。こんな食べ方があるのかと思ったことを記憶している。
ムカゴもビニールの袋に入れて300円ほどで宮城県の鹿狼山の道の駅で売っていた。店の人に聞くとムカゴご飯にして食べるという。ご飯を炊くときに一緒に入れて炊くようで栗ごはんと同じ感覚で食べるのだろう。私自身はまだ食べたことがない。
天童周辺では秋になって少し山に入ると、山芋のムカゴが蔓にいっぱいくっついているのを見ることができる。集めようとすればいくらでも採れるからか、天童周辺の道の駅では、こうしたムカゴを売っているのを見たことはない。ムカゴは有性生殖による種でない栄養体だから、遺伝子的には親と同じ遺伝子を持っている。ある意味では芋と同じで、それを使って増やせば親と遺伝子が同じになるものが、蔓の一部につくのである。割と簡単に蔓から取れるから、ムカゴが落ちれば、簡単に子孫を増やせることになる。
ムカゴイラクサのムカゴ
別の項目のウワバミソウ(ミズ)のところで、秋になると茎が膨らんでムカゴができ、それを秋田では料理していると述べた。私の中にまだ、その膨らみが虫害ではないかという疑問を持ち続けていたのだった。先日、山形の高瀬近くの風流寺(ぽっくりでら)に行ったら、その境内にある植物の茎にムカゴがいっぱいついているではないか。しかも山芋のむかごと同じ感じのものが茎の葉が出るそれぞれの部分に一個~数個ついているのである。以前見た植物のむかごはやはり虫害で、これが本当のミズのむかごではないかと思った。何枚も写真を撮りこれがミズだと確信した。
宮城県側に抜ける笹谷トンネル手前の横道に入り、そこでも車を降りてぶらぶらしていたら、そこにも風流寺と同じ植物があり、ムカゴをつけていたのである。これがミズだと思い込んでいたから、春になったらここへ来ればミズが採れると思ったのである。
ウワバミソウ(ミズ)のムカゴ
しかし気になって調べてみたら、ミズのムカゴはやはり最初に見たものであり、料理した材料は私が見たものだった。新たに見つけたムカゴがついている植物はいったい何だろうと思って色々調べてみた。すると、ムカゴを作る植物には、山芋の他にオニユリ、ノビル、シュウカイドウやムカゴイラクサなどがあると書いてあった。ムカゴイラクサ以外は全部知っているから、ムカゴイラクサではないかと判断した。その茎のムカゴを取ると簡単に取れ、山芋のムカゴと区別できないようなものだった。これを蒔けば同じ植物が育つだろうと思うと同時に、ムカゴご飯もできるのではないかと思った。植物は子孫を増やす方法を、種によったり根や球根によったりするものの、一つの戦略だけでなく、いくつもの戦略を用意しながら生きるしたたかさを持っているのだなあと感心したものである。
先日天童ホテルでの会議後の懇親会の食事で、ミズのムカゴのお浸しが出ていた。私が最初に紅花トンネルで見たものであった。やっぱりあれはミズ(ウワバミソウ)だと確信したのである。
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