ソバ その2

植物編

昔に比べると山形や天童周辺でもソバ畑が多くなっている。ソバ栽培とそば屋が多いこととは関連しているのだろう。ソバはタデ科の花で一面に咲いているときはとても奇麗である。私自身は、ソバの美味しさが分かるようになって、頻繁にそば屋に通うようになったが、店にお客が日常的に入っていることから考えると、ソバに惹かれている人は私だけではないだろう。 

  ソバの花とできた実

そばは痩せた土地でも生えると言われるが、作ったばかりの畑とか、寒い気候,雨が少ない気候など厳しい環境でも育つことができる。こうして山村僻地でも育つので、昔は救荒植物としての意味合いもあったのではないか。ところが近年になって、ソバについてのインターネットや雑誌の情報などからソバへの関心が高まり、その結果として栽培面積も増加しているのではないかと思う。そこで調べてみたら、年毎に栽培面積は増加しており、ソバの生産量が多いのは北海道、福島県、山形県、青森県、長野県などで、東北地方や高地で作られていることが分かる。その中でも北海道は他地域に比べて、5倍近くの生産量となっている。通っているそば屋は当然手打ちソバだが、今日は新潟産とか山形産などと店の入り口に貼ってあることが多い。多くの所はソバを挽く石臼がガラス越しにあり、実際に挽いたソバ粉を使って手打ちソバを作っている。これを包丁で細く切ったものがソバきりである。これまでソバ切りそのものをソバだと考えていたが、昔はソバの丸まったもの、つまりソバガキを食べていたようである。ソバガキからソバきりになったのは江戸時代とのことである。

  食べているのはソバ切り

仙台の五橋の人間開発研究センターのバウハウスで、東北大学の宇野忍さんが子どもたちにソバガキを作らせたことがあった。市販のソバ粉を湯を入れて練るだけである。作って食べてみたが、いつも食べるソバきりに比べると美味しさは随分と落ちる気がした。

山形県の鶴岡で偶然入った金沢屋というソバ屋に入ったら、ソバきりと麦きりを分けて出していた。内陸では麦きりは殆ど見たことはなかったが、鶴岡など庄内では、麦きりをよく食べるらしい。店に入ってお客さんが食べているのを見ると、かなりの人が麦きりを食べていた。同じ県内でも少しずつ食文化が違うのだと実感したものである。私自身は、当然ながら麦きりではなくソバきりを注文したのだが。

  ソバ畑を見ると、春から夏に咲いている時と秋口に咲いている場合がある。秋口の方が全体にたくさん植えてある。ソバは日の長さを感じる植物で、夏型、秋型とに分かれている。ソバは植えてから2カ月位で収穫できる利点がある。このように荒れた土地や痩せた土地でも育ち、早く収穫できるところから、昔から救荒植物として利用されてきたのである。

  昔の枕には、ソバガラが入っていて、その種の形が三角であることから、面白い種だと思っていた。タデ科のミゾソバの種もあんな形をしているらしい。「そば」という意味は、本来稜角を持っている意味という。三角の稜を持った種ということなのだろう。とても面白い種の形だと思っている。

  今年も短大の近くの畑でソバを植えていたので写真を撮ったが、花が終わって種ができているのだが、枕に入れる三角の種が枯れた花に隠れて、なかなか探せなかった。その後しばらくすると刈り取られているから、種は十分に育っていたのだろう。

 同じ仲間のミゾソバ

ミゾソバの花が、大きく開いていない感じがするのに比べると、ソバの花は大きく開いていて随分違っているように見える。色々なところで写真を撮っているが、私の撮ったソバの茎の殆どは赤かった。また花は殆ど白のものであった。花の色も、白、赤、淡い赤などあるらしいが、私が出会ったものはほとんど白だった。

道の駅などに貼ってあるチラシに、新そばの宣伝と共に品種が書かれていた。それには「でわかおり」と書いてあった。ソバは主に北海道や東北の各地で作られているが、単一品種なのか、気候などと合わせて品種改良しながら作られているのか興味があるところだが、これも調べると県ごとに異なるようである。北海道ではキタユキ、キタノマシューなどで、岩手県では岩手早生、岩手中生(なかて)、山形県では最上早生、でわかおり、福島県では会津のかおりなどがある。それぞれの地域で異なる品種を植えているらしい。ソバの醍醐味を味わうなら、その地方に行かなければならないということになる。食は文化であり、その土地独特の文化を味わうことも含まれているのではないかと思うようになってきた。

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