蟹江周辺ではイチジクの木が植えられているのを頻繁に見かける。民家の庭で植えられているのと違って商品にするために栽培されているようなのだ。八月にはスーパーなどで販売されている。生食するのかジャムにするのか分からないが、この地方では季節を感じさせる果物になっているらしい。
イチジクの実



そこで調べてみると、和歌山県に次いで愛知県が二番目に生産量が多いと記され、栽培地は安城市、碧南市、常滑市など三河地方が中心となっている。
イチジクは大きく花を開かないで先端に小さい入り口があるだけである。その中の花に受粉するのはイチジクコバチというハチで、そのハチとイチジクが共生していて、イチジクの内部で受粉させているとずーっと思っていた。スーパーで売っているイチジクを見ると、生食するとそのハチや幼虫も食べてしまうのかなぁと思っていたのだった。でも受粉をしないまま果実が大きくなる単為結果性品種というものがあるらしい。それらでできたイチジクが市販されているらしく、それなら食べて大丈夫だなと少し安心したものである。
ウィキペディアには「栽培イチジクの栽培品種は、結実に雌雄両株が必要な品種群が原産地近辺の地中海沿岸や西アジアでは古くから栽培されてきたが、受粉して雌花に稔性のある種子が形成されていなくても花嚢が肥大成長して熟果となる品種もあり、原産地から離れた日本などではこうした品種が普及している。雌雄異花のイチジク属の植物は、花嚢内部に体長数ミリメートルのイチジクコバチなどのイチジクコバチ属の蜂が共生しており、受粉を助けてもらっている。日本で栽培されているイチジクのほとんどが、果実肥大にイチジクコバチによる受粉を必要としない単為結果性品種の雌株である。果期は八~十月。ほとんどの種類の果嚢(いわゆる果実とよんでいるもの)は秋に熟すと濃い紫色になり、下位の部分から収穫できることができる。甘味のある食用とする部分は果肉ではなく小果と花托である」と記されている。
これらの記述を読んで、これまでイチジクについて持っていた疑問が解消し、私がハチやその幼虫も一緒に食べているのではという心配はないことが分かったのだった。
蟹江にも有名な「蟹江いちじく蓬莱柿(ほうらいし)」というイチジクがある。字面(じづら)を見るとカキ(柿)のようだがカキではない。愛知県の案内は「無類の糖度を誇る絶品無花果『ホワイトゼノア』これら『白いちじく』は蟹江町が誇る特産品です。」と記されている。
「水郷楽人の塵芥録」には「白イチジクとは明治以来蟹江で栽培されてきた在来無花果の『蓬莱柿』を言います。地元では別名『コウライガキ』とも云われてきました。今店頭で主流の西洋種『桝井ドーフィン』の外皮が濃い赤色なのに対して、蓬莱柿は薄い赤、もしくは緑色で熟すため『白イチジク』と言われています。ドーフィンよりも一回りほど小振りで、形状は丸い特長を有しています。甘味がドーフィンよりも強いので、名古屋市場でも『蟹江の白イチジク』として高級果物店や料亭などへ取引されるなど根強い人気があるらしい。蓬莱柿は背丈が高いのが特長です。管理や収穫に便利なように這うように横へと枝を伸ばしていきますが、蓬莱柿は横へ伸ばすことが無理なのでこのような樹形となる場合が多いようです。」と記されている。
イチジクもこの地方の食文化を支える一部になっている。イチジクも長い歴史の中で品種改良され、土地に合うように作られてきた歴史をもう一度考え直す必要があると思ってしまった。
数年前の七月に愛西市福原輪中で、一本のイチジクを左右の横に伸ばしてイチジク栽培している畑の動画を撮ってユーチューブに投稿した。その動画ではイチジクの実が生り始めていて、私の感覚ではありきたりのイチジクの風景なのである。このイチジクの様子から樹形になっていないことから、蟹江の「蓬莱柿」とは異なる「桝井ドーフィン」ではないかと考えている。
面白いイチジク栽培の仕方



それから二年程経つが視聴数が一万九千人を超えている。なぜそれほど多くの視聴数になるのか見当がつかなかった。何故だろうと考えていた矢先、知人が外国からの視聴数が多いのではないかと教えてくれた。そのユーチューブの動画を視聴している地域を見たら、日本(一九・八パーセント)ブラジル(九・九パーセント)インド(九・四パーセント)トルコ(三・三パーセント)アメリカ合衆国(二・九パーセント)となっていた。日本ばかりでなく、外国からの視聴数も多く、そうした地域でイチジク栽培をしている人達がいて、日本の農業技術を知りたいと思って視聴している可能性が考えられる。
前述の白イチジクの「蓬莱柿」は背丈が高いので横に伸ばすのが難しく、高く樹形の形にして栽培すると言われている。先日ある畑のイチジクの栽培場面の写真と動画を撮った。前年度の茎は切り落とされ新たな茎が出始めていた。毎年その茎が出るところを見極めて、そこから新茎を出させてイチジク栽培をしているらしい。それなら手頃の高さでイチジクを収穫できる筈で、なかなかの技術だと感心してしまった。投稿したユーチューブの動画から、そんな技術を学んでいるのだろうかと考えたのだった。
これは天童のサクランボの栽培も同じで、毎年無駄な枝を切り落として、サクランボの花を咲かせる場所を決めながら栽培している。サクランボの花の写真を撮ろうとしても枝に綺麗に咲いているというよりは、枝の先が切り取られた枝に咲いていて、余り風情はなかったことを想い出した。イチジク栽培も同じで、目で見るのを楽しむ風情ではないと言った方が良い感じなのである。
ところでユーチューブの動画を見て感じるのは、女性のセクシーな仕草やペットなど、見た目に面白いとも思われる題材のものに惹かれる視聴者が多いようなのである。纏めていえば、かなり感覚的で娯楽的な内容のものに引きずられているように思われるのだ。
それなのに、ありきたりのイチジク栽培の動画がどうしてこんなに多いのか、とても不思議である。何故なんだろうか。
(クワ科 イチジク属)
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