アメリカフウロ

植物編

天童で野山を歩き回っていて、叢で白い花を咲かせる植物を見かけた。葉の切れ込んだ感じからキンポウゲの仲間かと予想して家に帰って図鑑やインターネットで調べたら、フウロソウ科のゲンノショウコと載っていた。

 ゲンノショウコは下痢止めや健胃の薬草として有名である。センブリ同様に煎じて飲むようだが「良薬は口に苦し」の諺のように苦いのではないかと思われる。

アメリカフウロ

 ウィキペディアには「有効成分は全体、特に開花時の茎葉に、フィロバロールタンニンを約二十パーセント、その他に没食子酸(もつしょくしさん)、クルセチオン、コハク酸などを含んでいる。タンニンとは渋のことで、たんぱく質などと結合して細胞組織を引き締める収斂作用、消炎作用、止血作用があるといわれる。根・茎・葉・花などを干し煎じて下痢止めや胃薬とし、またチャとしても飲用する。」と記されている。タンニンが多く含まれていることから、やっぱり苦いのだろうと思っている。

 天童周辺では白い花のゲンノショウコしか見かけなかった。それまでゲンノショウコはなぜか赤い花びらだと思い込んでいたので、とても驚いた。と同時にがっかりしたことを覚えている。西日本では赤が、東日本では白が一般的らしいのである。

 二年前の八月三十一日に伊吹山にサラシナショウマの写真と動画を撮りに行った。頂上付近には他にシオガマギクやアカバナなど伊吹山の特有な植物が咲いていたが、その中にフウロの仲間も咲いていた。ミツバフウロかヒメフウロかは分からなかったが、どれも薄いピンク色だった。西日本の伊吹山だから赤系統のフウロなのだろうと思った。余談だが、その頂上までの有料道路代が三千百四十円で、とても驚いてしまった。せいぜい千円で良いと思うのだが、この道路は私有地でその管理費用も含めて、これほどの料金だとのことだった。

 アメリカフウロの実

 ゲンノショウコは秋に蒴果ができ、はじけて種を放出した後に神輿のような形になる。別名ミコシグサともいわれている。実の形はカタバミも同じ蒴果だが、神輿のようになると書かれていない。ゲンノショウコだけの特徴かも知れない。ミコシグサになった写真を撮ろうと秋になるのを楽しみにしている。

 ゲンノショウコはフウロソウ属に入る。図鑑にはハクサンフウロ、チシマフウロ、イヨフウロなど沢山の種があり、四百二十種以上とも言われている。その一つがゲンノショウコなのである。

 ゲンノショウコと実(飛ばした後のミコシグサ)

 蟹江に帰って永和の沼周辺でゲンノショウコと似たフウロの仲間を沢山見かけるようになった。少し立ち上がった感じで花の大きさはゲンノショウコよりは小さい感じである。それはアメリカフウロと呼ばれる外来植物だった。この辺りでは全くゲンノショウコを見かけていないので、蟹江周辺では既に淘汰されて消滅しているのかも知れない。植物の世界でも、これまでの在来植物と外来植物とのせめぎ合いで、在来植物が押しやられているのだろう。

 アメリカフウロはアメリカ原産の外来植物である。どの外来植物も初めはかなりの勢いで増えて、その後生態的な位置が安定してくると、その数は一定になってくるらしい。セイタカアワダチソウも一時はススキの叢を占拠して日本の風景が変わるほどだったが、最近では昔ほどの勢いは見られなくなっているように思える。安定する時間の長さは何十年単位だと思われるのだが。

 「野田市の草花図鑑」には「名前の通り北アメリカ原産の外来種で、国内では一九三二年に京都で発見されて以来全国に広がり、今では農地や幹線道路沿いを中心にどこでも見られる身近な野草となっています。草丈は数十センチほどですが、茎はよく枝分かれしながら横にも張り出していき、しばしば大株になります。花は直径五ミリ程度で淡いピンク色。花びらは五枚です。春から秋にかけてダラダラと開花する傾向が強く、市街地では真冬でも花を咲かせていることがあります。在来種のゲンノショウコと同じ仲間で、花のない時期の雰囲気はよく似ていますが、アメリカフウロの葉はより細かく切れ込む傾向があります。また、アメリカフウロの葉はしばしば赤く縁取りが入り、ゲンノショウコのような黒い斑点がありません。」と記されている。

 葉の形や色、茎が枝分かれしているところがゲンノショウコと違っているらしい。ゲンノショウコはミコシグサと言われるように、乾燥してくると実がはじけて種を飛ばす仕組みを持っている。アメリカフウロは黒い実がはじけているのを今のところ見かけていない。形から言えばゲンノショウコと同じようにミコシグサになるに違いないと予想している。

すると次のような記述を見かけた。「野田市の草花図鑑」には、「アメリカフウロの果実は、ツンととがったツノのようなかたちです。タネは、このツノの根元の部分にある膨らみの中に、1個ずつ入っています。成熟して真っ黒に色づくと、角の部分が下からまくれ上がり、ハンマー投げのような要領で種を遠くまで飛ばそうとします。同じ仲間のゲンノショウコも同様の方法でタネを飛ばし、その姿が神輿のように見えるためミコシグサの異名を持っています。」と記されている。アメリカフウロもミコシグサになるらしい。今年は黒い実がミコシグサになるかどうか、じっくり観察したいと楽しみにしているところである。

(フウロソウ科 フウロソウ属)

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