ムクドリ

動物編

ムクドリはどこでも見かける鳥である。私は余り良い印象を持っていない。仙台の知人宅の餌台にも頻繁に群れでやってきて、我が物顔で餌を独占している姿を思い出す。ヒヨドリもスズメ等の他の鳥たちが餌台に来ると追いやるが、ほとんど単独なので群れで餌台に来るムクドリには敵わない。さすがのヒヨドリもムクドリたちが来ると一時退散せざるを得ないことになる。ムクドリは雑食性で群れで行動しギャーギャーとうるさく、嘴と足が橙色なのがまた腹が立つ原因である。私はムクドリを何故か鳥の中のギャングと呼んでいる。

ムクドリ

 客観的に見ればムクドリの行動習性に善悪はないことは重々承知しているものの、悪者と考えてしまうのは私の偏見に過ぎないのは言うまでもない。しかしそこかしこで群れで行動している姿を見ると、やっぱり好きになれないなと思ってしまう。

 蟹江に帰ってきてから日光川のウオーターパークに行くと、秋から冬にかけてセンダンが実をつけている場所では、ヒヨドリがその周辺を鳴きながら飛び回っている。また善太川の柿の実がなっている場所では、ヒヨドリやツグミが止まっているのを頻繁に見かける。それらの鳥がいない時には群れになったムクドリたちが木に止まって、柿の実を我先にと食べている。柿の実とセンダンの実でなくなるのは柿の実の方が断然早い。柿の実がなくなる十二月中旬を過ぎると、次に沢山なっていたセンダンの実がなくなっていく。鳥たちにも木の実に好き嫌いがあるらしい。

蟹江周辺ではセンダンの木が多く、秋になるといたる所でセンダンの実を見かけるようになる。それらは水辺に近い場所に生えていることが多い。柿の実ばかりでなくセンダンの実も鳥たちは好き嫌いを言っておれずに冬の重要な餌になってくる。春になるまでに結局はセンダンの実も全くなくなってしまう。センダンにとっては食べて貰うことで種子の分布を広げるチャンスになっている筈である。

 センダン、ナンキンハゼ、カキの実と啄む

「日本の野鳥」(叶内拓哉 安部直哉 上田秀雄 山と渓谷社)のムクドリの項目には、「留鳥または漂鳥。環境は平地から山地の市街地、農耕地、川原、疎林など。行動は一年を通して群れで生活するものが多い。採食は樹上か耕地後の農地、芝地、背丈の低い草地などで、特に草刈り後に多く、昆虫類や木の実を食べる。暗い林内や丈の高い草原の中にはほとんど入らない。採食場では少数で行動するが、夕方に近づくにつれて群れ集まり、集団ねぐらへ入る頃には大きな群れになる。特に非繁殖期には大群になる」と示されている。

 天童でも蟹江でも冬の夕方になると大群になって電線に止まっている。天童である夕方にムクドリたちが電線に並んで止まっている写真を撮ろうと電線近くまで行ったら、上着の肩に糞を掛けられてしまった。その大群が暗くなってから巣に帰るというのは信じ難い。そのまま電線で朝方までいるのではないかと思うがどうだろう。夜中に確かめに行った訳ではないのでその確証はない。他に電線に大量に止まるのはカラス、ハクセイレイ等の例を知っている。カラスは秋口から冬にかけて集団行動するから不思議には思わない。ハクセキレイが電線に止まる時期は秋口だっただろうか。今のところはっきり覚えていない。

 このムクドリが大量に市街地の街路樹や電線に止まることで、フン害や騒音に悩まされている。ムクドリを追い払うためにどうするかが市町村の悩みの種である。ある場合にはムクドリの声を録音して大音量で流すことで少なくしようとする対策もあったが、多少の効果があったものの、他の市町村でやってみたら効果がなかったという。

 秋になると大群で生活する

 朝日新聞の「タカでムクドリ一掃作戦、成果あり、市民から激励電話も」(二〇一七・一一・八)には「近鉄四日市駅から市役所にかけての市街地一帯は、大挙して押し寄せるムクドリの糞や騒音に悩まされてきた。市は八月から週二~三回のペースで、ムクドリの天敵のタカ二羽を鷹匠(たかじょう)を使って飛ばし、追い払う作戦を繰り広げてきた。市市街地整備・公園課の担当者によると、個体数を実際に数えているわけではないものの、一時は数千羽いたムクドリは『だいぶ減ってきた』。タカを飛ばすと、街路樹から逃げたり、上空を旋回したりして、恐れている様子がうかがえるという。市民からの苦情もほぼなくなり、逆に『タカを放っている様子が見たい』などと日程を尋ねたり、『もっと頑張ってくれ』と激励したりする電話もある。他の自治体などからの問い合わせもあったという。ただムクドリは例年、十一月中旬から下旬にかけて、別のねぐらに移り、六月の終わりごろから再び戻ってくる。同課は『来年戻ってくるムクドリがどれだけ減っているかが、(作戦の)評価の分かれ目』としており、来年もタカによる対策を続ける予定という。」と記されている。

 春になると甘いヤマグワの実を啄む

 この記事に出てくるタカはどんな種類のものか分からないが、オオタカかハヤブサではないかと思う。実際に野外でハヤブサ、ミサゴ、オオタカ等のタカの姿を見ると、ハトであれカモであれケリであれ、想像以上に群れに混乱が起こる。タカの観察者の中にはこれらの鳥たちの混乱具合を見て、タカの存在を知る手掛かりにしていると聞いたことがある。実際に私もいつもの行動とは違って狂ったような行動をしているカワラバトを見かけた時、オオタカやハヤブサが近くを飛んでいたのを何回も見かけている。ムクドリも同じだと思うが、どうして天敵のタカの仲間を瞬時に判断できるのかとても不思議である。

 ムクドリというと、何故かすぐ椋鳩十(むくはとじゅう)を思い出す。児童文学作家であり、動物を題材にした作品をたくさん世に出している。その作品の中にムクドリを題材にしたものはないようである。どうしてこんなペンネームにしたのか聞いてみたいものである。そんなこともこのムクドリの項目を書いているうちに考えた。(スズメ目 ムクドリ科 ムクドリ属 ムクドリ)

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