ミズバショウ

ミズバショウは春になると湿地帯に生えるサトイモ科の植物である。春の訪れを象徴する植物だがテレビで放映されることも多く、どの人も知っている植物の一つであろう。私は仙台に来てからミズバショウと出会った。このミズバショウに似た花を小学校の池の中で見たのがこの仲間を知るようになった始めである。考えてみるとカラーの仲間だったような気がする。写生の時間に画用紙に描いて提出した想い出がある。花が太いめしべを巻き込んでいる形が印象深く、何回もこのカラーを描いたものである。今考えると水芭蕉も同じだが、その花びらに見えるものはホウであって花ではない。

天童高原で見かけたミズバショウ

野草園や植物園には必ずといっても良いほど湿地帯があってそこに生えている。多くは人が管理するミズバショウである。天童周辺では天童高原の入り口の湿地帯にミズバショウが群生しているし、若松観音の敷地にある駐車場脇の池にもミズバショウが見られるが、これらもやはり人が管理していると思われる。

私にとって印象深いミズバショウは、寒河江から国道112号線を鶴岡方面に行って、今の月山インターから大井沢方面に入った途中で用を足したいと思って車を降りた。そして山側に入った所に小さい湿地があり、そこで数本のミズバショウを見つけた。人が入らないところで偶然それを見つけた時、とても感動したのを覚えている。私たちの見るミズバショウは人が管理しているものが多いので、自然のままのミズバショウに出会えたのは幸運だとしか思えなかった。

 庭で育てているミズバショウ

 20年以上前になるが仙台の近郊都市の生協の花屋でミズバショウを売っていたことがある。野草を専門に育てている植木屋さんや植木市ではシラネアオイ、オキナグサやクロユリを売っているのに出くわすことはあるが、ミズバショウを売っているのは経験したことはなかった。当時県営住宅の3階に住んでいて、ミズバショウを育てる環境でなかったので、広い土地(600坪位?)を持っていて自然のままで管理していない友人が頭に浮かんで、そのミズバショウを2株(1株800円)購入して持参したのである。

  鶴岡の畑脇で見かけたミズバショウ

 その家には南側に隣家があり、その間の庭に小さな池があった。その池も年々泥が溜まってある意味で湿地帯のようになっていた。そのミズバショウの2株を、1つは鉢に入れたまま、もう1つは素焼きの壷に入れて、その池の水が鉢のミズバショウに浸かる高さまで埋めて移した。冬になると仙台地区も寒さが厳しく池も水がなくなって凍ってしまう時もある。当然ながらミズバショウは枯れていて根だけになっていたが、春になるとミズバショウが小さくなっても芽を出した。主人の仕事の関係で十年近く無人状態になり、池の周りの管理をしなかった。池の環境が放置されている間に2株のうちの1株がなくなってしまった。そこの主人はその土地に新しく家を建てて住むようになったが、その際ミズバショウを何とか移植できないかと造園さんに頼んだ。造園さんはミズバショウを新しい環境に馴染めるように、土や生育環境を考えて移植してくれたとのことだった。今年の春には新芽が出たが、花は咲かなかったとの話であった。少しずつ腐葉土を与えていけば、昔通りのミズバショウになるかも知れないと、僅かな期待をしている。

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