タケノコ

植物編

タケノコについては色々思い出があるが、初めに思いつくのは孟宗竹のタケノコである。実際にタケノコ掘りに行った経験はない。でも小さいときに母親が孟宗竹のタケノコを買ってきてその皮を剥いで、その柔らかい皮を三角にして、その中に梅干しの種をとって潰したものをくれたのである。それをしゃぶると口の中に梅干しの酸っぱい味が少しずつ浸み出てきて、おやつ代わりになった。母親がどんなタケノコ料理を作ったかは全く覚えていないのに、母親がくれたそのおやつだけは、今でもなぜか鮮明に覚えている。

タケノコ

 春が到来すると天童辺りのスーパーでは、始めに鹿児島産のタケノコが出回るが買っている人を見たことはない。遠路はるばる鹿児島から送られてくるので、数日間はかかっている。山形県では春が遅いからタケノコの時期も遅れるが、日本海側の湯田川あたりはタケノコ産地として有名である。県民が朝採りのタケノコに慣れてしまっているから、わざわざ買わないのだと思う。山形や福島県の道の駅に行くと、その地域で採れた朝採りのタケノコを手に入れることができる。私などは知り合いにあげる積りで買うことがある。そういう店では、普通タケノコの傍にヌカの入った小さい袋が置いてあって自由に持って行かれる場合が多いのだが、スーパーなどではその袋に定価が書いてあるものもある。

 孟宗竹のタケノコは灰汁があるので、それを取るために米のとぎ汁や米ヌカが良いと言われる。人にあげるのにタケノコだけあげても調理できないので、どこかで米ヌカを調達しなければならない。考えたのが米屋に行ってヌカを分けてもらう方法である。最近では米屋そのものが少なくなっている。そこで次に考えたのは、コインの無人精米所である。これは山形や福島辺りには大きなホームセンターの隅とか、道路脇に立っていることが多く、その積もりで探すとすぐ見つかる。そのコイン精米所は精米した米の場所と残るヌカを集める場所が分かれており、別々の戸がついている。米ヌカを集める戸には、「自由にお持ちください」と書かれてあった。戸を開けると、多くのヌカが溜まっており、それを必要分だけポリエチレンの袋に入れて持ち帰る。

 孟宗竹の季節が一段落して6月に入って道の駅に行ってみたら、孟宗竹のタケノコよりは細くて長いタケノコを売っていた。店の人に聞くとワダケと言うそうである。どこの庭にも生えているものでそれを食用にするのである。私はそれを手に入れようとしたが傍に米ヌカが置いてないので、レジで「これは米ヌカで灰汁抜きしなくても良いのか」と尋ねたら、灰汁抜きはしなくて良いと言われた。知り合いの家にあげたら、後日少し灰汁があって苦かったとのことだった。

 孟宗竹(モウソウチク)

 知り合いの家では、広い敷地に黒竹がたくさん生えている。春になると新しいタケノコが出てどんどん増えているので、「この竹もワダケと同じだから、灰汁抜きしないでも食べられるかもしれない」と話したら、そこの主人は実際にワダケを採って、ちくわ、ニンジン、鶏肉と合わせて煮しめにした。その結果煮しめの材料として十分耐えられることが判明した。先日会って話したら一週間程ワダケのタケノコを食べ続けていたと笑いながら話してくれた。野菜でも同じであるが、旬のときは一時的にその量が多くなる。だから全部を消費しようとすると大変な努力を要することになる。主人の話ではタケノコが伸びすぎてしまうと、やはり苦味があるという話であった。しかし、孟宗竹のおいしさや利用の仕方は誰もが周知しているが、庭に生えているワダケも食材として利用できるようになれば、食材のレパートリーが増えたことを意味しているのではないかと思う。

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