春になって山形から仙台に抜ける国道48号線で、黄色い花が咲いているのを車窓から何度か見かけた。それもキク科でなく筒状の小さい花をつけている。ツリフネソウのようではないが細長い筒状で、何という名前の花なんだろうといつも思いながら通り過ぎていた。ある時はその花の写真を撮ろうとしてシャッターを切ったが、腕が悪いからかピントが合わず、後でパソコンに取り込んで見てみるとすべてピンボケだった。春が早く周りの植物も新芽を出していない時期で、しかも日当たりの少ない日陰に場所に咲いているので、とても印象に残る花だった。これは後から知ったがキケマンという花である。
ミヤマキケマン
今年の4月の末に天童のアパートから、一時間ほどかけて若松観音の登り口まで歩いた。ウオーキングと共に春の植物の写真を撮るためである。ぶらぶら歩いていると、登り口に近いところに、キケマンと同じような白っぽい筒状の花が咲いていた。私はその花の形より葉に注意を惹かれ、キンポウゲの仲間(オダマキ、イチリンソウ、ニリンソウなど)に似ていると思ったので、キンポウゲの仲間だろうと推測していた。その先の若松観音の登り口の道路には、毎年春になるとイチリンソウやキクザキイチゲなどが咲く場所があり、そこで写真を撮ったのである。春の野草はある期間しか花を咲かせないものが多く、時間を惜しんで何度でも出かけて写真を撮っている。
二リンソウ
キクザキイチゲ
翌日も気になったので、カタクリやイチリンソウの写真を撮る目的で車ででかけたら、若松観音の登り口のす手前の道路脇の林の中で、若い何人かがある範囲をビニールテープで囲んで、椅子に座ってその花が咲いている場所を観察し記録しているのを見かけた。その観察者の他に、40代くらいの男性がそれを見ていた。私は近くに車を止めて、その男性に何をしているのかを尋ねた。その男性はこの花にどんな蜂、ハエや甲虫が蜜を吸いにくるか、加えてその頻度数を調べているところだと話してくれた。そこで、この花はキンポウゲの仲間ではないのかと尋ねると、確かに葉は似ているがケシ科のエンゴサクだと答えてくれたのである。彼らは山形大学の生物学教室の学生たちであった。まだ4月の末で肌寒く、この花の蜜を吸いにくる蜂、ハエや甲虫がそんなに多くいるはずがないと思うのだが、花が咲いているところを見ると虫媒花には違いがなく、近辺にたくさんのエンゴサクがあり、全部が受粉できて種ができるのか疑問に思った。他家受粉が上手くいかないときには、自家受粉する仕組みを持っているのかもしれない。こうした偶然のきっかけで、私はケシ科のエンゴサクを知るようになった。
エンゴサク
その後5月になってワラビ採りをしている放棄地の野原に薄い赤紫のエンゴサクの仲間を見つけた。これがムラサキケマンである。エンゴサクもキケマンとムラサキケマンも同じケシ科のケマン属である。調べてみると、エンゴサクは中国の漢方薬の日本語読みであり、ケマンとは仏像や堂塔の天辺につける花飾りをいうが、それに似ていることから名づけられたようである。
これらの花は他の植物に比べて、ムラサキケマンを除いて春の早い時期に咲いている。
ところが10月に入って、宮城県の村田の山の中で、黄色いケマンの仲間を見つけた。キケマンよりは花のつき方がばらついている感じがしたので調べてみたらツルケマンだった。春に咲くケマンの仲間でなく、こんな時期にキケマンが咲いているなんてと最初に見つけたときは吃驚したのである。このように今年になって出会った植物の代表格はエンゴサクでありケマンの仲間だといえるだろうな。
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