フデリンドウ

秋に咲くリンドウは花屋でも売っているし、若い頃友人たちと南蔵王を縦走したときにも、ところどころに咲いていたのを今でも覚えている。その後畑で栽培種であるリンドウも見かけるようになった。福島県の会津の大内宿の入り口にリンドウを栽培している畑があり、それをなぜか印象的に覚えている。その花の色も青から紫そして白と、花の色は多様になって、花の数のつきかたは野生のものより多くなっている。

こうしたリンドウの仲間で、春に咲くリンドウの仲間にハルリンドウやフデリンドウがあり、私たちの知っているリンドウよりはとても小さく、5~10センチほどの高さで、青い色をしている可憐な花である。私自身は、宮城県の村田町の奥まった丘の遊歩道沿いで見たのが初めである。その後注意して見ると、いろいろな所で偶然見かけるようになった。この花は、朝夕には花が閉じているので、朝や夕方の時刻に歩いていても気がつかないのが、昼間明るくなると花が開くので探しやすい。花は一輪だけが咲くというよりは何輪かがまとまって咲いていることが多いので、よく見るとその青色の花を探すことができるのである。

   フデリンドウの花

いわきから山沿いの県道を仙台まで帰るとき、道筋にわらびが生えていたので車を止めてわらびを探していたら、フデリンドウが咲いているのを見つけた。いつも携帯用のデジタルカメラを持っているので、それで春リンドウを写真に収めた。しかし、技術と道具立てが悪かったのかピントが合わずに、ピンボケになってしまった。

私はこの春に咲く小さなリンドウの可憐さに魅かれて、春に咲くから勝手にハルリンドウだと思っていた。ところが見た目に同じリンドウもハルリンドウとフデリンドウに分かれるのを最近になって知るようになった。ハルリンドウは根元にある根生葉がロゼット状(タンポポの葉のように)になるのに対し、フデリンドウは根生葉が小さくロゼット状にはならないと図鑑に書かれていた。この2種類のリンドウの生活環や繁殖方法は異なるのか今の私の学力では分からない。

秋に咲くリンドウの仲間には、センブリがある。地方にある道の駅で、漢方の胃腸薬として乾燥したものが束ねて売られているのを見かけることがある。このセンブリは煎じて飲むと苦いと言われているが、私はこれまで飲んだことはない。

   センブリ(リンドウ科)

このセンブリは、いわきから川内村(震災後の原発被害で立ち入れない期間があった)へ抜ける山道を通ったとき、途中で止まってちょっと山道に入ったとき、その山道の中央部分にセンブリが咲いていたのを印象的に覚えている。この花もリンドウの仲間で可憐な花である。センブリを見たのは、それが人生で一度きりの経験である。

  フデリンドウの咲き終わった後の様子

天童に住むようになって天童周辺を散策するようになった。天童から仙台に抜けるには関山トンネルを通るのだが、関山峠への旧道を5月の連休時期に歩いていたときに、何か所かで偶然フデリンドウを見つけた。そこでもカメラで撮ったような記憶がある。最近では天童の丘陵地帯を2~3時間かけてぶらぶら歩きながら、植物や昆虫などの写真を撮ることが多いが、山道沿いのすぐ脇に入り込んだところに、偶然フデリンドウを見つけた。関山峠への山道で見てから4~5年ほど経っていた。デジタルカメラで何枚も写真を撮ったがピンボケになるものが多く、掲載されている写真は偶然にもうまく撮れたものである。

まだ他にもジャガラモガラの奥に入ると、沼跡の土手にフデリンドウが咲いていた。ちょうど5月の連休で、ハルゼミも盛んに鳴いていてその写真も撮った。人知れず咲き次の世代を繋ぐ営みが、植物と動物で行なわれていることを感じたものである。

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