キョウチクトウ

植物編

夏になると広い道路の両側にキョウチクトウの花が咲いているのを見かける。小さい頃から私の中に、夏の暑さとキョウチクトウが対連合している。終戦の8月15日の暑い日に、キョウチクトウの花が咲いていたと書いてあるのをどこかで読んだ記憶もある。他には朝顔、ムクゲ、カンナ、オシロイバナ、サルスベリなども夏を思い出させるが、その中でも熱くなったアスファルトの照り返しの中で咲いているキョウチクトウの印象は、特に心に強く残っている。

 キョウチクトウの花の色はピンクが多いようだが、天童のある家の庭には赤と白のキョウチクトウが植えられていた。それを通勤途中に勝手にカメラで撮らせてもらった。キョウチクトウというと、そんな身近に植えられていてその特性について考えたことはなかった。

今の中国の排気ガスやpm2.5の問題は、昔の日本の公害問題を彷彿とさせるが、工場からの排気ガスよりは、自動車のそれが酷かったように思う。そんな状況の中で、高速道路などのアスファルト道路端に、キョウチクトウが植えられていた。排気ガスで、緑の葉が粉塵で黒くなっていても逞しく生き続けているところをみると、こうした過酷の環境でも生き延びられる特性を持っているのだろう。

ところで、「毒草を食べてみた」(文春文書 植松黎)を読んでいたら、私が良く写真を撮っている植物、例えば、クサノオウ、オトギリソウ、イラクサ、ヒガンバナ、また庭に植えられているスイセン、アセビ、エゴノキなどにも毒があることが記されていた。「キョウチクトウの毒はおもに強心配糖体という心臓に作用する成分で、オレアンドリン、アディネリンといった物質が、葉、花、枝、茎、また、それらを折ったときに出る白い乳液など、植物の全ての部分に含まれている。古代ギリシャのアレキサンダー大王率いる軍隊は、キョウチクトウの枝を串にして肉を焼いたために多くの兵を失ったと伝えられている。同じような事件は、ナポレオンの軍隊にも、太平洋戦争のとき南方にいた日本軍にも起こった といわれている」と述べられている。この著者は、実際にこのキョウチクトウを串にして豚を丸焼きにして食べようと四苦八苦している。「羊や牛の肉を丸ごと火にくべ、肉の表面が焼けるそばから順にナイフや刀で切って食べたはずである。キョウチクトウの枝にしても、芯の髄は柔らかいものの、外側の木質部と樹皮はしっかりしている。太いまま刺せるなら串として使えたのではないか。」と色々と工夫した揚句、キョウチクトウで亡くなった兵士たちがいたことに合点している。

キョウチクトウの致死量は、体重1キロ当たり0.30ミリグラムで、青酸カリよりも猛毒の成分であるという。色々の自然の植物を見ると、その植物だけを食べる動物がいることが多くて吃驚する。先日も、日本ハッカ、ミントなどにも異なる芋虫がついていたし、エゴマにもベニフキメイガの幼虫がついて葉を食べていた。野生の植物が生き延びるのはどんなに大変かを実感した。そこで、キョウチクトウの毒にも敵がいるのか調べてみたら、キョウチクトウアブラムシやシロマダラノメイガがいることが判明した。植物が毒性を持つのは、基本的に人間を対象にしたものでなく、生態的に自分の存在を脅かす動物などの敵を対象にしたものと想定すると、キョウチクトウのような毒性を持った植物にも特定の敵がいることをを知って、生き続けるための工夫が、植物と動物の両方にとってどんなに大変なのかと思ったものである。

                   

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