春の七草
野草や植物に親しくなる方法には、星座の夏の大三角(アルタイル、ベガ、デネブ)や冬の大三角(ペテルギュース、プロキオン、シリウス)のように、それを元に他の植物を関連させて覚えやすくさせる方法がある。そんな一つに春の七草と秋の七草があるのではないかと思う。
春の七草は、「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロこれぞ七草」と詠まれている。セリ(セリ科)は今風に言えばアブラナ科のクレッソンのように洋風の食事のつまにも使われるし、セリ鍋にも使われる存在である。ナズナ(アブラナ科)は、昔遊んだペンペングサで三味線の撥(ばち)に似たもので、小さいときに揺らしたり、二つを合わせて叩いたりしたものである。音は出なかったが三角の撥に似ていて道端に今でも沢山生えている。ゴギョウ(キク科)は母子草で、葉にはビロードのように小さい毛があり白っぽくみえるが、黄色い小さな花がたくさん葉の上部に群れて咲いている。ホトケノザはシソ科の仲間で茎は四角く仏が座っているような風情だが、名前は七草に出てくるものの、実際にその代わりに使われるのはコオニタビラコ(キク科)だという。地方によってホトケノザと呼ばれる対象が違っていたらしい。スズナは私たちが知っている蕪(かぶ)であり、スズシロは大根である。
これらは正月の三が日を過ぎて七日の七草粥に入れる食材である。三が日の食生活を調整するための野菜という訳であろうか。日本中でこの季節にこれらの植物がどの地方でも生えているかは分からないし、新暦と旧暦の違いがあって、まだ雪深い地方もあることだろう。
秋の七草
秋の七草は、万葉集に出てくる山上憶良の歌に由来するもので、「秋の野に咲きたる花を指折り(およびおり)、かき数ふれば七種の花 萩の花、尾花、葛花、撫子の花 また女郎花(おみなえし)、藤袴(ふじばかま)、朝顔の花」の中に出てくる植物である。萩の花は、東北では色々なところに生えて花が咲いているのを見かけることも多い。宮城県では萩の花が県花となっており、また東北大学のシンボルマーク(襟章)は萩がデザインされている。尾花はススキのことであり、幽霊だと思ったら枯れ尾花だったという話もある。葛は夏から秋にかけて豆科の植物で、三つに分かれている大きな葉で、土手や大きな木もこれらの葉で被われてしまっていることがある。
秋口になると赤紫の層状になった花をつける。撫子は大和撫子と言われ花屋などでは売られているが、野生の撫子は山や崖に時々見られる程度で、最近は見られなくなってしまった。女郎花(おみなえし)は黄色い小さな花が沢山ついているが、野生のものはほとんど見ることはなく、花屋や畑で栽培しているのを見る程度である。藤袴(ふじばかま)は女郎花よりは見かけることが多いが、藤袴の仲間であるサワヒヨドリなどの種類が殆どで、藤袴と確定できるようなものに出会うことは少ない。でも園芸種として庭によく植えられているのを見かける。朝顔の花は万葉の時代にはまだなかった(江戸時代以降)から、キキョウの花か、アオイ科の木本科のムクゲ(韓国の国花)でないかという説がある。こうした植物を元にして、仲間探しや関係する植物を探していくと、関連させながら多くの植物を知ることができるようになるのではないかな。
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