イカリソウ

植物編

天童では春になるとフデリンドウの写真を撮るために、色々な所を歩き回っていた。天童高校の裏手の丘陵地帯、天童高原の北面白山に通じる山道、関山峠の山道などで見かけていた。また宮城県の村田の山道沿いの叢でも時々見かけたものである。このフデリンドウは朝早いと閉じていて、陽射しが当たると花を開く。また夕方になって陽が当たらなくなると花を閉じるので、その存在が分からなくなってしまうのである。カタクリの花と同じように陽射しを感じる感受性機能を持っているらしい。そんな中で良い姿のフデリンドウの写真を撮りたいと思って歩き回っていたのだった。

天童で多く見られた白いイカリソウ

 そうしているうちに叢の土手になっている場所で、イカリソウも見かけるようになった。名前は昔から知っていたものの、実際に見かけるようになったのはフデリンドウ探しの副産物だったのである。

 でも一度見かけるようになってから、イカリソウが生えていないかと探すようになった。宮城県村田町の山に入った土手、天童の原崎沼への道脇の土手、東根の白水川ダムの土手、天童高原の北面白山への山道の土手、宮城県のサイカチ沼の土手などで見かけた。どうも土手に生えていることが多い感じなのだ。

私が見かけたイカリソウは白かクリーム色のものが多かったが、村田町とサイカチ沼のイカリソウには薄い赤紫色のものがあった。その生態を詳しくは知らないままだが、春にイカリソウに出会うと、春が来たんだなぁと思うようになってきたから不思議である。

 ウィキペデイアには「メギ科イカリソウ属の落葉多年草。低い山地の雑木林に生え、茎の先が三本の葉柄に分かれて、三枚の小葉がつく。春には淡紅紫色の錨形の花を咲かせる。~中略~ 日本の北海道南部から本州・四国・九州の主に太平洋側の平野部や低い山地に分布し、各地の丘陵や山裾の雑木林など、林縁や樹陰に自生する。イカリソウ属は二十五種ほどがアジアから南ヨーロッパにかけて分布する。~中略~ 花期は春の四月から五月にかけて、吊り下がった薄紅紫色の花が下向きに咲く。花茎は五~七センチ。四枚の花弁が、中に蜜をためる長さ一・五~二センチの距(管条の細長い突出部)を四方に突き出して、ちょうど船の錨のような形をしている。」と示されている。

 分布では太平洋側に多いようだが、奥羽山脈西側の山形県側でも見かけているので、日本海側の海岸線沿いでない内陸なら見られる可能性があるようである。イカリソウの色合いは白かクリーム色が普通だと思っていたが、一般的には薄紅紫色が多いらしい。山形県で見かけてたイカリソウの色合いは特別なのかもしれない。

 宮城県側で見られた赤紫のイカリソウ

 面白いと思うのは花に距(きょ)があることである。ツリフネソウ、エンゴサクやケマンなどの花には距があって蜜がそこに溜まっている。昔から花が面白い形だと思っていたのだが、イカリソウにも距があることにとても驚いたものである。

 蟹江周辺ではイカリソウを見ていないが、養老山地に行けばあるかも知れないなぁと考えている。蟹江周辺ではないと思っていたオドリコソウやカキドオシなどが海津市で生えていたからである。

 BOTANICAには「中国の薬学書『本草綱目』には、『羊がイカリソウを食べて精力絶倫になった』という話が記載されています。イカリソウから作る生薬を「淫羊霍」と名づけたのは、この話が由来です。また中国には、『イカリソウを食べると、老人も杖が不要なくらい元気になる』という伝説もあり、『放杖草』とも呼んでいます。このように、中国では古来から強精・強壮に効能がある薬草と認識されていました。イカリソウは滋養強壮効果が高いとされることでも有名です。民間療法でも煎じて飲む、またはお酒に漬けてエキスを抽出したものを、滋養の薬用酒として寝る前に湯で割って飲むといったことが行われていました。体を温める効果もあるため、手足の冷え、冷えが原因の腰痛にも効くといわれています。販売されている薬用酒には、イカリソウのエキスを配合した商品も多いです。」と記されている。飲んだことはないが、昔から大人になったらぜひ飲んでみたいと思っていた「養命酒」の写真が載っていた。そこでウィキペディアで「養命酒」を検索すると、ウコン(鬱金)、ケイヒ(桂皮)、コウカ(紅花)、ジオウ(地黄)、シャクヤク(芍薬)など十四の生薬の中に、インヨウカク(淫羊藿)であるイカリソウが入っている。「上記十四種類の生薬を、日本薬局方規定のチンキ製法に準じて味醂に冷浸して作られる。添加物として味醂の他にアルコール、ブドウ糖、カラメルを含有する。日本酒やワインと同等のアルコール分(十四vol%)を含有するが、医薬品のため酒税法及び二十歳未満の者の飲酒の禁止に関する法律に規定する『種類』には該当しない。」と記されている。

 確かにイカリソウは養命酒の中に入っているようなのである。チンキ製法といえば、ヨードチンキを想い出す。アルコールにヨウ素はよく溶けるが、水には殆ど溶けない。そんなことを想い出してしまった。また養命酒は子どもの頃、お酒だから飲んではいけないと言われたことがあったが、医薬品なのだから飲んでも良かったのだと知った。今考えると、子どもの頃に飲んでみたかった都、やっぱり思ってしまったものだった。

 (キンポウゲ目 メギ科 イカリソウ属)

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