アゲハチョウ

動物編

小さい頃からよく見かけていたチョウにモンシロチョウ、モンキチョウそして大型のアゲハチョウがいる。アゲハチョウがナミアゲハと呼ばれることを最近になって知った。

アゲハチョウ(ナミアゲハ)

 アゲハチョウ科にはキアゲハ、アオスジアゲハ、クロアゲハ、ジャコウアゲハ、モンキアゲハとアゲハと名前がついているものが多い。それより小さいギフチョウ、ヒメギフチョウやウスバシロチョウもアゲハチョウ科である。その中で普通に見られるアゲハチョウだからナミアゲハと名づけられたらしい。

 昔からこのナミアゲハが柑橘(かんきつ)類の葉に産卵することは知っていた。イモムシの体を押してやると、黄色いツノ(臭角 臭いを出す)を突き出すので、それが面白くて何度も押したことを想い出す。

 ナミアゲハがタンポポ、ヒメジョオンやヒャクニチソウの蜜を吸っているのを見かけるが、まだオスとメスの区別ができないでいる。図鑑で翅の模様の違いが分かっても、実際に出会うと区別ができないのだ。その内できるだろうと今までの経験からそう考えている。

 メスをせめぎ合いとランデブー飛翔

 ウィキペディアのナミアゲハには「単にアゲハ、またはアゲハチョウとも呼ばれるが、これらの呼び名は他のアゲハチョウ亜科との混称や総称として使われることも多い。小学校及び中学校の理科では、本種を『アゲハ』としている。成虫の前翅長は四~六センチほどで、春に発生する個体(春型)は夏に発生する個体(夏型)よりも小さい。翅は黒地に黄白色の斑紋や線が多数入る。~中略~ 外見はキアゲハとよく似ているが、ナミアゲハは羽の根もとまで黄白色の線が入り、全体的に黒い分が太い。ナミアゲハのオスメスは腹部先端の形で区別できるが、外見からはあまり判らない。ただしメスは産卵のためにミカン科植物に集まるので、それらの植物の周囲を飛び回っている個体はメスの確率が高い。地域にもよるが、成虫が見られるのは三~十月くらいまでで、その間に二~五回発生する。人家の周辺や草原、農耕地、伐採地など、日当たりの良い場所を早く羽ばたいてひらひらと飛び、さまざまな花から吸蜜したり、水たまりや湿地、海岸に飛来して吸水したりという姿が見かけられる。冬は蛹で越冬する。天敵は鳥類、スズメバチ、アシナガバチ、カマキリ、トンボ、クモなどである。また卵に寄生して中身を食べてしまうアゲハ卵バチや幼虫に産卵して体の組織を食い尽くし、蛹に穴を開けて出てくるアゲハヒメバチなどの捕食寄生蜂も知られている。」と記されている。

  オスがメスに迫り、交尾態になる

 この記述のように、長い間キアゲハとナミアゲハの区別ができないままでいた。キアゲハは黄色い翅が特徴である。表の前翅の付け根部分が黒い模様なのに、ナミアゲハは翅の色合いがキアゲハのように黄色いものから薄黄色まで多様で、翅全体が線状になっている。出会う割合から言えば殆どがナミアゲハで、キアゲハはたまに出会う感じである。私の経験ではキアゲハは川の土手など局所的に出会う感じなのに、ナミアゲハは色々な場所で見かける。他にキアゲハの幼虫の食草はセリ科で、ナミアゲハの食草はミカン科である。姿形は似ていながら幼虫の食草は全く違っている。

 キアゲハ

 夏に二匹のナミアゲハが空中で絡み合いながら高く飛んでいくのを度々見かける。一匹が逃げていくというよりは、オスとメスのランデブー飛翔である。時には三匹が絡み合って上昇していくが、その場合はメスをめぐるオスのせめぎ合いではないかと思う。

 ナミアゲハのオスとメスは交尾器で区別できる。オスは腹部が細くメスは太く、産卵するために必要な構造になっている。オスの交尾器はメスの交尾器の先を挟むバルバ(把握器)がむき出しになっていて先が尖がっている。メスはそうなっておらず、先が丸まっているらしい。その違いを今のところ実際のナミアゲハで区別できないでいる。

 ランデブー飛翔は度々見かけているのに、交尾態を一度も見たことがなかった。モンシロチョウ、キタキチョウ、モンキチョウは何回か見かけているが、ナミアゲハはなかったのである。

ところが永和駅北側の叢(くさむら)で、七月上旬に初めてナミアゲハの交尾態を見かけた。草の茎にぶら下がっていて動かなかった。交尾の様子を何枚か写真に撮ったが、バルバの様子からぶら下がっている方がオスで、上の方がメスのように思えたが、それを見てもオスとメスの確信が持てなかった。ずーっと傍で写真を撮り続けたが、その交尾態のナミアゲハは三十分以上そこにいて全く動く様子はなかった。交尾態になると二時間近くそのままの場合もあると聞いているので、交尾中は無防備で危険な状態に置かれているようだ。モンシロチョウの交尾態でも同じように感じていたことだった。危険と隣り合わせで子孫を繋ぐ行動をしているナミアゲハの交尾態を見て、何か切ない感じになってしまった。

 夏になるとチョウが地面に降りて吸水している光景をよく見かける。まだその理由は分かっていないが、必要な水分をとったり体温を下げるためではないかとも思われる。

 吸水行動はアオスジアゲハでよく見かけていて、水道の水を道路に撒いた後の地面に降りて翅を羽ばたかせながら吸水する光景は、私の少年時代の想い出と重なっている。このアオスジアゲハの吸水行動はほとんど単独で行っていた。

 キタキチョウは秋口になって気温が高くないのに吸水する。集団で多い時には十匹以上が集まって吸水している。それも有機物が多い泥だったり、ウシの堆肥場所なども多く、単なる水分補給ではないような感じがする。また集団吸水するのは翅が黄色いオスだけである。

 ナミアゲハも泥のある場所で吸水している。真夏の時が多いが、単独で吸水している場面しかこれまで見かけたことはなかった。数年前の四月十三日に永和の沼の傍を歩いていると、水辺でナミアゲハが飛び交っていて、数匹が水辺に降りて羽ばたきながら吸水しているのを見かけた。全部で四匹だったが、ナミアゲハが集団吸水するのを見たのは初めだった。途中で一匹が飛び立たったが、また戻ってきた。その場でじっと止まっているので吸水しているようだった。この日は四月にしては好天で気温も高かったので、ナミアゲハが吸水する必要があったのだろう。

 このナミアゲハもキタキチョウのように全てオスなのだろうか。連日歩き回っていると今まで見かけたことがない事物事象に出会い、そんな出会いも写真撮りの楽しみの一つであり、このナミアゲハの集団吸水もその中に入るだろうなと思っている。

 (チョウ目 アゲハチョウ科 アゲハチョウ亜科)

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