ヨシガモ

 ヨシガモを最初に見たのは天童の原崎沼が最初である。定住しているカルガモがいて、越冬のためのマガモの群れが来て沼が賑わうようになってから、ヨシガモを見かけるようになった。時期的にはオナガガモが来た頃の十二月の終わり頃ではないかと思う。沼の中央ではなく、夏にハスが沢山生えていた場所で、沼が出っ張った南西にいることが多かった。マガモたちと混じり合っていることは殆どなかった。近くには同じような行動をするコガモがいるので、写真を撮るとコガモが一緒に写る場合が多かった。雪が深い時に三脚を持って写真を撮りに行った。奥羽山系の西側なので冬は太陽を見ることも少なく光量も少ないので、写真が灰色っぽくなってぼんやりしてしまう。オスは上述のように華やかだがメスの特徴はどうなっているのか分からない。でもオスの近くにいるのがメスに違いないと思って探すのだが、それでもなかなか同定できないままだった。

ヨシガモ

 五条川の川辺でカルガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモに混じってオスのヨシガモが数羽見られた。オスしかいない訳はないのでメスはどれか写真を撮って詳しく見たが、初心者なので分からない。これまでの経験では春近くなればなる程番いになっている可能性が高くなるから、オスのヨシガモの周りにいるメスらしいカモを探すことにした。これまでマガモのメスは同定できるようになっていた。嘴が黄色の基盤に黒い薄い部分散らばっていて、足が同様に黄色である。他の種のメスは同定できるまでに学習は進んでいないが、ヒドリガモのメスは嘴が灰色でその先が小さく黒い。また腹が白いのが特徴である。オカヨシガモのメスはマガモのメスと同じように嘴は黄色が黄ばんで黒い部分が散らばっていて、足も同じように黄色だが白い翼鏡が少し見える。ヨシガモのメスの嘴と足は黒く、翼鏡は白と黒になっている。体全体に羽の色がオカヨシガモに較べて濃い感じである。今の私の学力ではメスの違いをこんな特徴に頼って判断している。この区別だとどの種類のカモのメスだか間違うことがあるかも知れない。そんなことに迷いながらも学習するのを楽しんでいる。

 ヨシガモの飛翔

 「日本のカモ 識別図鑑」(氏原巨雄 道昭 誠文堂新光社)を見ると、「大きさは体長四六~五四センチ。翼開長七八~八二センチ。特徴は中型のカモ。頭部は前から見ると幅が狭く扁平。後頭の羽毛がオスとメスともにやや長い房状に伸びるが、メスはあまり目立たない。嘴と足は灰黒色。嘴は水面採餌ガモの中で細長い。尾羽は短め。分布・生息環境・習性は主に冬鳥として全国に普通に渡来するが多くはない。局所的に大きな群れが見られることがある。北海道では繁殖し、少数越冬する。池、湖沼、河川、内湾など、幅広い環境に生息し、おもに植物食で、穀類、植物の種子、水生植物、海藻などを食べる。潜水採餌することもある。地図分布を見ると、繁殖地はシベリアから千島列島で、越冬地は日本、中国沿岸部となっている」と記されている。

 私が写真を撮りに行く時刻はいつも午後なのでヨシガモの採餌場面は見たことがなかった。水面採餌のカモは植物食が多いので植物食であろうと予想していた。上述の記述にはやっぱり植物食であることが示されている。

  ヨシガモの採餌(カルガモと一緒)

 その後日光川の河口付近の土手を歩くようになったら、日光川に一五~二〇羽のヨシガモが越冬していた。これ程の数は蟹江周辺では珍しいのではなかろうか。その辺りはカワウ、オオバン、カルガモもいるがこれらと混じって泳いでいることも多い。時々ヨシガモたちはカルガモと一緒になって、すぐ隣の佐屋川のコンクリートの護岸に上がったりしている。私が土手を歩いて行くと距離はあるのに危険を察して飛び立って、日光川の真ん中辺りに飛んで行ってしまう。カルガモはそれから飛び立つのがいつものことだった。やはりシベリア大陸から来るカモたちはとても用心深い。私はヨシガモの綺麗な姿を撮りたいと願っているが、逆光とヨシガモまでの距離が遠いのとで余り良い写真は撮れたことはない。

 ある時ヨシガモの群れが土手の道とその斜面の草叢で一生懸命に何かを啄んでいた。枯れ草だらけなので植物の種を探しているとしか思えない状況だった。この土手ではツグミ、ムクドリやホオジロ等も枯れ草の中に降り立って何かを啄んでいる。きっと穀類を食べているのだろう。そんなことから私はやっぱりヨシガモは植物食なのだと確信した。

 サーフボードで休憩する

 ヨシガモたちの多くが三月下旬になったら見かけなくなってしまった。きっと北帰行したのだろう。私はヨシガモは三月には帰っていくのだと思い込んでしまった。何日後の四月になって日光川の土手を歩いていたら、何のことはない異なる場所で二組のヨシガモを見かけた。それぞれがオスとメスの番いと思われるカップルだった。まだ残っていることに吃驚した。このヨシガモたちはいつになったら帰るのだろう。帰る方角や道程等二羽だけで無事に帰れるのだろうか。とても心配してしまった。(カモ目 カモ科 マガモ属 ヨシガモ)

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