モンキアゲハ

動物編

先日テレビで愛知県岡崎市(徳川家康の居城があった)の乙川(おとがわ)沿いの土手でヒガンバナが咲いていると放映していた。東北の天童周辺では秋になるとヒガンバナが咲いているが、どれも赤いヒガンバナだけで白いヒガンバナが咲いているのを見たことはなかった。ところが蟹江に戻ったらそこら中で白いヒガンバナが咲いている。関西線の和駅に向かう道には、左側に白いヒガンバナが右側に赤いヒガンバナが植えられていて、九月二〇日頃には綺麗なヒガンバナ道路になっている。辺りの人からみると白いヒガンバナは普通のものらしい。

 知人の前田裕司さんがフェイスブックで、彼が住んでいる千葉県の柏から流山近くを流れる利根川水系の大堀川でヒガンバナが咲いていると載せていた。しかもその中に白いヒガンバナもあると写真と共に記されていた。私も一昨年から地植えとプランターで桑名の妹から貰った白いヒガンバナの球根を植えてあった。そのプランターの球根が今年は白いヒガンバナを咲かせた。そこでフェイスブックのコメント欄にプランターで白いヒガンバナが咲いていると載せた。友人のコメント欄には黄色いヒガンバナもあると載っていた。

乙川に土手で見られるヒガンバナ

 テレビの乙川の土手のヒガンバナはある女性が植え始め、何十年も掛けてこれ程のヒガンバナの群生地にしたということである。そこには赤いヒガンバナばかりでなく白いヒガンバナや黄色いヒガンバナもあり、それがテレビの映像に映っていた。その画面を見て黄色いヒガンバナをカメラに収めたいと思ってわざわざ出掛けた。

名鉄の東岡崎駅で降りて二〇分程乙川の土手のコンクリート道路沿いを歩いて行くと、目的地のヒガンバナが群生して赤く咲いているのを見かけた。そこで写真を撮り出した。するとそのヒガンバナの蜜をアゲハチョウが吸いに来ていた。その写真を数枚撮って少し歩いて行くと大きな別のチョウがはばたきながら蜜を吸っていた。その黒い羽に黄色い紋があるのを見た瞬間、モンキアゲハだと直感した。急いで何枚か写真を撮った。飛びながら花の蜜を吸っているので、羽ばたいている翅の先の部分は当然ながらぼやけてしまう。ホバリングしている状態のチョウの写真を撮るのは、私にとっては至難の業である。一か所で蜜を吸うと移動して別の花の蜜を吸うことを繰り返す。そんなことを数回してからヒガンバナの群生地から離れて飛んで行った。

  乙川でヒガンバナの蜜を吸うモンキアゲハ

このモンキアゲハは私にとって憧れのチョウである。アゲハチョウやアオスジアゲハ程には数は多くなく、小さい時から簡単には出会えないチョウだった。

モンキアゲハは山形県の天童や山形市周辺ではこれまで見かけたことはなかった。蟹江に帰って来てから車の中からとか、歩いている時に近くを飛び去るのを見かけることが時々あった。どうも東北にはいないのではないかと思う。

このモンキアゲハは一度も捕ったことはない。捕りたくても簡単に捕れないチョウだった。数も少ないし出会うことが元々難しい。小学生の高学年の頃そのモンキアゲハを捕り損なった記憶がある。そこは清州城址だった。あの有名な清須会議があった場所である。その当時は名古屋に住んでいたが、機動力のある自転車に乗って庄内川、新川を越えて五条川まで約二〇キロ位の距離を遠征したものである。その目的は魚釣りだったりトンボ捕りだったりした。その五条川沿いには漬物の神を祀る萱津(かやつ)神社があり、そこの池にはギンヤンマやショウジョウトンボが飛んでいた。それらを捕まえるためにそれ程の距離を遠征していたのである。その五条川の上流に清州城址があった。今では大きいとは言えない清州城が再建されているが、私がトンボ捕りしていた時にはそんな城はなかった。今の清須市やあま市に入る地域である。

清州は今ではそれ程大きな町と言えないが、歴史的には名古屋城ができて城下町を作る時に、清州にいた商家や住民が移住させられた。それまでは清州は尾張では大きな町だったのである。今でもその町並みは入り組んで密集している感じがあり、その当時の面影を彷彿とさせる部分がある。桶狭間の合戦で織田信長が早朝に清州城を出て熱田神宮で戦勝祈願をしたという歴史が、当時の清州城下の繁栄や規模などが分かってくると、より深く理解できるようになった。

 ヒガンバナの蜜を吸うナガサキアゲハ、アゲハチョウ、ジャコウアゲハ

その清州城址の石垣がある場所をタモ網を持ってトンボがいないかと歩いていたら、目の前をモンキアゲハが横切って行った。それを見て私は追いかけてさっと網を横に振りながら捕ろうとしたが、モンキアゲハはさっと飛び上がって飛んでいってしまった。今でもその情景を鮮明に覚えている。モンキアゲハを捕りそこなった悔しい記憶が強烈だったからだろう。その後もモンキアゲハを捕らえることはできなかった。

今では実際にモンキアゲハを捕るというよりは良い写真が撮れれば良いなと考えている。そう簡単に出会えないから今回のヒガンバナの蜜を吸いに来たモンキアゲハに出会えたことは幸運としか言えないと思う。その写真がぼやけてしまったのは残念だが、アゲハチョウが密を吸っている場面よりは私にとって何倍も価値がある写真となった。ヒガンバナの写真を撮りに行って偶然にモンキアゲハの写真も撮れたから、尾張の蟹江から三河の岡崎まで行った甲斐があったなあと考えることになった。(チョウ目 アゲハチョウ科 アゲハチョウ属 モンキアゲハ)

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