蟹江に戻ってから木曽川水系にはイタセンパラやゼニタナゴもいることが分かって、木曽川の水を引いている用水路にはきっとタナゴがいるに違いないと考えていた。木曽川の東側にある海部津島(あまつしま)地区で、木曽川から取水している大きな用水路から田んぼ脇に流れ込んでいる小さな用水路に五月末に行ってタモ網で何度も掬ってみたが、ドジョウやフナの子しか捕れなかった。木曽三川の西側の海津市や桑名市にはもしかしたら何種類かのタナゴが住んでいるのかもしれない。
六月になって頻繁に魚捕りに行くようになった、関西線永和駅北側の用水路に行って、モツゴ、フナ、カダヤシを掬っている中に小さなタナゴが網に入った。背びれに黒い斑紋があるのでそうした種類かと考えた。腹びれの白い線は小さ過ぎてはっきり分からない。ニッポンバラタナゴではないかと期待を膨らませた。数匹捕れたのでその後もその場所に何回も捕りに行って掬ってみたら、毎回数匹ずつ捕ることができた。家の庭のプラスチック水槽に入れておいた。この稚魚の黒い斑紋は大きくなると消えてしまうらしい。今も机の前のプラスチック水槽にはドジョウと共に二匹の成魚になっているタナゴがいるが、一匹の背びれの斑紋はなくなっている。
タイリクバラタナゴのオス(婚姻色)
七月を過ぎた頃また永和駅北側の用水路に行って、タモ網で掬ったりインターネットで購入した四手網を入れて魚捕りをした。そこではスジエビ、モツゴ(クチボソ)、メダカ、フナの他にタナゴが捕れた。その大きさは様々だが大きなオスには婚姻色で綺麗な色を発しているもの、メスは産卵管を伸ばしているものが捕れた。そのタナゴを透明な容器に入れて観察してみたら腹びれに白線がありタイリクバラタナゴだった。ニッポンバラタナゴではないかと期待していたのにそうではなかった。自宅の庭や室内のプラスチック水槽に入れて飼ってみるとかなりの率で死んでしまう。飼うのが難しい感じがする。フナは水槽に入れて放っておいても簡単に死なない印象だが、このタイリクバラタナゴは繊細な魚なのではなかろうか。
八月になってまた永和駅近くの用水路に行って四手網を仕掛けてみた。四手網の上の交差させる塩化ビニールの部分にプラスチックの紐を縛って長くして用水路に入れ、タモ網の柄でバシャバシャと追い立てた後、その紐を引っ張って四手網を引き上げる。他には、用水路の縁から突き出して水面を覆っている植物やその根の部分を四手網で掬うようにして魚を捕った。四手網の中にカダヤシ、モツゴ、タナゴ、フナと時にはドジョウも捕れた。フナは水面を覆っている植物の下にじっと隠れているらしく、四手網で掬うとフナが大量に捕れる。そこではタナゴは捕れない。川に四手網を下ろしてタモ網の柄でバシャバシャと追い込んだ時にはカダヤシ、モツゴと共にタナゴが捕れた。フナとタイリクバラタナゴでは習性が違うようだ。四手網にかかった魚は小さなプラスチック網で掬って、コンクリート道路に置いてあるバケツまで運んでいく。そのまま四手網を川に入れっぱなしにして戻って引き上げてみるとタナゴが入っている場合がある。それも一匹二匹ではない。どうもタナゴは群れで川の中を泳ぎながら移動しているようなのである。
タイリクバラタナゴのメス(産卵管が出ている)
秋口になってその用水路に行って魚を捕っているとフナよりタナゴの方が多くなった。タイリクバラタナゴはカダヤシと同様外来生物である。私の予想を超えてかなりの量を捕れることが分かった。
この用水路で小さなナマズを捕り他の用水路でライギョの稚魚を捕ったので、それらを家で飼おうと思っている。そのためには生餌(いきえ)が必要である。魚捕りをしていたら近くを通った農家の人がナマズを飼っているが練り餌でも育つと言われたのだが、確実なのは生餌だと考えて、そのためにフナばかりでなくカダヤシやタナゴも餌の対象にしている。何となく外来生物に対する情愛が自分の中で少ないような気がする。
タイリクバラタナゴの稚魚
こんなに多くのタイリクバラタナゴがいるということは、その産卵する対象である大きな二枚貝が必要である。本来なら二枚貝を実際に捕るかインターネットで手に入れて産卵させてみたいが、その二枚貝を生きたままにしておく術が分からない。用水路や汚れた川ならミジンコや微生物がいるだろうから生きていけるだろうが、水槽で飼うには餌を恒常的にどう確保したら良いのかが分からない。そこでまだそれについては挑戦していない。
イシガイか バカガイかな?
先日写真を撮りながら歩いていたら小さな用水路に大きな死んだ二枚貝を見つけた。やっぱり大きな二枚貝がいるのだと思った。生きている二枚貝だと泥の中に潜っているので、私が四手網で魚を捕っていても、泥の中の二枚貝を捕ることは難しい。インターネット情報ではタナゴがいる場所と産卵する二枚貝では、用水路や川で数キロ離れている場合があると載っていた。これ程多くのタイリクバラタナゴがいて、タナゴの婚姻色を示すオス、産卵管を出しているメスがいることを考えると、近くに産卵する二枚貝がいるに違いないと思っている。
外来生物であるカダヤシ、タイリクバラタナゴやアジアイトトンボ等の多さを考えると日本の農村風景は外見が変わらないように見えて、実は実態が大きく変化してきていることを痛感せざるを得ないのである。
コメント