イボクサ

植物編

イボクサはツユクサ探していたときに畦に生えているのを見つけたのが初めてである。ツユクサは朝方に咲いてその日の夕方には枯れてしまうので儚い(はかない)感じの花である。「ツユクサ」の項で書いたように、偶然白いツユクサを見つけたことがあるので、色の変わったツユクサがないかと周りを探していた時に偶然イボクサを見つけた。

 最初に見つけたのは天童高校の裏手の山元沼近くの水田の畦である。夏頃から畦と放棄された田んぼ跡にトウバナ、オオバコ、ツユクサ、ミゾソバなどが生えていた。最近目が悪くなってピントがずれるので小さい花は細かい部分は分からなくなっている。トウバナはシソ科の植物で茎の先の方にたくさんの白い花がついており、秋になってその実がつくと、それが団子状の塔のように見える。だからそう呼ばれているらしい。確かに実がなっている時の方が存在感がある。稲が植えてある田んぼには、他にもホテイアオイの仲間だと思われるコナギかミズアオイが生えていた。それらを写真に撮っていた時に畦で偶然小さい花を見つけたのである。

 イボクサの由来は、この植物の汁をイボにつけるとイボが取れることからつけられたと言われている。しかし実際にはつけても取れないそうである。今では液体窒素ガスなどを使って医療的に取っている筈で、イボクサの汁をつけて取れるとしたら、猛毒の危険な成分が含まれている筈だ。花の形からするとそんな危険な植物だとは思えない。

 イボクサの花は、茎の先端に花を咲かせている、花弁(はなびら)が三枚で全体が白いが、その花びらの先端部が少しピンクがかっていて可憐な花である。この植物は茎をのばして、ツユクサのように縦に延びるというよりは、横に伸びながら進んでいく風情である。その節から根を出してまた土に根を張り、どんどん進展していく。イチゴなどのランナーというのとは違うが、伸びていくという点では同様な性質を持っているようだ。その花を撮ってから一週間位経って同じ場所に行ってみると、その花は枯れていて先端部に実(子房の膨らみ)がなっていた。その写真も撮ったが、相変わらずなかなかピンとを合わせることができなかった。

 ツユクサの青色の花の儚さよりはしゃんとした花の風情であるが、その色合いが良く野草だと感じさせる。その写真を撮って最近始めたフェースブックに、このイボクサ、キキョウ科のミゾカクシとシソ科のハッカを載せた。この3つの写真はそれぞれ趣きもあり、良い写真だと思っている。

 山元沼の畔に咲いているイボクサはその数も多くなく、所々に生えている感じであった。その後高瀬の町を通り抜けて紅花トンネルに通じる道路脇に、2反ほどのハスを植えてある池がある。深さはそれほどでないのでレンコンを採るために植えているのかと思う。2~3年眺めているがレンコンを採った形跡はない。その浅い池では夏になると赤い蓮の花が咲きその種が出来る。葬式の時に使われる金や銀のハスの実がとれた葉茎そのものである。その池の中に群れてイボクサがたくさん生えていた。これほど多くのイボクサが群れて咲いているのを見たのは初めてだった。畦に生えているイボクサは横に進展しているのに対して、この池の中のイボクサは、全体的に立ちあがっている風情だった。どちらもイボクサの性質だと思うが、環境によって対応を変えているのではないかと思う。

 このイボクサは群れて育つことからか、田んぼの除草の対象となっているようだ。イボクサを除草する方法の一つに水田と畦に除草剤をまき、イネを収穫した後に土を掘り返して種の生産を防ぐというものがある。一見すると可憐な野草であるイボクサも、大量に生えると稲作生産の妨害植物になるということであろうか。稲作生産というのは人間にとって自然を切り取り人工的に自然環境を人間本位に変えるのであり、本来の自然環境での淘汰ではないのである。本来はイボクサには何も罪はないと思うのだが、いかがなものだろう。

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