ヒシといえば、小学生から中学生にかけて名古屋城の北西のお堀で釣りをした時に、その水面にヒシの葉が浮かんでいたことを鮮明に覚えている。そしてその棘がある黒い実も見たことがあった。
名古屋城の北西は、私の通学した浄心中学校の学区の端にあり、名古屋城のお堀は遊び場の一つだった。また隣接する名城公園も時々行ったことがある。そのお堀での釣りは本来禁止されていて、監視員が来ると大人も子供も釣竿を持ってそそくさと離れ、監視員がいなくなるとまた釣るということを繰り返すのである。そのお堀にはカイツブリがいて泳いでいた。お堀の真ん中で巣を作って子育てしていたものだった。
そんな中でヒシの黒い実が堀端に流れているのを見たり、誰かが堀端から掬い上げて道端に落ちていたのをよく見た。私は長いことヒシの実はハスの根であるレンコンのよう地下にできていると思い込んでいた。堀端に流れ着く黒いヒシの実は、水中の地面がひっくり返されて流れてくると思い込んでいた。またヒシの実は食べられるということも聞いたことがある。
大企業の三菱のマークは、その実が棘を持っている形を象徴的に表していると考えていた。ところがヒシの葉の形があのデザインの元らしいという意見もあることが後から分かった。ヒシについては、確かめることもなしに思い込みで考えていたのである。
天童にあるヘラブナ釣りで有名な原崎沼は私の散歩場所であるが、冬には冬鳥が来て越冬している。カルガモやカモなどが大量に見られる。沼の真ん中に2つほど水を搔き回す機械があって、何であんなものが池の真ん中にあるのかと思っていたが、冬になって納得した。冬は沼の表面が氷で被われるが、その時期にはその機械が作動している。それが回っているとその辺りが凍結せずに、水面が出ているので水鳥たちが泳げるのである。このためだったのかと合点がいった。ヘラブナ釣りが12月から3月まで禁止されているのは冬鳥たちの越冬の邪魔をしないためらしい。沼を見るとかなり大きなヘラブナが泳いでいるのを見掛ける。釣り人に聞くと、組合員がお金を出してある大きさになったヘラブナを毎年放流しているとのことだった。長い浮きを使って練り餌で釣っているのだが、釣ってもバケツなどに入れずに、そのまま近くまで寄せてすぐ逃がしている。キャッチ・アンド・リリースが実践されているのである。釣ることだけが目的で逃がしてやるのだが、観察していると全員がそうしている。ルアーを使って釣っている人もおり、誰かがブラックバスやブルーギルをこっそり放流したのであろう。水面にブラックバスらしい魚をたびたび見かけるから、かなりの数のブラックバスやブルーギルがいることが予想される。
この沼の南西にはハスが群生している場所があるが、その他のところはヒシが沢山群生している。釣り人の多くはハスやヒシのない沼の北側で日傘をさして並んで釣りをしているが、その他のところではヒシが沢山生えてる所で釣ることになる。彼らは浮きを浮かべ釣る場所を確保するために、生えているヒシの葉を引っ張って岸辺に積み上げて釣る場所を確保している。そうするためにはかなりのヒシを引っ張らなければならない。
ヒシの葉が浮かんでいるのを見ると、中心の周りにたくさんの葉がある状態である。水中に一本の茎があり、それから葉が水面に出て広がっているのだろう。花は水面より上に咲くようだが、近くで見ていないので確認はしていない。
私はメダカを延べで何十年も飼っており、その水槽に水草を入れている。釣り人が引き揚げたヒシを見ると、葉にはホテイアオイのような浮くための浮き袋があり、水中の茎には髭状の根が沢山生えていた。私はある時千切れている茎だけを見たことがあって、その髭状の様子から水草ではないかと思った。家に持ち帰ってメダカの水槽に入れたが、かなりの日数経っても生きたままで水草のように見えたのである。これならメダカが産卵して卵をくっつけることができるかもしれないと思った。
先日長野県の諏訪湖にある諏訪大社にでかけた。国つ神系の神社なのでその拝殿の位置がどうなっているか確かめたかったからである。諏訪湖を見たら一面にヒシが群生していて驚いた。諏訪湖は清らかな湖というイメージだったが、余りきれいでないなという印象に変わった。
ヒシについて調べてみたら、夏に白い花を水上で咲かせて秋に黒い実ができ、それが秋沈んで冬を越して、春になると発芽して根をおろして茎が上へ伸びるのである。その深さは1.5メートル位なら茎を伸ばせるようである。その間の呼吸はどうなっているのか心配になる。その茎からは節ごとに水中根を出し、茎の先端が水面に出ると葉を出し、上から見ると茎を中心にして周りに葉がたくさんできる。水中根で水中の栄養分を吸収して大きくなるようである。私はその水中根を水草と勘違いしたのだった。
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