キクザキイチゲ

4月の下旬から5月の連休頃、山道の脇に入った杉林や雑木林の下にアズマイチゲやキクザキイチゲが見られるようになる。ニリンソウやカタクリは時期がそれより少し遅れるような気がしている。

 キクザキイチゲの花 その1

 これらの花の色は白が中心だが薄紫色の高貴な花を咲かせる植物もある。アズマイチゲやキクザキイチゲはニリンソウの花弁(ハナビラ)の数より多く8枚以上あり、同じキンポウゲ科の仲間だと何となく知っていたが、白の一群の中に薄紫色の花を見かけると際立って私には高貴に見える。

 ニリンソウやアズマイチゲは春の妖精(スプリング・エフェメラル)と言われる。春の短い期間に花を咲かせて、その後は地中で過ごす生活環を持った植物の仲間である。

 アズマイチゲの花

 春になると、若松観音の登り口の鳥居近くの山道でこれらの花を写真に撮るし、天童高原に行く途中の杉林の下でも咲いている花の一群の写真を撮っている。ニリンソウとアズマイチゲが咲いている頃は、まだ周りの植物の葉が出ておらず、周りが枯れ葉や茶色の中で白や薄紫色のアズマイチゲ等は目立つ存在である。

 このニリンソウ、アズマイチゲやキクザキイチゲを知る前は、ニリンソウの花に惹かれて写真を撮ったものである。割りとニリンソウは見かけることが多い。山形から仙台に抜ける国道48号線の大滝を過ぎたパーキングの土手に、春の時期にカタクリとニリンソウがたくさん咲いている。また宮城県の村田町から岩沼市へ抜ける県道25号線の山沿いのところにもたくさん咲いている。ニリンソウとアズマイチゲやキクザキイチゲを知るようになってからは、ニリンソウへの思いが少し低くなってしまった。私にとって、アズマイチゲとキクザキイチゲへの思いは格別のものだと言える。

 ニリンソウの花

イチリンソウ、ニリンソウ、アズマイチゲやキクザキイチゲも全てキンポウゲの仲間であり、基本的には有害な植物と考えた方が良い。この中でニリンソウは春先に山菜として食べられるが、同じキンポウゲ科のトリカブトと誤食する場合があり、山形ではニュースになることもある。

こうした似た植物の区別をどうしたら良いか。調べてみると、イチリンソウとニリンソウの区別ではイチリンソウは花が大きく葉は輪生するが柄(葉柄)があるのに対し、ニリンソウは花が小さく葉は輪生するが柄(葉柄)がないということである。

また、ニリンソウとキクザキイチゲやアズマイチゲとの区別は、花の数が違い、ニリンソウは花弁(はなびら)の数が少ないのに、アズマイチゲとキクザキイチゲは花弁の数が多いのが特徴である。その結果、花弁が細長くなっている。

 キクザキイチゲの花 その2

アズマイチゲとキクザキイチゲの区別は、①アズマイチゲは葉が垂れたようになるが、キクザキイチゲはそうならない ②葉の切れ込みがキクザキイチゲは深いが、アズマイチゲはそうではない ③アズマイチゲは花の中心が紫色だが、キクザキイチゲはそうではない ④花の柄がキクザキイチゲは毛が生えているが、アズマイチゲはそうではない ⑤アズマイチゲは太平洋側に多いが、キクザキイチゲは日本海側に多い という大まかな違いがあるようである。

私自身は花の色に惹かれて、薄紫色のものをキクザキイチゲと単純に考えていたが、葉の切れ込みや花の雄しべの根本の色の違いがあることから、違った種なのだろうと思う。ただ、こうしたアズマイチゲとキクザキイチゲが同じキンポウゲ科なので、交配したら雑種ができるかどうか、自然状態でこうしたものがあるのではないかと考えてしまう。というのも、こうしたニリンソウ、アズマイチゲとキクザキイチゲは、同じ時期に同じ場所に咲いているからである。次の春には、こうしたことを考えながら観察してみたいと思っている。

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