オカトラノオ

植物編

オカトラノオは6月を過ぎると山沿いの道路脇に生えるようになる。一本だけ生えるというよりは、群れて咲いている印象がある。咲き始めは、虎の尾のようになっている下から咲き出して花の先の方に咲いていく。色は白で緑色の植物が多い中で、目立つ印象がある。

  オカトラノオ

この花はめずらしいという程でもなく、どの地域でも普通に見かけることができる。鶴岡の羽黒神社近くの道でも咲いていたし、笹谷トンネルを越えて283号線の笹谷部落から川崎町に抜ける道路脇でも咲いていた。また村田から岩沼市に抜ける山道の道路脇にも咲いていた。このようにこの時期になると普通に咲いている植物である。といっても西洋タンポポのように辺り一面に咲くということはない。

このオカトラノオはサクラソウ科の仲間だが、コザクラやユキワリソウなどの風情はないが、その小さな花をじっくり見ると同じ花だと思う。しかし全体の風情は異なっている。

  群生するオカトラノオ

知り合いの家を訪ねる時、そこの主人が野草好きなので、土産代わりにオカトラノオをあげることにして、素足でサンダル履きのまま道路からちょっと分け入って、何本かハサミで切って水を入れたペットボトルに差し込んで車のドアの置き場所に置いた。

 車を走らせてちょっと足首を見ると、黒っぽいものが私の左足の脹脛(ふくらはぎ)にくっついていた。異常を感じて車を止めてそれを振り払った。よく見ると山ビルだった。痛くはないが皮膚に二ヶ所並んだ噛み痕があって、確実に血を吸われたことが分かった。テレビの実験で山ビルに血を吸わせると膨れて太った感じになるが、気がついたのが早かったのか膨らむところまではいっていなかった。

山ビルは動物の通り道の上の木にいて、動物が通ると木からぽとりと落ちて皮膚にとりつき血を吸う習性がある。ちょっと分け入っただけなのに、そこでとりつかれたというのは不思議だった。ウサギ、イタチやネズミの通り道だったのだろうか。

私は血圧が高くて治療している。少し前から不整脈が出るようになって、血をサラサラにするワーファリンを飲むようになっていた。血をサラサラにするということは、きっと出血しやすいのではないかと思う。このワーファリンを飲むようになると、医者からは生野菜を一度に沢山食べないことと、特に納豆(ビタミンK)を食べることを禁じられてしまった。好きになってきた納豆を食べられないというのは苦しいことだが、それをじっと我慢して食べない生活をしている。

  血を吸われたヤマビル

車から山ビルを取り出して、コンクリートの上に捨てて、サンダルで踏み潰そうとしたがつぶすことができなかった。ゴムのような弾力性を持ち、石で二つに引きちぎろうとしても出来なかった。踏んづけても駄目、引きちぎろうとしても駄目というようにしぶとい存在であった。それでもどかどかと踏みつけるとヒルは動かなくなったが、脹脛(ふくらはぎ)のところは少しまだ出血していて、血が止まるかどうか心配だった。痛みがないというのは、きっとヒルが皮膚に顎を食い込ませる時、痛みを感じなくさせる成分を出して、それが働いて痛みを感じなかったのではないかと思う。ティッシュペーパーで被って様子を見ていたら血は止まってきた。その二つの並んだ傷口がなくなるまでにかなりの期間がかかった。

その後、知り合いの家にオカトラノオを持っていくと、小さい一輪挿しにして日本間のテーブルに飾ってくれた。とても部屋の雰囲気と馴染んで風情のあるものとなった。日本間と野草は、盆栽が自然の世界を部屋の中に取り込もうとする思想と同様に、本来調和するものだなあと、それを見て感じたものだった

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