蟹江周辺の水郷地帯では毎年秋から冬にかけてカモたちがやってくる。またカワラバトの群れも沢山いて東名阪自動車道の高架橋の下に巣を作って、近くの畑で採餌している光景も度々見かける。そんな場所がいくつもあるからか時々猛禽類の姿をみることがある。これまでも猛禽類を何度も見かけていたが、どんな名前のタカなのか同定することが出来なかった。
十月に愛西市の日光川ウオーターパークに出かけた。ここは野球場やサッカー場の他に遊歩道があり、何人もの人たちがウオーキングしている。その周りに大きな沼がある。日光川から水を引いた沼だが大膳川という。川を真っすぐした結果できた沼である。一年中カワウ、カルガモ、カイツブリそしてダイサギやアオサギを見かける。秋から冬にかけてはオオバン、コガモ、ミコアイサやキンクロハジロも加わって泳いでいる。沼に沿った遊歩道を歩きながらカイツブリやミコアイサの写真を撮っていたら、近くの上空を猛禽類のタカが飛んでいった。すかさず写真を撮ったがぶれてしまった。そのタカは沼の端(はずれ)にある葉が落ちたプラタナスの木に止まった。私はハヤブサだと思ってシャッターを連写して写真を撮った。これまで飛んでいる姿しか撮ったことはなかった。そのタカが止まっている枝の前に電柱があり、タカに焦点を合わせようとすると合わずに電柱に合ってしまう。連写したものの上手く撮れていないだろうと覚悟した。タカはすぐ空中に飛び立ったが羽が茶色で尾羽が長く、尻尾には横に何本かの黒い線が入っていた。弓矢の矢羽に使われる模様と同じものだった。ハヤブサにはその模様があるのか分かっていなかった。パソコンに取り込んで拡大してみるとハヤブサとは雰囲気がまるで違う気がして仕方がなかった。テレビで見るハヤブサよりはごつい感じがするタカだった。
オオタカの成鳥の飛翔
オオタカの幼鳥の飛翔
インターネットでハヤブサと同じ位のタカはいないかと探してみたら、オオタカがいた。大きさもカラス位の大きさでハヤブサと似ている。またハヤブサとの違いも記されていた。それによると一番区別し易い特徴は目でハヤブサは目全体が黒目だが、オオタカは黄色い虹彩(こうさい)で中心が黒いこと、そして跗蹠(ふしょ 脛から指までの長さ)と尾羽もオオタカの方が長いこと、そしてオオタカは目の上に白い眉(眉斑 びはん)がある等の違いが記されていた。また初列風切りの翼先分離数(先端の羽の数)がオオタカは六枚なのにハヤブサははっきりしないこと、一番区別し易い特徴は目の虹彩の色であるという。写真をよく見たら虹彩が黄色で目が黒く、上述のように目の上の眉(眉斑)は白かった。写真を見てオオタカではないかと思った。
ハヤブサの飛翔
これまでタカの仲間でトビと思っていたタカの仲間の写真を見直してみたら、一年前の同時期に善太川近くの送電線の鉄塔にいたタカを望遠で写真に撮ってあった。どんな名前のタカなのだろうと思いながら名前が分からないままだった。その当時私はそのタカをトビに違いないと思い込もうとしていた。よく見るとその顔つき、目の上の眉(眉斑)、ぼんやりしているが尾羽には数本の線が引かれた模様があることから、今ではオオタカではないかと判断している。
その一〇日程前に善太川の「新大井橋」で、カモたちが大騒ぎしていた。私はカモやハトたちが騒いでいる時は猛禽類のタカがいるのではないかと思うようになっていた。その近くでカメラを構えていたら、やはりタカがそこにいて「新大井橋」の下をすり抜けて飛んで行った。その時に夢中でカメラを連写したが頭は良く見えずに、体の背面と頭の一部だけが見えていた。その時もハヤブサだろうと考えていた。体の色合いの茶色が強い感じで何か違和感があったのだが。
この撮った写真もよく見てみると尾羽は何本かの黒の線模様があり、微かに見える顔立ちからオオタカではないかと思われた。私はいつも変わった鳥を見かけると必ず撮るようにしている。最初分からなくてもタカについて学んでから見直してみると、それが何か同定できるようになることがある。そんな時はとても嬉しい。
オオタカの成鳥がとまる
オオタカの幼鳥がとまる
十一月に藤前干潟に行く途中、福田川にかかる国道一号線の福島橋の一つ南寄りの中江橋の土手をカメラを持って歩いていたら、脇に大きな木があった。季節柄葉は落ちている。遠くからも梢に止まっている鳥たちが見えたが、そのうちの二羽はカラスだった。私が近づくとそのカラスは飛び立って川の反対側に行ってしまった。梢にはまだ一羽残っていたが直観的にカラスではないと感じた。静かに近づいて写真を撮った。しかし、被写体である鳥の前に木々があり、全身をうまく撮ることはできなかった。それでも何枚かは撮った。私の気配を感じたのかその鳥は飛び立った。私は飛翔し始めたその鳥を連写した。その姿からタカであることはすぐ分かった。その体の色は白っぽかった。羽の次列風切りのところが膨らんでいることと、尾が長かったのでオオタカではないかと推測した。
帰ってからパソコンに取り込んでみたらやっぱり翼先分離数が六枚だったことからオオタカだと確信した。日光川で撮った幼鳥ではなく色合いから見て成鳥のようだった。蟹江周辺にやっぱりオオタカが住んでいるんだと思った。カラスが二羽木に止まっていたのはオオタカがいたからだろう。オオタカが飛んでいれば二羽で攻撃するのだが、止まっていて攻撃できないから、同じ木に止まってオオタカの様子を見ていたに違いない。
オオタカ等のタカがカラスに攻撃されているのを頻繁に見かける。この福田川や日光川の上空でもオオタカが二羽のカラスに追いかけ回されていた。カラスが上空の高くまで追いかけて攻撃している光景を頻繁に見かけるのである。
オオタカについて調べてみたところ、「野鳥の図鑑 陸の鳥②」(中村登流 保育社)によると、「カラスぐらいの大きさの灰色の鳥。翼開長は一三〇センチぐらい。~中略~ 樹上性。樹林内の樹木の横枝にとまっており、周りを見回している。はばたきと滑翔を交互にしてまっすぐ飛ぶ。旋回することもある。単独でいることが多い。山地、低山帯から亜高山帯にかけての樹林、雑木林、松林、ブナ林、亜高山針葉樹林、林内の空地、時には低地の湖沼べりの樹木にも現れる。~中略~ 本州で留鳥。」と記されている。獲物としてはネズミ、ウサギ、ハトやウサギなどを狙って食べているという。そう言えば、善太川や日光川のウオーターパークにはカモ、カワウやシラサギの他、ヒヨドリ、ムクドリ等が木々に止まっている。オオタカにして見れば、良い餌場ではないかと思う。
カラスとオオタカ幼鳥のせめぎあい
昔見たNHKの「ダーウィンがきた」(二〇〇九年四月放映)で「オオタカが街でハンティング」というタイトルのものがあった。池の畔(ほとり)でカラスの群れに一見すると追われていたオオタカが、そのうちのカラスの一羽に襲いかかって、そのカラスを水の中に沈めて殺してしまった。その後そのカラスを陸まで羽を水に浸しながら引きあげて啄み始めた。周りでカラスたちが騒いでいたが、お構いなしだった。その場面を見たときに、私はタカの獰猛さと猛禽類の強さを実感した。蟹江周辺のカラスはトビでもお構いなしに攻撃するし、「新大井橋」の下にあるハトの巣から卵を奪って土手で食べた殻が散乱しているのを見かけることも多い。そんなカラスの行動にも動ぜずに立ち向かっていった、オオタカの凄さが今でも印象深く記憶に残っている。(タカ目 タカ科 ハイタカ属 オオタカ)
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