カモが日本に越冬に来る理由

冬になるとカモの写真を撮るようになった。まだ初心者なので種類の区別が十分できないばかりでなく、そのカモたちの生き様(食性、生態など)も殆ど分らない。天童市の山元沼、原崎沼、東根市の白水川ダムで雪が積もった時に写真を撮ってきた。また蟹江に戻ってからも近くの善太川、木曽三川の木曽川や長良川で写真を撮っている。今までに撮った種類はカルガモ、マガモ、コガモ、オナガガモ、ヒドリガモ、ヨシガモ、ミコアイサ、オカヨシガモ、ハシビロガモ、キンクロハジロ、ホシハジロ、オオバン等である。

    マガモ

カルガモはこの地に定住しているから一年中見られるが、多くのカモは秋になると越冬のために日本にやって来て、三月前後にはシベリア大陸に帰っていく。

   (上コガモ 下ヨシガモ)

   ハシビロガモ

   ヒドリガモ

   オオバン

 蟹江の団地から近い善太川に行き、カモの写真を何日かおきに撮りに行っているが、小さなカモであるミコアイサは二月一三日になったらいなくなってしまった。そしてマガモ、オカヨシガモやコガモの数も二月二〇日過ぎには少しずつ減ってきた。四月を過ぎると賑わっていた綺麗とは言えない善太川も寂しくなってきた。ただ定住しているカルガモの群れだけはその数に変化は見られない。

 いなくなるカモはどんな刺激を受けて故郷(ふるさと)のシベリア大陸やアリュ―シャン列島に帰るのだろうか。私が故郷と言うのはカモにとって産卵し子育てする地域を故郷と考えている。日本に来るのは避難のための越冬をするためである。確かに二月半ばになるとだんだん太陽高度は高くなり、まだまだ寒いものの陽射しは春の気配を感じられるようになる。暖かくなるから帰るのか、それとも太陽高度が高くなるから帰るのだろうか。それとも太陽高度と暖かさの刺激が複合しているのか、他に何か刺激があるのかどうかは分からない。とにかく体の中で帰りたい衝動が強くなるように生得的に仕組まれているのだろう。

 私は昔からハクチョウ、ガンやカモたちは寒さを凌ぐために日本に渡って来ると思い込んでいた。ハクチョウ、ガンやカモの中には山形県の最上川、新潟県の瓢湖、宮城県の伊豆沼等の北日本に来るものが殆どである。餌のマコモ等を考えるともっと南下した方が良いと思うのだが、実際は北日本で頑張っている。先日NHKのさわやか自然百景で、北海道の厚岸湖に来ているオオハクチョウの越冬の様子を放映していた。寒波が来て餌のマコモも取れず寒さで命を落としてカラスやオオワシの餌食になっている場面があった。これらのハクチョウの様子を見ると、寒さを凌ぐためだけに日本に越冬しに来ているとは思えない。

 これらのハクチョウ、ガンやカモの仲間の故郷は主にシベリア大陸である。冬になると渡って来るように生得的に仕組まれているのだろうが、寒さ凌ぎでないとしたらそれは何故なのか。

 私の仮説は寒さ凌ぎではなく日照時間の問題ではないかと考えている。地球は地軸が二三・四度傾いている。そのために夏至、秋分、冬至、春分がある。日本でいえば夏至が一番日照時間が長くなるが、その日は六月二二~二三日頃である。私たちが暑いと感じる季節は七月後半だが、これは太陽の日照が最長になってから地球が暖まるのに一か月程かかるからである。秋分(九月二三日頃)と春分(三月二三日頃)は昼間と夜間が半々であるが、冬至になると日照時間が一番短くなる。ハクチョウ、ガンやカモの故郷は、前述のようにシベリア大陸等の高緯度である。冬至の頃は北緯六六・六度より北では、真っ暗闇となる。

 そこで、六六・六度よりは少し低緯度であるが北緯六〇・一度のフィンランドのヘルシンキの日照時間を調べてみたら、十二月と一月は日が昇らないで平均気温はマイナス五度である。それを極夜と呼んでいる。それは十一月半ば過ぎから日が短くなって、十二月と一月は日が昇らない月を迎え、三月になると日が昇る時間が少しずつ長くなって来る。こう考えるとシベリア大陸に住んでいるハクチョウ、ガンやカモ等は、生息域がヘルシンキより緯度が同緯度か高緯度だと想定すれば、十一月半ば過ぎに日本に来て越冬し、二月中旬から北帰行することは理解できるのではないかと思う。つまりガンやカモの故郷は、冬至を挟んで数か月は暗闇なのである。だから日本に避難してくるのではないか。

 今年(二〇一七年)二月中旬に何年振りかの大雪が山陰や北陸地方を襲ったが、冬の寒さを避けるために北帰行を遅くしても良さそうだが、カモたちは寒さや降雪に関係なく旅立っていった。そう考えると感情移入だが、早く故郷のシベリアに帰りたい、その為にはなるべく故郷に近い北日本で我慢しながら越冬して、太陽高度が高くなるのを待って寒さに関係なく北帰行をするのではないかと考えている。

 ただこれが渡り鳥全体に当てはまるかどうかは定かでない。というのは鹿児島県の出水平野に渡ってくる、韓国や中国に住んでいるナベツルやマナヅルは、寒さを避けて来ている可能性がある。その点ではこの仮説の範囲外だろうと考えている。

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