オドリコソウ

植物編

春になると、シソ科の仲間が生えるようになる。その中でもヒメオドリコソウはそこら中で見られる植物である。誰でも、上の方の葉が紫蘇色で下の葉が緑であるこの植物を見たことがあるはずで、日当たりのよいところにも生えているが、日陰のところに多い。しかも群生していることが多いので、可憐だとかきれいだなというよりは、何かその場所には分け入りたくない感じさえする植物である。このヒメオドリコソウは、もともとはヨーロッパの植物が、明治以降に日本に入りこんできたものらしい。このため、イギリスやカナダにも生えているようである。私などは小さい時から見ていた植物なので、元々の日本産の植物だと思っていたほどである。  (以下はヒメオドリコソウ)

 春に授業の中でシソ科の話をするときに、構内の花壇や雑草が生えている場所を探して、カキドオシやヒメオドリコソウを持ってきて学生たちに示している。このようにヒメオドリコソウはすぐに見つかる植物である。

 そこで授業ではシソ科の特徴である茎が四角いことを示すために、ハサミで茎を切ってみると、中は空洞で他のシソ科に比べると、茎がフニャフニャしている。また臭いも他のシソ科の植物のように良い香りがしない。ところがヒメオドリコソウは、このように私たちの身の周りにたくさん見かけるのに、これまでオドリコソウには出会ったことがなかった。図鑑でみると余り似ていないで、オドリコソウの花は大きく写真で見る限りホウセンカのように見える植物である。(以下はオドリコソウ)

 ここ数年は車に乗って走っているときにもデジタルカメラを常に持っていて、気になると車を降りて近辺を調べてみる習性が身についている。夏に入る頃、山形の高瀬地区から紅花トンネルに至る道路の脇に、セリ科のシシウドの花がたくさん咲いているのを見かけて降りて写真を撮ることにした。その後道路の周辺を何気なく歩いていたら、道路から下がる土手に白いホウセンカのような花が咲いているのを見かけたので写真に撮った。その時にはオドリコソウとは知らずにシャッターを切ったのである。後で調べてみたらオドリコソウであった。図鑑でこれまでオドリコソウを見ていたが、実際のオドリコソウを見てすぐにオドリコソウとは同定できなかったのである。花の色は白だったが、黄色やピンク色があるようなので、黄色のオドリコソウがあれば見たいものだと思っている。

 オドリコソウはシソ科の仲間に見られる茎の葉のつき方は対生だが、その葉の下に花がいくつも咲いている。これは日本ハッカも同じような咲き方をする。このオドリコソウを私自身が見たのは初めてである。こうした花のつき方は、ヒメオドリコソウも同じなのだが、茎に生える葉の出方の間隔が短いので、オドリコソウ程にははっきり分からないのである。

 翌年の春になって、天童の山元沼の土手にオドリコソウが群生しているのを発見した。何年間にわたって沼周辺の植物を観察してきたのだが、そこでは日本ハッカ、ミズカヤツリ、ミゾハギ、ミゾソバ、サクラタデ、ノブドウなどが生えているので写真を撮り続けてきた。沼の南側の土手には、クサノオウ、ワラビ、アカネなどがあって、それも撮っていたのだが、オドリコソウには全く気がつかなかった。多分見かけていたに違いないが、見れども見えずだったのではないかと思っている。

 

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