アオツヅラフジ

植物編

何年か前の秋に、山形市高瀬の田んぼ脇の山沿いの狭い農道を歩いて、アカネの実の写真撮りに出かけた。アカネは四枚の輪生の葉を出し、秋には小さい黒い実を沢山つける。また茎が四角いのにシソ科ではなくアカネ科アカネ属で、「シソ科の茎は四角い」という私の作った規則(法則)から見ると例外に入る植物である。

 アオツヅラフジ その1

歩いていってオオアオイトトンボを何匹か見かけた。そのオオアオイトトンボがとまっていたのがアオツヅラフジだった。最初はヤマブドウかと思ったが、実が固まって生っているのでブドウの雰囲気ではないのである。葉の形もブドウではないので、ノブドウでもないしヤマブドウでもないとすると何だろうと思っていたのだった。その時はその写真を撮って帰ってきたのである。その後調べてみるとアオツヅラフジという名前だと分かったものの、そのまま時間だけが過ぎていったのである。

何年も奥羽山脈の麓を歩き回っていた筈だが、きっとそれまでにも出会っていたものの、見れども見えずだったのではないかと思う。そんなことから名前を確認しただけで放ってあったのだった。

ところが蟹江に帰って色々歩き回っているうちに、そのアオツヅラフジを色々な所で見かけるのである。定点観測地の永和の雑木林の端にも、雑木に絡みつきながら、夏を過ぎると実が生り出している。また日光川の土手に沿ったフェンスにも、アオツヅラフジが絡まっている。それも何か所かで見かけるのだ。そのフェンスにはヘクソカズラも咲いていることもあって、ヤブガラシと共にこれらがフェンスで見られるツル性の植物だと思い込むようになっている。最初見た時はとても信じられず、びっくりしたものだった。この地方にもアオツヅラフジが咲いているのかと思ったのだった。

東北では山沿いにあって市街地では見たことはないのに、蟹江周辺では川の土手や雑木林で普通に見かけるのである。もしかすると東海地方の方が多く生息している可能性があるとも考えるのである。

 アオツヅラフジ その2

ウィキペディアには「葉は互生し、形は全縁で卵型あるいは広い卵型ないしは心臓型をしており、多くは葉先が丸く浅く三裂することもあり形にはバラエティがある。~中略~ 果実は核果で、秋に六~八ミリ球状の果実が房状に結実し、晩秋のころ、ブドウのように緑色から青く熟して目立つようになるが有毒である。~中略~ 果実の中に直径四ミリどの核(種子)が一個入り、形は扁平で丸くカタツムリの殻を思わせる。~中略~昔はつるをオオツヅラフジなどとともに『つづら』の材料にしたり、鳥もちを塗って鴨猟に使ったり、物を縛るのに使われたり、買い物かごや、背負いかどなど多角的な用途がある。またアルカロイドを含むために殺虫剤などにも用いられた。」と記されている。

小さい頃は柳行李(やなぎごうり)を知っていましたが、舌切り雀の童話には「つづら」が出てくる。その「つづら」の材料がこのアオツヅラフジとオオアオツヅラフジだったのだ。昔から日本全国に分布しているのだろう。因みに小学校一年生の学芸会で、舌切り雀をやったことを今でも覚えている。どんな役だったかは忘れてしまったが、主役でなかったことは言うまでもない。

種子の形がカタツムリの形とあるが、実際に取り出してみると、アンモナイトのように見えてしまうのだ。余談だが、いわきに住んでいた時、その周りの地層から沢山のアンモナイトが出土していたことを想い出した。とても大きいものから本当に小さいものまでが出土している。因みにウィキペディアでは「古生代シルル期末期から中生代白亜紀末までのおよそ三億五千年前後の間を、海洋に広く分布し繁栄した、頭足類の分類群の一つ。多くの種が平らな巻貝のような形をした殻を持っているのが特徴である。」と記されている。オウムガイはアンモナイトと共通の祖先を持つ貝で、生きている化石の一つだと考えられている。

ところで、アオツヅラフジの実は見るからに美味しそうに見えるので、冬の鳥たちの餌になるかと思い「野鳥と木の実 ハンドブック」(叶内拓哉 文一総合出版)を調べてみたら、載っていなかった。他に載っているものがないかと調べたが、ヒヨドリが来ていたと書いてあるものがあったように思ったが失念してしまった。

「BOTANICA」には「アオツヅラフジの実は花が咲いた後、雌株の枝の付け根になります。なり始めは鮮やかな緑色をしていますが、徐々に青く変化し、最終的には黒紫色のブルーベリーのような色になります。五ミリ~八ミリの実はぶどうの房のようになり、緑色の頃は艶やかですが成熟すると表面に白い粉がふくのが特徴です。実がなるのは秋で九月~十一月です。つぶすと黒紫色の汁がでます。アオツヅラフジの実は食べられません。全草に毒性があるからです。植物が持つ毒性はアルカロイド系が多いですが、その中でもアオツヅラフジが持つ毒はトリロビンやマグノフロリです。熟した実はぶどうの房状のブルーベリーのようで一見おいしそうですが全く甘味がなく、食すと呼吸困難になったり、心臓まひにつながる恐れがあるそうです。観賞用だけにしましょう。」と記されている。

 命に係わる毒性を持っていると予想されるようだが、見るからにブルーベリーのような感じで美味しそうに見えるのである。

偶然見かけたアオツヅラフジですが、それを介して色々なことが結びついてくることが面白いなぁと思ってしまったのである。

(キンポウゲ目 ツヅラフジ科 アオツヅラフジ属) 

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